群雄割拠のEV市場 カギを握るSiCパワーモジュール分野で新会社が誕生

2021年10月30日 20:03

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記事提供元:エコノミックニュース

正海集団とSiCパワーモジュールの合弁会社設立を発表した日本のロームは、そんな世界のSiC半導体関連市場で既に2割近いシェアを誇っている

正海集団とSiCパワーモジュールの合弁会社設立を発表した日本のロームは、そんな世界のSiC半導体関連市場で既に2割近いシェアを誇っている[写真拡大]

電気自動車(EV)を取り巻く状況が、にわかに活発化している。

 アメリカの大手自動車メーカー、ゼネラルモーターズ(GM)は10月、米国で開催された投資家向けイベントの席上で、2025年までに350億ドルの投資と30車種以上の新型EVの投入を背景に、米国EV市場でトップシェアをつかむ目標を発表。先行するテスラを追撃する姿勢を剝き出しにした。強気の元となっているのが、自社開発したモジュール式のEVプラットフォーム「アルティウム(Ultium)」。共通化した拡張可能なバッテリーパックは柔軟性が高く、大きさやボディデザインに関わらず幅広い車種で展開しやすいため、開発コストを低減できる。日本メーカーでは、ホンダが2020年、同社と次世代EV車を共同開発することを発表。米国で2種の新型EV車を発売する予定だ。

 アメリカのメーカーだけではない。中国のEVメーカーも急速に市場を拡大している。とくに「世界一安いEV」と話題になった「Chang Li」などは、米国でも好調に売れ行きを延ばしているようだ。自動車業界に限らず、価格ばかりが注目されがちな中国製品だが、技術面でも目を見張る成長を見せている。

 例えば、中国の自動車大手の上海汽車集団とITサービス大手の阿里巴巴集団(アリババ)、政府系デベロッパーの上海張江高科技園区開発が共同出資して立ち上げた新興EVブランド「智己汽車」は、今年はじめに2022年の販売を見越した2車種のプロトタイプを発表。後発メーカーながら、同車には、自動運転向けSoCや15台もの高精細カメラ、最大航続距離は1000キロメートル近くを可能にするといわれる新型リチウムイオン電池など、最先端の技術が所狭しと盛り込まれていることで注目を集めた。

 自動車部品メーカーの動きも目立つ。10月24日には、グループに中国大手自動車部品子会社を持つ正海集団がSiCパワーモジュール事業に関する合弁会社の設立を発表。そのパートナーとなるのが、日本の半導体大手のロームだ。 資本金は2.5億元、日本円でおよそ44億円で、ロームもその20%を出資する。

 モジュールとは、いくつかの電子部品やICチップなどを組み合わせてパッケージ化した部品のことだ。一般的なドライバーがそれ自体を目にする機会はほとんどないと思うが、電気自動車の根幹をなす非常に重要な部品である。電動車を駆動するための電気機構は、バッテリーとモーター、さらにモーターの出力を調整するインバーターで構成されている。このインバーターの性能を決める中核部品がパワー半導体やパワーモジュールで、これから先のEV車の普及と発展のカギとも言われているほどだ。これまではシリコン(Si)製のものがほとんどだったが、熱に強く、劇的な低損失化を可能にする炭化ケイ素(シリコンカーバイド/SiC)製のパワー半導体の採用が本格化。EVに使うと航続距離を伸ばすことができるほか、充電時間短縮などの効果が見込めるので、急激に市場が拡大している。2017年にテスラが発売したEV車「モデル3」が全米トップセールスを記録した最も大きな理由の一つが、量産型EVとして世界で初めてインバーター向けSiCパワー半導体を採用したことにあるといわれており、業界でも一気に注目を集めた。

 正海集団とSiCパワーモジュールの合弁会社設立を発表した日本のロームは、そんな世界のSiC半導体関連市場で既に2割近いシェアを誇っている。同社は、SiC関連事業に関する投資も積極的で、世界首位になる目標を掲げており、高電圧化が加速するEV市場を中心に活躍が期待できそうだ。(編集担当:藤原伊織)

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