相場展望10月11日 米国、インフレ懸念で長期金利1.6%台に上昇 岸田首相に望む『日本の国富を高める成長・分配』

2021年10月11日 09:48

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/07、NYダウ+337ドル高、34,754ドル(日経新聞より抜粋
  ・債務上限問題への警戒和らぐ。米与野党が米連邦政府の債務上限の先送りで合意し、ひとまず米国債の債務不履行(デフォルト)を回避できるとの観測が広がった。野党・共和党のトップから10/6、債務上限を一時的に停止して、12月までの支出をカバーできる範囲での債務拡大を認める案を提案した。
  ・株式市場では、目先の米政府資金枯渇による混乱が避けられる見通しとなったことが好感された。
  ・高値更新していた米原油相場が下落し、インフレ加速への過度の警戒感が和らいだことも、買い安心感につながった。

【前回は】相場展望10月7日 米国のスタグフレーション懸念は、債務上限問題先送りと原油高騰一服でいったん落ち着くか? 中国経済は、中長期的に減速へ

 2)10/08、NYダウ▲8ドル安、34,746ドル(日経新聞より抜粋
  ・4日ぶりに小反落した。米経済の先行きや、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策を巡る見方が交錯し、総じて方向感の乏しい相場展開だった。
  ・9月米雇用統計で雇用者数の増加幅が市場予想を下回り、労働市場の回復が鈍化いているとの見方から売りが出た。
  ・一方、失業率は予想以上に改善した。
  ・米原油先物相場が7年ぶりの水準に上昇したのを背景に、石油のシェブロンが大きく買われた。
  ・長期金利の上昇を受けて、金融のゴールドマン・サックスが上昇した。反面、嫌気して高PER(株価収益率)銘柄のハイテク株に売りが出て、セールスフォース、アップルが下落した。
  ・雇用統計は強弱が対立したが、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリング(量的緩和の段階的縮小)開始決定は既定路線との見方を支持する市場参加者が多かった。

●2.米国株式は、インフレの高まりで、企業業績が下方修正へと、下落圧力が強まる可能性

 1)米国株式は、経験則通り9月下落・10月以降は上昇の途上にある。
  (1)NYダウは、8/16高値から9/30安値までの下落幅▲1,782ドルに対し、10/8まで+903ドル高と+50.7%戻り幅を実現した。
   ・ 8/16    9/30  下落幅  下落率
     35,625ドル 33,843  ▲1,782 ▲5.0%
   ・ 9/30    10/8  上昇幅  上昇率
     33,843ドル 34,746  + 903 +2.6% ⇒ 下落幅の+50.7%戻り
  (2)フィナボッチでは戻し幅は61%~100%までの可能性はあるが、インフレ懸念から長期金利が上昇しており、今後の金利動向に注目したい。

 2)インフレ懸念の高まり
  (1)米10年債利回り : 1.61%に上昇
   ・6月以来の高水準を付けた
  (2)米WTI原油先物 : 一時80ドル超の7年ぶりの高値(10/8)
   ・世界各国で経済活動再開に伴う需要の高まり
   ・欧州では暖房用需要が高まり、天然ガス高騰も波及
   ・OPEC+会議では、小幅増産の合意のため、需給タイト
  (3)平均時給の上昇 : 前年比+4.6%と拡大
   ・平均時給の増加基調が改めて確認され、市場のインフレ警戒感が高まった。
  (4)失業率は4.8%  : 市場予想5.1%と想定以上に改善した。
  (5)中国の電力制限 : 生産供給減で、価格上昇を招き、世界のインフレにつながる
  (6)ドル高     : (1)原油価格の上昇、(2)平均時給の上昇を受けて、(3)長期金利 が上昇して、インフレが警戒され、ドルを買う投資家が多い

●3.米9月雇用統計、就業者数は前月比19.4万人と予想50万人を下回る(朝日新聞)

 1)非農業部門就業者数は、景気動向を反映しやすい。

 2)失業率は4.8%と、予想5.1%・前月5.2%から改善した。

 3)平均時給は、前月比+0.6%、前年比+4.6%と拡大した(フィスコ)

 4)9月米雇用統計で雇用者数の増加幅が市場予想を下回り、労働市場の回復が鈍化するとの見方から株式売りが出た。

●4.米先週分新規失業保険申請件数32.6万件、予想34.9・前回36.2から改善(フィスコ)

●5.米原油10/8、一時80ドル台、需給ひっ迫で7年ぶり(時事通信より抜粋

 1)コロナ禍で冷え込んだ景気の回復に伴ってエネルギー需要が急速に拡大。供給量が追い付かず、暖房需要が高まる冬の到来を控え、原油相場の先高観が広がった。

 2)欧州での天然ガス価格の急騰や、中国での石炭生産の減少を背景とした電力不足の深刻化なども、原油需要の増加に拍車を掛けている。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/07、「国慶節」で祝日のため休場

 2)10/08、上海総合+24高、3,592(亜州リサーチ)
  ・国慶節連休中の好材料を手掛かりに買われる流れとなった。
  ・米国家安全保障担当のサリバン大統領補佐官と、中国外交トップの楊・政治局委員は10/6、スイスのチューリッヒで協議し、米中首脳会談のオンライン年内開催で原則合意した。
  ・連休中の消費活発化もプラス、上海市の連休(10/1~7)の消費額は、2019年同期間から増加し、新型コロナ流行前の水準を回復した。
  ・業種別では、金融の上げが目立ち、小売や家電など消費関連なども高い。反面、発電は急落、素材・半導体・不動産・海運・インフラの一角が売られた。

●2.中国政府は10/9、民間企業の報道分野への参入禁止案を公表、言論統制強化(共同通信より抜粋

 1)公表された案は、通信社や新聞社・テレビ局・ネットニュース運営会社の設立や経営を禁じ、政治や経済・軍事・外交・重大な社会問題・文化・科学技術に関する報道に関わってはならないと規定。共産党・政府と距離を置く独立系メディアの一掃が狙いとみられる。言論統制が一段と進むのは必至だ。

 2)中国政府は2010年、新聞や出版業界の発展を目的に民間企業の参入を促す通知を出していた。

 3)報道の自由後退を受け、中国の民間メディア関係者はSNSに投稿し、無言の抵抗を見せた。

●3.中国・上海市の国慶節連休中の消費額は700億元超(新華社)

 1)上海市の今年の国慶節連休(10/1~7)期間における消費額は765億8,800万元(約1兆3,020億円)で、前年比+16.0%増、2019年比+12.8%増となった。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/07、日経平均+149円高、27,678円(日経新聞より抜粋
  ・前日まで8営業日で▲2,700円超下げていたため、主力株を中心に自律反発狙いの買いが優勢だった。
  ・このところ投資家心理を冷やしていた米長期金利の上昇や、原油高の一服も追い風だった。
  ・上げ幅が一時+450円超となり、節目の28,000円を上回る場面があった。
  ・日経平均の寄与度が高いファストリ、東エレクなどの銘柄の上昇が目立ち、日経平均先物を売っていた投資家の買い戻しが相場を押し上げた。
  ・先物買いが一巡すると、戻り売りに押され、日経平均は上げ幅を縮小した。

 2)10/08、日経平均+370円高、28,048円(日経新聞より抜粋
  ・終値ベースで4営業日ぶりに28,000円台を回復した。
  ・米連邦政府の債務上限問題がひとまず回避される見通しになったことや、休場明けの中国・上海株式市場の上昇を支えに買いが優勢だった。
  ・海外短期筋が株価先物指数の買いを強めると、現物株の上昇に弾みがつき、日経平均の上げ幅は一時+600円を超えた。ただ、米雇用統計の発表を控え、午後は上昇に一服感が出て伸び悩んだ。

●2.日本上昇のためにも、首相は「安定」より『成長』志向で、「国・国民を豊かにする」を期待

 1)日本は30年間、永らく安眠をむさぼってきた。GDPは550兆円規模が長く停滞が続き、1人当たり購買力所得も成長する近隣国から抜かれ、差を詰められて久しい。世界株式の高騰と比べ、日本株の低調さが、その事実を示唆している。日本が『成長』を取り戻し、膨大な赤字国債を減少させるには、抜本的な成長策が必要。今、日本が求めているのは、ジリ貧からの脱却する『再成長』ではないか。

 2)岸田政策について。
  増税は『金融所得課税』と言語明瞭、景気対策は「数十兆円の経済対策」「所得倍増」と不透明な中身で、『明るさに欠ける』緊縮財政の財務省型プランだ。「変化」につながる『成長』よりも、「分配」を軸にした『安定』政策に中心軸を置いていると見受けられる。増税について非難されると、すぐに引っ込める信念の無い発言をした。提言を撤回するぐらいなら、始めから「言うな」、不信を招くと思う。討論会で問われれば、「考える」との回答では肩透かし。これでは投資家の『期待』は高まらない。米大統領選でバイデン氏は、具体的項目を列挙し数値目標を明確にして、選挙を闘った。比べて、ひ弱さに映る新首相が主導する衆議院選挙、野党の頼りなさで選挙は勝っても、国民の信頼は勝ち得るのか?日本の国富はどうなるのか?

 3)株価急落、ご祝儀相場無く、海外メディアは「岸田ショック」との声(朝日新聞)

 4)宏池会の流れを汲む岸田新首相に期待すること。
  『成長の中での分配』でしか「所得倍増は実現できない」。宏池会出身の池田元首相の「所得倍増」は『日本の高度成長』のもとで実現できた。「経済成長無き所得倍増」は、「貧しさの中での再分配」で、『わずかな再分配の見直し』しか展望できない。今こそ、日本の国富を高める『日本国の構造改革』が望まれていると思われる。所得倍増が可能な『世界をリードする成長戦略』の策定・実行・実現に期待したい。

 5)有望な成長分野
  (1)デジタル 
  (2)脱炭素  (水素含む)
  (3)光半導体 (積層板含む)
  (4)航空・宇宙
  (5)バイオ  (医療機器含む)
  (6)農業
  (7)量子
  (8)EV

●3.日本株式は、短期系外資に振り回され乱高下してきた、今後は慎重の中大胆に

 1)日経平均は、NYダウに立ち遅れ。
        9/30    10/8    値幅     値幅率
 日経平均  29,452円  28,048  ▲1,404円安  ▲4.77%
 NYダウ  33,843㌦   34,746  + 903㌦高  +2.67%

 2)外資系短期筋に振り回される日経平均。
  (1)8/20以降は、シティが先駆け、バークレイズが大きく買い仕掛けをして上昇。
  (2)10/1からは、外資系短期筋の売り攻勢で、日経平均は大幅下落。
   ・バークレイズの先物買い枚数の推移。
     8/26      9/30           10/8
    +27,954枚⇒ +80,744(+52,790買)⇒ +69,967(▲10,777売)
   ・Cスイスの先物安値からの買い&高値からの売り攻勢。
     8/27      9/9          10/8
    ▲24,822枚売⇒ ▲2,812(+22,010買)⇒ ▲20,162(▲17,350売)
        ・超短期筋のアムロも、Cスイスと同様に提灯買い⇒提灯売のドテンの攻勢。
   3)EPS(1株利益)が急速に悪化。
      (1)EPSが低下傾向を辿る(企業業績の悪化傾向)。
         9/15   9/30   10/1   10/8
        2,177円  2,152   2,066   2,047
   4)日経平均は指数からみると、「底入れ」を示唆。
      (1)RSIは、10/8に26ポイント。
(2)騰落レシオ(6日ベース)は、10/8に65ポイント。
     しかし、強気に傾けられない懸念事項がある。
(1)騰落レシオ(25日ベース)は、100ポイントと中立圏にある。
(2)バークレイズの先物買い残枚数が10/8現在で+69,967枚と多く、
売り圧力となる可能性の建玉がある。
(3)米国の債務上限問題は12/3までの棚上げで、先送りしたに過ぎない。
(4)米国景気後退とインフレ(スタグフレーション)懸念が高まる可能性がある。
(5)日本の長期金利も低レベルながらも0.045%(10/1)⇒0.08%(10/8)と上昇傾向にある。

 5)10月下旬から、経験則では上昇が期待できるが、米長期金利上昇傾向にあるため、慎重の中で大胆なスタンスで臨むのがよさそう。

●4.企業動向

 1)ENEOS   再生エネ大手を2,000億円規模で買収へ、脱石油へ(読売新聞)
 2)台湾TSMC  ソニーの熊本県菊陽町の工場隣接地に半導体工場建設を検討(NHK)新工場は数千億円を投じる規模。日本政府も一定規模の資金補助する方向で調整を進めている。TSMCは複数国と交渉しているものとみられ、紆余曲折も予想される
 3)日産     生産設備のCO2 排出を2030年に2019年比、4割削減へ(朝日新聞)
 4)パナソニック 電動自転車の生産増強、コロナで人気・高齢化対応  (共同通信)
           

●5.企業業績

 1)セブン&アイ 8月中間決算、海外コンビニ好調で売上は過去最高(朝日新聞)  純利益は前年同期比+46.9%増の1,065億円。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6073 ジェイテクト  好業績
 ・6502 東芝      好業績
 ・6503 三菱電機    好業績

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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