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成長企業:レーサムの礎を築いた田中剛氏に「起業家の息吹を覚える」理由
レーサム(東証スタンダード)。投資家向けに、オフィスやマンションなど収益不動産の組成・販売を展開している。
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2021年3月期こそコロナウイルス禍で収益低迷(86%営業減益)を余儀なくされたが、前3月期は早々に「591.3%営業増益、33円増配37円配」と急回復。そして今期も3月に上方修正。「21.4%の営業増益(138億円)、55円配に追加増配」計画。
レーサムは26歳の若き起業家:田中剛氏により1992年に設立された。2001年には当時のジャスダック市場に上場。この間、グローバル債権の買収・子会社化(99年10月)。証券化を前提とした初の国有不動産の入札で落札(2000年9月)と、本邦初の出来事で主役を務めた。具体的にはマンションなど建物付きの不動産8件を落札し、証券化したのだった。
レーサムのいまを捉える時に忘れられないのが、2008年のリーマンショック後の「立ち位置」だ。現社長の小町剛氏は2021年の役員座談会で「グローバリズム暴走による本質的な価値とはかけ離れた歪みが、地滑り的に修正された」とリーマンショックを位置付けた上で、「上場以来、警鐘を鳴らし続けてきた田中会長の危機感が現実的になった。私たちはなんとか生き残ることができ原点に立ち返り、会社を立て直していくことになった」と、した。
対して田中氏は「レーサムは将来的に社会的に意義あることに対し投資を続けている。多くの社員の努力もあり苦節の10年を乗り越えた。当時20代で入社した若手がいまではリーダーとして活躍していることを、誇らしく思う」と、語っている。
レーサムを知る兜町筋の間では「レーサムのDNA=田中イズム」とし、「待機児童問題が切実だった江東区・豊洲をはじめ、5カ所で取得した物件を保育園ビルに衣替えしている。短期収益を追うなら飲食カラオケビルだったろう。だが長期間安定収益を生み出すテーラーメイドの不動産を生み出した。レーサムのDNAを象徴する案件だ」と、語り継がれている。
田中氏は21年11月に、健康上の理由で辞表を提出し受理された。いまレーサムに求められているのは「田中イズム」を止揚し、その居所をより高いところに移すことであろう。
その意味で至2025年3月期の中計は、注目に値する。
『当社が最も重視すべきことは「社会、経済、環境の全てが共生し、継続的な発展につながる価値の本質を考え抜き、それを実現させることにある」と再定義し、全社員一丸となって事業に取り組む』と敢えて謳い、次の様な目標が定められている。
「売上高1000億円(22年3月期比46%増)、営業利益170億円(50%増)、105億円(58%増)、配当58円(37円)」。
かつコロナ禍での立ち位置が目を惹く。「資産価値創造事業の3年間の売り上げ目標は2400億円。潜在価値を秘めた不動産の仕入れは既に1500億円分を確保した」としている。
「成長の新たなステージに立つ」という宣言といえる。
レーサムの時価1700円台余。好配当利回りを背景に押し目買い・中長期保有が賢明か。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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