相場展望12月27日 米株、サンタ・ラリーが旺盛も、リスクも念頭に 日本株、年末の「掉尾の一振り」は期待できず?

2021年12月27日 08:47

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)12/23、NYダウ+196ドル高、35,950ドル(日経新聞より抜粋
  ・新型コロナ「オミクロン型」の感染による入院や重症化リスクが低いとの調査結果が英国・南アで公表され、経済活動停滞の警戒感が後退した。
  ・コロナ治療薬への期待もあり、投資家心理の改善につながり、機械・素材など景気敏感株が買われた。
  ・建機キャタピラー、機械ハネウェル、航空機ボーイング、半導体株が買われた。

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 2)12/24、クリスマス振替休日のため休場

●2.米国株は、サンタクロス・ラリーが旺盛で、史上最高値近辺で推移も、リスクも念頭に

 1)米国株は、サンタ・ラリーが想定以上に買い優勢となり、最高値圏内で推移。
  ・      11/08    12/10  12/23
   NYダウ  36,432ドル 35,970  35,950 : 終値では11/08が史上最高値
   SP500    4,701㌽   4,712   4,725 : 終値では12/23が史上最高値
  ・米国株はオミクロン株の感染拡大ながらも、株価は高水準を維持している。新型コロナの新変種株「オミクロン型」が感染爆発しているが、株式相場では重症者率が低下し、治療薬承認もあり、コロナ懸念は後退している。

 2)しかし、感染拡大による行動制限で、供給制約や経済への影響は依然とし存在する。

 3)先日、米連邦準備制度理事会(FRB)は米連邦市場公開委員会(FOMC)でテーパリング(金融緩和の縮小)を決定したが、依然としてFRBから金融市場に新規資金を減額するものの追加供給が続けられている。今までの毎月の資金供給額は1,200億ドル(約13.7兆円)から、テーパリング実施で月▲150億ドル(約▲1.7兆円)減額、そして▲300億ドル(約3.4兆円)と削減幅を拡大させた。その新規供給される資金の多くが、高い運用利回りを求めて株式市場に流入し続けているのが現状である。そのFRBの供給資金が株価上昇につながっている。その追加資金の供給がゼロになるのが、2022年3月である。したがって、来年3月までは米国株式市場は高値追いをする環境にある。

 4)新型コロナ新変異種は「デルタ型」から感染力の強い「オミクロン型」に置き換わって猛威を振るっている。フランスでは、1日の感染者数が過去最高の12万人を記録して、欧米各国の行動制限が強化されている。しかし、感染力は強力ながら、重症者率の低下と、治療薬承認でコロナ懸念は後退したことで、買い安心感が出て、株式市場は旺盛な需要を背景に高値形成しているのが現状である。

 5)ただ、新変異種「オミクロン型」の急速な感染拡大で、行動制限が強化されており、依然として供給制約や経済への負の影響はリスクとして残っている。この事実を念頭に置いて、相場展開を見るようにしたい。

 6)大きな問題が起こるのは、市場が「利上げ」⇒「FRBの8兆7,567億ドル(約1,000兆円、12/15時点)まで膨れ上がった資産縮小」に意識が傾いた時であろう。

●3.米11月個人消費支出(PCE)物価指数は+5.7%、39年ぶりの高水準 (時事通信より抜粋

 1)10月の+5.1%から一段と拡大し、インフレ圧力の強さが鮮明となった。

 2)新型コロナからの経済再開に伴う需要急増に、供給が追い付かず、インフレ高進を招いている。エネルギーだけでなく、モノやサービス含めた幅広い分野で価格が上昇した。

 3)価格変動の大きい食料品とエネルギーを除いた「コア指数」も+4.7%上昇し、伸びは前月+4.2%から拡大した。

●4.米企業の自社株買は、逆風の中、今年は90兆円と過去最高(時事通信)

●5.米「ウイグル強制労働防止法」が成立、ウイグル産品輸入を原則禁止(TBS)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)12/23、上海総合+20高、3,643(亜州リサーチより抜粋
  ・世界銀行などが中国経済の下振れリスクを指摘する中、中国当局は追加利下げなど景気テコ入れ策を強めるとの見方が広がった。
  ・国内で、新型コロナ感染拡大を嫌気した売りが散見されたが、上げ幅を広げた。
  ・業種別では、発電・石炭・石油・自動車関連が高く、不動産は冴えなかった。

 2)12/24、上海総合▲25安、3,618(亜州リサーチ)
  ・新型コロナ感染拡大の影響が不安視される中、中国中部の西安市で12/23事実上の都市封鎖が始まり、一部工場では生産調整による生産出荷が遅れる見通し。西安市は自動車産業の集積地だけに、経済活動の縮小が改めて危惧されている。
  ・業種別では、自動車の下げが目立ち、不動産・金融が売られ、小売・酒造が上昇。

●2.中国はレアアースの主要メーカーを統合し新会社、世界の主導権を強化(ブルームバーグ)

●3.中国で広がる不動産の「投げ売り」、だぶつく在庫、値下げ反対デモも(東方新報より抜粋

 1)不動産市場が急激に低迷し、中国の各都市で不動産物件が供給過剰となっている。

 2)大幅値下げ販売する業者も増え、値引き前に購入した住民とトラブルも起きている。

 3)在庫月数は12.5カ月と長期化、特に地方都市の在庫が24~36カ月分と深刻である。

 4)値下げ販売の反対デモも起きるなど、社会不安を招く事態を防ぐため、各地方都市では
  ・業者に「値下げ制限令」を打ち出し、
  ・マンション購入者には補助金支給や免税措置をする
  など、実質的値下げを図ることで、不動産の在庫解消に取り組んでいる。

 5)中国では7月までは「住宅価格高騰」ばかりのニュースだったが、半年足らずで値下げが深刻な問題となり、ジェットコースターのような激しい展開を迎えている。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)12/23、日経平均+236円高、28,798円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式市場では消費者心理の改善から上昇したのを受け、東京市場でも自動車や機械など景気敏感株に買いが入った。
  ・原油や非鉄金属など資源価格の上昇を背景に、鉱業や海運・非鉄関連も買われた。
  ・市場参加者が少ない中で、売り方の買戻しも入って、上げ幅を広げた面もある。
  ・東急不+4%超・東邦鉛・郵船が高く、エーザイは▲9%安、小売の下げが目立った。

 2)12/24、日経平均▲15円安、28,782円(日経新聞)
  ・米株式市場は12/24休場のため、持ち高を一方向に傾ける動きは限られた。
  ・朝方は、前日の米株式相場が上昇した流れを引き継ぎ、買い先行した。前日までの3日で+800円超上昇していたことで戻り待ちの売りが重荷になった。加えて、変異型「オミクロン型」の市中感染が初めて確認され、下落に転じた。
  ・海外勢を中心にクリスマス休暇入りする投資家も多く、商いは低調だった。
  ・値嵩半導体株の東エレク、レーザーテックが上場来高値を付け、相場を支えた。

●2.日本株、米国株上昇に連動高したいが、超閑散の環境下、30,000円超えは「絵に描いた餅」

 1)日本株は売買金額・出来高で超閑散状況。
             12/17     12/24
  東証1部売買金額  3兆6,804億円  1兆6,165
  東証1部出来高   14億4,002万株  7億4,672

 2)買いの主役が不在で、買い仕掛けが見られない状況となっている。特に、海外投資家と個人投資家の売りスタンスが続いている。

 3)枯れ切った相場なだけに、値嵩株の僅かな買いで日経平均は買い優勢となる可能性がある。小型株のマザーズ、ジャスダック銘柄の成長株が買われて反発する局面がありそう。

 4)日経平均は強含みの展開を見せているが、年初来安値銘柄が増えており、注視したい。
        12/21 12/22 12/23   12/24
   日経平均  +579円高   +44   +236   ▲15
   年初来高値   9銘柄    13    20    30
   年初来安値  138銘柄    64    47    58
   特に、12/24は空売り比率が39.7と低い状況にもかかわらず、日経平均▲15円安は地合いの弱さを示唆している可能性がる。

 5)年末の日本株市場は「掉尾の一振り」への期待はあるものの、買い材料に乏しく、昨年同様に小動きの展開を予想する。

●3.日本11月消費者物価指数、生鮮食品除き前年同月比+0.5%上昇、3カ月連続増(テレ朝)

●4.企業動向

 1)丸大食品   250品目を5~15%値上げ、来年3月実施(朝日新聞)
 2)三菱商事   洋上風力発電事業者に決定(NHK)
   千葉県・銚子沖、秋田県・能代市沖・由利本庄沖の3カ所                   
   3カ所合計で、風車134基、170万キロワット、売電価格11~16円
 3)三菱製紙   希望退職募集、紙の需要低迷で人員削減(読売新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4183 三井化学    業績好調。
 ・4442 バルデス    業績好調。
 ・5929 三和      業績堅調。

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