株価暴落時における投資家の心構え 感情を排し「資本効率」を見極める防衛策を

2026年3月17日 13:46

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 2月28日、米国とイスラエル軍による対イラン大規模軍事作戦「エピック・フューリー(壮絶な怒り)」が断行された。この地政学リスクの激化を受け、金融市場は「イラン・ショック」の渦中にある。

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 発生から約1週間が経過した3月9日、日経平均株価は終値で前日比2,892円12銭安を記録。ザラ場では一時4,000円を超える歴史的な暴落を演じた。足元ではリバウンドの動きも見られるが、投資家は「有事の資産防衛」と「過剰反応後の選別投資」の狭間で、極めて冷静な判断を迫られている。

■地政学リスクの直撃と業種間で鮮明になる明暗

 軍事攻撃の報を受け、市場全体がリスク回避(リスクオフ)を強める中、セクター間での明暗が分かれている。

 当初、資金の逃避先として注目された防衛関連銘柄(三菱重工業:7011、川崎重工業:7012)やエネルギー関連(INPEX:1605)は、有事直後に年初来高値を更新した。しかし3月9日の全面安局面では、これら「有事銘柄」に対しても利益確定売りの波が押し寄せ、市場のボラティリティ(変動性)の高さが露呈した。

 対照的に、実体経済への悪影響が強く懸念されているのが製造業と物流セクターだ。ホルムズ海峡の緊張による航路混乱が危惧される日本郵船(9101)などの海運株、およびエネルギー価格の転嫁が困難な製造業、コスト増が利益を圧迫するトヨタ自動車(7203)などの輸出主力株は、換金売りの標的となった。

■スタグフレーション懸念と「資本効率」への回帰

 今回の事態を深刻化させているのは、イランによるホルムズ海峡の「実質的な封鎖」示唆に伴うサプライチェーン寸断リスクである。

 原油価格(WTI先物)は3月9日に一時1バレル120ドルに迫る急騰を見せた。その後、IEA(国際エネルギー機関)による過去最大規模の協調備蓄放出を受け、足元では97ドル台まで反落しているものの、インフレと景気後退が並行する「スタグフレーション」への警戒感は依然として強い。

 こうした不透明な局面で再評価されるのが、企業の「資本効率」である。中央銀行の金融政策が不透明化し、PER(株価収益率)による割高・割安の判断が困難になる中、企業の「稼ぐ力」そのものが厳しく選別されている。

 キャッシュフローが潤沢で、ROIC(投下資本利益率)の高い「筋肉質な企業」は、外部環境の変化に対する耐性が強く、暴落局面での下値抵抗力を発揮している。

■投資家はどう対処すべきか:展望と課題

 今後の焦点は、軍事作戦の継続期間と、G7による石油備蓄放出の市場鎮静効果に集約される。3月14日、トランプ米大統領による「作戦は最終段階」との発言があり、市場はわずかな安堵感を見せているが、中東情勢の完全な正常化には時間を要する見通しだ。

 投資家が取るべき防衛策は、短期的にはキャッシュ比率の維持を優先しつつ、中長期的には「過剰に売られた優良株」の拾い出しである。地政学リスクによる急落は、歴史的に「オーバーシュート(行き過ぎ)」を伴う。PBR(株価純資産倍率)1倍割れ銘柄への是正期待といった国内特有の構造改革テーマは、有事下でもその重要性は失われていない。

 結論として、不透明な局面こそ、感情的な狼狽売りを避け、冷徹なデータに基づいた資産配分の再構築が必要だ。インフレ耐性の強い価格決定力を持ち、資本効率に優れた企業への選別投資こそが、ポートフォリオの回復力を左右する。

 一度に全資金を投じるのではなく、時間分散を図りながら慎重にエントリーを探る規律が、今、最も求められている。(記事:今福雅彦・記事一覧を見る

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