伊藤園のもう1つの投資法:無議決権株式(優先株)の投資を考える

2024年1月3日 10:48

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 伊藤園(東証プライム)。茶葉製品・緑茶飲料の最大手。海外事業も総売の上高の1割を超える。傘下に連結対象として、タリーズコーヒーを有している。

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 投資妙味を感じさせる。最大の要因は堅実な収益動向。2020年/21年4月期こそ12.6%/16.4%の営業減益を余儀なくされたが、22年/23年4月期は12.7%/4.2%と回復基調に転じた。

 そして今4月期は「1.9%増収、7.2%営業増益、4.7%最終増益、2円増配42円配」計画で立ち上がり11月29日に中間期・通期の上方修正に踏み切った。新たな通期予想は「4・2%増収(4500億円)、18.4%営業増益(232億円)、14.16%最終増益(147億円、最高益更新)」。

 その理由を「原材料高騰の影響はあったが、内外の行動制限解除に伴う需要回復や生産物流の効率化の発現・・・第3四半期以降もこうした流れは変化しないと捉えた結果・・・」とした。

 業界断トツの立ち位置、製品の多様化や生産の効率化と絶えず積極的に取り組んでいる証しといえよう。そのことは、株価動向にも如実に反映されている。本稿作成中の時価は4100円余水準。対してIFIS目標平均株価は5500円。

 算出者の伝に従えば押し目買い5000円台での推移を待つのも一法だろうが・・・過去10年間の修正値済み株価パフォーマンス90%方を勘案すると中長期構えにも妙味ありか・・・。

 ところで伊藤園に関しては、第1種優先株式(無議決権株式)という側面から捉えてみるのも方法か・・・

 伊藤園は2007年に第1種優先株式を、東証プライム(当時は東証1部)に上場している。伊藤園の普通株式の証券コード2593に対し25935。

 伊藤園では第1種優先株式発行の理由を「資金調達の選択肢を広げ、成長機会を的確に捉えて機動的な資金調達ができるように」とし、優先株式を保有する場合は「議決権はない」が「配当金が普通株式に対し、1.25倍の配当額が受け取れる」「普通株同様の枠組みで株主優待品(伊藤園商品の詰め合わせ)が供与される」と訴求している。

 優良企業を「配当」という側面から捉えた場合、魅力ある投資対象といえる。かつ通常、優先株は普通株に比べ2割方安い値段で取引される。当然、配当利回りは高くなる。

 が証券関係者の間では、伊藤園の施策をこう捉える向きが多い。ある清涼飲料業界に明るい評論家は、こう噛み砕いた。

 「この間、アサヒはカネボウの飲料事業やハウス食品の六甲のおいしい水、カゴメの六条麦茶などをグループ化した。サッポロHDはポッカを買収した。業界の集約化が進んでいる。そうした流れの中で憶測の域はでないが、伊藤園とダイドードリンコHDの間に流れが起こって不思議ではない。伊藤園には既にタリーズコーヒーが傘下に収まっている。タリーズ強化策として・・・」とし、伊藤園の公にしている「一定の事象により優先株を1対1の比率で普通株に交換することができる」とする旨の一分を持ち出した。

 さて・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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