相場展望2月21日号 株式市場はウクライナ侵攻を楽観視、危険 日本株式市場も、踊り場で正念場

2022年2月21日 09:33

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)2/17、NYダウ▲622ドル安、34,312ドル(日経新聞より抜粋
  ・▲622ドル安は、今年最大の下落額、下落率。バイデン大統領は2/17、ロシアがウクライナに侵攻する可能性が「非常に高い」と述べた。ロシアと欧米の対立が激化するとの見方が強まり、リスク回避の売りが出た。
  ・ハイテク株から景気敏感株まで幅広い銘柄が売られた。
  ・セールスフォース▲6%安、キャタピラーとスリーエムが▲4%下げ、アップルとマイクロソフトも安い。半導体のエヌビディアは2~4月期利益率が横這い見通しを嫌気され▲8%安、テスラは▲5%下げた。

【前回は】相場展望2月17日号 露大統領は『追い込まれ』て『瀬戸際外交』実行 露軍隊の一部撤収は、『外交的駆け引き』の範囲

 2)2/18、NYダウ▲232ドル安、34,079ドル(日経新聞より抜粋
  ・ウクライナ情勢を巡る警戒が続き、株式相場の重荷となった。
  ・米国は3連休となる週末を控えていたことも、運用リスクを取り難い地合いだ。
  ・ロシアは2/18、プーチン大統領が指揮する軍事演習を2/19に実施すると発表。
  ・北京冬季五輪の閉会式を2/20に控え、ロシアによるウクライナ侵攻への警戒感が強い一方、ブリンケン米国務長官が来週にもラバロフ露外相との会談が伝わった。
  ・先行きが読み難い状況で、投資家が株式の持ち高を減らす動きが続き、NYダウの下げ幅は一時▲300ドルを超えるなど、不安定な相場展開だった。
  ・航空機のボーイング▲2%安、半導体のインテル▲5%安などハイテクが軒並み安。

●2.米国株:ウクライナ侵攻問題の楽観的見方には、危険あり

 1)米ブリンケン国務長官と露ラブロフ外相との会談があり、ロシア発表では一部撤退と伝えられ、市場には楽観的見方が見受けられる。

 2)ウクライナ政府は2/17、ウクライナ東部のドンバス地方で親露武装勢力による停戦違反が24時間で60件以上発生したと発表した。この状況は、2014年クリミヤ侵攻してロシアに併合した動きに相似している。

 3)露メディアによると2/18、ウクライナ東部の親ロシア指導者は女性や子供など70万人をロシア側に避難させる、と伝えた。(フィスコ)ロシア通信は、プーチン大統領が住民退避のため非常事態大臣を派遣報道(ロイター)ウクライナ東部の親ロ派指導者は2/19、「総動員令」発動(AFP通信)

 4)ロシアのプーチン大統領は、ウクライナに軍事的圧力を掛けることで緊張を高めて、欧米諸国との駆け引きに臨んでいる。ロシアの、あるいはプーチンの野心を認めさせ、ロシア支配圏の拡大を目論んでいる。プーチンが欧米諸国に喧嘩を売った背景には、
  (1)バイデン大統領の弱さ
  (2)ユーロ圏諸国、特にドイツ、フランスの政治的揺らぎ
  があると思われる。欧米諸国の弱みに付け込んだ、プーチンの野心実現の攻勢と見られる。もちろん、ロシア国内問題(国民・軍部の不満のたかまり)への対処もあるだろう。

 5)プーチンは、ウクライナに軍事的圧力を高めて一発触発の状況を作り出している。しかし、欧米諸国は「経済的制裁」をちらつかせて交渉している。そのような現状において、プーチンの野望は何1つ獲得できていない。要するに、プーチンは「振り上げたこぶしを、降ろせない」ない状況に陥っている。このような状況下では、事態はますますエスカレートしやすい。よって、ウクライナ・リスクは、増大中である。

 6)米バイデン大統領も、中間選挙に向けて、プーチンに強気姿勢を取らざるを得ない。バイデンは、アフガン撤収時の不手際で、ベトナム撤退の醜態を再現してしまった。インフレで物価高に苦しむ国民からの不満で、支持率が低下し、11月中間選挙予想は民主党が負けそうな状況となり、支持率を高める必要に迫られている。このままでは、バイデンの大統領の再選はないだろう。

 7)ウクライナ問題では、株式市場は楽観的に物事を見る傾向があるため、悪化が現実化した場合、相場は大きく反応する危険があるので注意したい。

●3.米国株:ナスダック総合指数は「デッドクロス」し、相場調整の長期化を示唆

 1)ナスダックは、50日移動平均線が200日移動平均線を上から下に抜けた。

 2)投資家心理の重荷になる可能性が出てきた。

●4.3月FRB利上げ+0.5%大幅引き上げを誘導しそうな、米2月物価上昇に注意したい

 1)1月物価上昇は前年度比で、中古車価格+40%、エネルギー+27%、住宅+4.1%、食品+7%(フィスコ)

●5.米失業保険継続受給者数は159.3万人、予想160.5・前回161.9から減少、年初来最小

 1)労働者不足は深刻で、求人件数は過去最高に近い1,090万人に達した。(フィスコ)

●6.セントルイス連銀ブラード総裁、「今後のFOMCで7/1までに1%の利上げを」(ロイター)

 1)根強い高インフレに対する、力強い行動をFRBに求めた。

●7.米ジャンク債ファンド、投資家の警戒感強く、6週連続で資金流出(ブルームバーグより抜粋

 1)リフィニティブによると、純流出は2/16までの1週間で約▲36億ドル(4,150億円)減、過去6週間で▲167億ドル(1兆9,250億円)減少に達した。

 2)米ジャンク債市場では、この1週間、ジャンク債の起債はない。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)2/17、上海総合+2高、3,468(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済対策への期待感が相場を支える流れとなった。
  ・中国人民銀行の総裁は、「緩和的な金融政策を柔軟に維持する方針」を示したほか李克強首相は「法人減税を強化する」との指示を出した。
  ・ただ、上値は限定的だった。
  ・新型コロナ感染再拡大の警戒感がくすぶっているほか、ウクライナ情勢を巡るネガティブニュースが重石となった。
  ・業種別では、ハイテク関連の上げが目立った、反面、不動産が冴えなかった。

 2)2/18、上海総合+12高、3,451(亜州リサーチ)
  ・低金利政策への期待が相場を支えた。
  ・中国国務院は2/17、大規模な景気刺激策に依存しないとした上で、貸出金利を低水準に誘導する方針を長期化し、潤沢な流動性を維持する方針という。
  ・米中対立の警戒感は依然とくすぶっており、上値は重い。
  ・米商務省は2/17、通信設備メーカー中国最大手の華ため技術(ファーウェイ)に対する半導体輸出規制を強化すると発表したこともあり、上海指数は売り圧力を意識。
  ・業種別では、消費関連と医薬品の上げが目立った、一方、金融は冴えなかった。

●2.中国1月新車販売台数は前年同月比+0.9%増、9カ月ぶりプラス、EVが伸びた(NHK)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)2/17、日経平均▲227円安、27,232円(日経新聞より抜粋
  ・前日の大幅上昇の反動が出た上、ウクライナ情勢への過度な警戒感が後退して、+600円近く上昇していたこともあり、利益確定売りや戻り待ちの売りが先行した。
  ・ブリンケン国務長官が2/16、「ロシアは引き続き国境に軍隊を集結させている」と批判すると、投資家の間では再びウクライナ問題への警戒感が広がった。
  ・午後に入ると、日経平均は一段安となった。ロシアの国営通信社スプートニクが親ロシア派武装勢力が実行支配する地域で「ウクライナ軍が砲弾と手りゅう弾を発射した」と伝えた。
  ・為替市場では115円前半まで上昇し、機関投資家はリスク回避姿勢が強まった。
  ・楽天・Z・ソフトバンクG・キーエンス・中外薬が売られた。反面、三菱商・三井物・大平金・INPEXが上がった。

 2)2/18、日経平均▲110円安、27,122円(日経新聞)
  ・ウクライナ情勢を巡る警戒が強まる中、運用リスクを回避したい投資家の売りが優勢だった。
  ・バイデン大統領が2/17、ウクライナ侵攻の可能性について改めて言及し、2/18の東京市場でも幅広い銘柄に売りが出て、一時▲400円を超える場面があった。
  ・前場中頃に、ロシアのラブロフ外相と会談する見通しになったと伝わった。過度な警戒感が一先ず和らいだことで、日経平均は急速に下げ幅を縮めた。
  ・投資家尺度の面から割安感のある銘柄には断続的に買いが入った。配当利回り上位の郵船・商船三井は上昇。東エレク・アドテストなど半導体関連の下げが大きかった。ファナック▲5%超安・リクルート・ニコン・ブリデストンも下落した。一方、第一三共・ファストリ・トヨタは上昇した。

●2.日本株にとって、正念場

 1)ウクライナ問題が高じれば、原油・天然ガスがさらに高騰するだろう。日本にとって、貿易収支の悪化拡大となる。日本企業にとってもコスト高は企業業績の悪化につながる。給与上昇を上回る物価上昇につながるため、消費が減少、日本景気悪化要因となる。

 2)ただ、米国株式市場の動向を見ると、資金流入が止まる傾向があり、むしろ米国市場から日本・中国など他国に流れ始めた兆候がある。そうなると、日本株式市場にとっては追い風となる。

 3)テクニカル的には、もみ合いの長期化を示唆している。

 4)米国株に連動しやすい日本株だが、2月3週は米国株の下落に対して、強さを感じる。逆に見れば、日本株の危うさとも見える。

 5)決算発表シーズンも終わったが、1株当たり収益を示すEPSが上昇してこないのが気掛かりな点である。

●3.オミクロン株亜種「BA.2」の市中感染が、東京都で初めて確認(フジテレビ)

 1)オミクロン株に比べて、感染力が強いとみられている。

●4.今年度(令和3年)の「国民負担率」は48.0%、前年度を上回る過去最大(NHKより抜粋

 1)「国民負担率」は、国民の所得に占める税金や社会保険料などの負担の割合を示す。

 2)所得は増えても、税金などの増加が上回ったことで、負担率が上昇した。

 3)日本の国民負担率は、50年余り前の昭和45年度は24.3%であったが、高齢化に伴う社会保障の負担増加により上昇傾向が続いている。

●5.企業動向

 1)日清オイリオ 食用油を再び6~7%値上げ、去年から既に4回の値上げ(ロイター)
         大豆や菜種など原料の価格高騰が理由
 2)三菱商事   ミャンマーの天然ガス事業撤退(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・3141 ウエルシア   業績堅調。
 ・4552 JCRファーマ  業績好調。
 ・4612 日本ペイント  業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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