相場展望5月6日 日銀ETF購入抑制で、日経平均嵩上げ4,000円の行方?外資系が『日本株を買わない理由としては充分』、売り注意

2021年5月6日 10:56

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)5/3、NYダウ+238ドル高、34,113ドル(日経新聞)
  ・米国の新型コロナワクチンの普及に伴い、感染抑制のための行動規制の緩和が進んでいる。NY州などでは5/3から、ニュージャージー州などは5/19から商業施設や集会の収容人数の上限を原則撤廃、フロリダ州は5/3にコロナ関連規制をすべて廃止した。米経済正常化が加速するとの見方が強まり、エネルギーや素材、資本財など景気敏感株を中心に買いが入った。

【前回は】相場展望5月3日 米FRBのテーパリングは『悪性インフレの芽を摘む』効果 ⇒ 株価的にはリスク 米バフェット氏、『株式に慎重姿勢』で現金保有増やす

 2)5/4、NYダウ+19ドル高、34,133ドル(日経新聞)
  ・イエレン財務長官の発言で金利上昇が意識され、アップルなど主力のハイテク株に利益確定売りが出て、相場の重荷になった。
  ・コロナワクチン接種の新たな政府目標が伝わり、経済活動の正常化が進み景気拡大につながるとの見方が強まって景気敏感株が買われ、引け間際にプラスに転じた。
  ・ナスダックは▲261、▲1.88%安と大幅に続落。SP500も▲28、▲0.67%下落。

 3)5/5、NYダウ+97ドル高、34,230ドル(日経新聞)
  ・NYダウは史上最高値を更新した。
  ・商品相場の上昇を受け、景気敏感のエネルギーや素材、資本財を中心に買い優勢になった。
  ・米景気回復の高まりも株高を支えた。
  ・ナスダックは▲51安の13,582と▲0.37%減、SP500は+2高の4,167と+0.07%高

●2.米株式市場は5月以降、材料が乏しいなか軟調が懸念され、下記項目に注目したい

 1)今週で米国企業の決算発表はピークを迎え、来週以降は材料が乏しくなる。

 2)イエレン発言を受け、FRBによる利上げ時期が早まる可能性が一時的にせよ意識された。

 3)コスト上昇による販売価格値上げ動向の広がりに注目(インフレ率上昇)。

 4)雇用が急改善ならば、FRBの金融政策に影響与える恐れ(段階的縮小に弾み)。

●3.イエレン財務長官が、『追加財政拡大で、(1)インフレや(2)金利上昇』と警告(フィスコ)

 1)イエレン発言もあり、NYダウは一時▲350ドル近く下落し、10年国債利回りは1.58%で推移した。

 2)株価急落後、イエレン氏は『追加財政ではインフレにならず、ほんのわずかな金利上昇』と釈明した。

●4.インフレリスク高まる、供給不足で企業は値上げを余儀なくされる可能性(ブルームバーグより抜粋

 1)供給不足や物流の混乱で、値上げを予告する消費者関連企業がこの数日間で増えており、インフレの兆候が強まりつつある。

 2)半導体や鉄鋼、木材、綿などさまざまな原材料の在庫が減少し逼迫している。欧米の製造業者は今週、受注残が過去最高となり、コストが上昇していると指摘している。

 3)商品がますます割高になるなか、インフレ加速が一時的なものと判明するかどうかは、FRBと市場にとっては最大の課題だ。バンク・オブ・アメリカの調査では、(1)物価上昇と(2)FRBの対応が、最大の懸念事項となっている。

 4)FRBなど金融当局者は、物価上昇は一時的なもので、新型コロナウイルスへの懸念と失業といった要因で、抑制されるとの立場を維持している。一方、投資家は依然として懐疑的で、ネスレやコルゲートなどの企業は値上げ表明を既にしている。

 5)原材料23種で構成のブルームバーグ商品スポット指数は、10年ぶりの高水準に達した。米供給管理協会(ISM)発表の製造業総合景況指数では、仕入れ価格指数は2008年以来の高水準となった。HISマークイットは、「現在の環境では、リスクは明らかに上向いている。この1年の商品価格の上昇は、今夏の物価上昇は確実だ」とした。

●5.バイデン大統領が「成人の70%が少なくとも1回目のワクチン接種を7月4日(独立記念日)までに完了することを目標」と伝わる                 (フィスコ)


●6.米FRB議長、米経済は改善も、人種・教育格差が課題で『窮地は脱せず』(ロイターより抜粋

 1)パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は5/3の講演で、『インフレが高進するリスクがあっても、雇用拡大を優先する』と強調した。
  ・昨年、解雇された人で、人種別では白人が14%だったのに対し、黒人やヒスパニック系が20%以上になった。
  ・育児や学校教育の問題を理由に仕事を辞めているか仕事量を減らしている親は全体の22%に上り、なかでも黒人やヒスパニック系の母親の割合は36%、30%と高い。
  ・働き盛りの成人で、昨年解雇された4年制大学卒業者は12%に対し、卒業していない人は20%と差が開いた。

●7.米バーンスタイン国家経済諮問委員会(CEA)委員は、パウエルFRB議長の続投に関して明言を回避(フィスコ)


●8.経済指数の鈍化は一時的で、強い回復につながる可能性がある(フィスコ)

 1)経済指数は予想外の低下となったものの依然として高水準にある。
  ・調査によると、楽観的意見は11対1と、3月の8対1からさらに増加した。
  ・指数の鈍化要因も、パンデミックや半導体不足による供給不足の影響が大きく、需要に追い付けない状況が続いた。混乱が解決した際には、より強い回復につながる可能性がある。
  ・製造業の強い雇用の伸びも期待される。
  ・失業者は職場に復帰するよりも、高額な保険を得ることを優先していることから、企業は労働者を確保することが非常に困難だとコメントしている。

 2)FRBも金融緩和縮小の協議を開始する可能性がある。

●9.米・4月ADP雇用統計は+74.2万人と、予想+85万人は下回った(フィスコ)

 1)予想よりも下回ったものの、3月+56.5万人から拡大し、昨年9月以降で最大。

●10.米・4月ISMサービス業は64.7と、予想63.1を上回った(フィスコ)

●11.米・4月ISM非製造業景況指数は62.7と、予想64.1・3月63.7を下回った(フィスコ)

●12.米・4月ISM製造業景況指数60.7と、予想65.0・3月64.7をも下回った(フィスコより抜粋

 1)米供給管理協会(ISM)が発表した4月景況指数が前月から低下したのは、長期化するサプライチェーンの目詰まりの問題や、部品不足で生産が抑制されたためで、受注残は膨らんだ。

 2)支払価格は上昇。
  支払価格は89.6と、3月の85.6から上昇し、2008年7月以来で最高となった。

●13.米・3月製造業受注は前月比+1.1%と、予想+1.3%を下回った(フィスコ)

●14.米・3月建設支出は前月比+0.2%と、予想+1.6%を大幅に下回った、2月▲0.8%(フィスコ)

 1)住宅建設が好調だったが、非住宅と公共部門の支出が軟調だった。(ロイター)
 2)建設支出は国内総生産(GDP)の約4%を占める。

●15.バフェット氏、「米経済は、予想以上にインフレが進行し、『過熱』」と認識(ブルームバーグより抜粋

 1)予想以上に速いペースで景気回復が進んでいる理由
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)と米政府が断固とした救済策を迅速に講じたため。

 2)経済の現状認識
  ・経済救済策で、米経済の85%は「超高速ギア」モードとなっていると指摘。
  ・経済成長が盛り返し、低金利が続くなかで多くの会社が値上げを実施しており、6カ月前時点の予想を超える「インフレが進行している」と説明した。

 3)90歳のバフェット氏、後継者をアベル副会長に内定

●16.米通信大手ベライゾンはメディア事業(米ヤフー、AOL)をアポロに50億ドルで売却(共同)

 1)ベライゾンのメディア事業は業績が伸び悩み、2018年に▲46億ドルの減損。(ロイター) 

 2)日本のヤフーはベライゾンと資本関係なく、影響は受けない見込み。

●17.米医薬品大手ファイザーの2021年ワクチン売上高2兆8,000億円(共同通信)

 1)従来予想の約1.7倍に当たる260億ドル(約2兆8,000億円)に上方修正した。年内売上分は16億回分供給。

●18.モデルナも今年のコロナワクチン売上高が184億ドル(約2兆円)の見込み(朝日新聞)

●19.米・アイロボットは、コスト上昇で収益伸び悩み、株価は急落し警戒した売り(日経新聞)

●20.米3月貿易赤字は▲744億ドルと過去最大、内需回復で輸入拡大(ロイター)

 1)米経済活動は他国より早く持ち直しており、今後も赤字は拡大する可能性が高い。

●21.ブラジル・3月生産者物価指数は前年同月比+33.5%上昇、2014年1月以来最大(ロイター)

 1)ブラジル中央銀行が一段と金利を引き上げる可能性がある。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)5/3~5、メーデーの大型連休のため休場。

●2.中国の農民工、2020年は▲517万人減少(新華社)

●3.米フィデリティは、中国アリババ傘下のアントの評価額2,950⇒1,440億ドルに(ロイター)


■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)5/3~5、GWのため休場

●2.日銀ETF購入35兆円で、日経平均が嵩上げされた+4,000円の行く末は?

 日銀ETF購入抑制、これでは、外資系が『日本株を買わない理由としては充分』、売りに注意

 1)日銀ETF購入実績の推移
  ・ETF購入残高(簿価ベース・2020年11月末時点) 約35兆円

 2)日銀ETF購入に関する変更点の推移
  ・購入種類:2種類のETF購入 ⇒ 日経平均型の割合低下 ⇒ TOPIX型に統一
  ・購入枠 :年間購入6兆円+最大年12兆円 ⇒ 6兆円枠撤廃 ⇒ 最大年12兆円
  ・購入判断:前場引けTOPIX ▲1%超安 ⇒ ▲0.5%超安 ⇒ ▲1%超安
  ・購入金額:1回当たり 1,203億円 ⇒ 701億円 ⇒ 2021/1~3 501億円 

 3)日銀ETF購入判断・役割の内容
  ・2020年12月までは前場引けでTOPIXが▲0.5%超の安値の場合、日銀はほぼ確実にETF購入を実施してきた。
  ・それによって、日銀は株価下落の下支え役となってきた。
  ・結果として、日銀のETF保有残高は東証1部時価総額の7%程度と日本最大の大株主になった。
  ・日銀は「官製相場」を自作自演で演じ、含み益が増大するという恩恵を最も受けている。

 4)外資系短期筋は日銀のETF購入を利用した運用を実施
  ・外資系短期筋は、日銀の株価買い支えを前提に、買い仕掛けを演じてきた。

 5)日銀のETF購入の変化に対応した外資系短期筋の動き
  ・ところが、2021年1月から日銀のETF購入に変化が表れた、1回当たり購入額を701億円⇒501億円の減額(大幅下落時は701億円)した。
  ・日銀ETF購入実績2021年
   2021年 (億円)          2020年 (億円)
   1月 4回 2,004 4回×501       4,213 6回×702
   2月 1回  501 1回×501      5,624  8回×703
   3月 5回 2,705 4回×701、1回×701   1兆5,232  6回×1,002、1回×1,204
                                   4回×2,004
   4月 1回  701   1回        1兆2,020
   1~4月合計 5,711億円          3兆7,089億円
                       
   ・日銀のETF購入状況の抑制を見て、外資系も変化したと思われる。
   ・外資系短期筋の日経平均先物の買い残が、2/25の283,641枚をピークにして、売り越しに転換し、4/30時点174,972枚(▲38.3%減)まで減少させている。

 6)4月は上昇パターンの特異月なのに低迷した理由
  ・4月は95%の確率で上昇するという特異月である。にもかかわらず、下落したのは何故か?
   日経平均  3/31 29,178円  ⇒ 4/30 28,812円  下落率▲1.25%
  ・4月に日銀のETF買いは、4/21にTOPIX前場▲2.17%下落時の701億円の1回だけ、である。なお、4/20は▲1%超を超える▲1.25%下落したが、日銀はETF買いを見送った。
  ・4月低迷の要因は、日銀のETF購入抑制への転換に、外人投資家が気付き、日本株売買戦略を変更し、4月に買い仕掛けをしなかったことで、4月特異月は空振りに終わった、と見る。

 7)日銀のETF購入抑制が及ぼす影響
  ・日経平均は日銀のETF購入による買い支えで、+4,000円程度、嵩上げされたと言われる。
  ・3/19後場に、日銀の金融政策に関する検討結果が公表され、日銀の上場投資信託(ETF)購入方針の変更が伝えられた。内容は、(1)日経平均連動型ETFの購入を除外し、(2)TOPIX連動型ETFに一本化するというものだった。外資系は、日経平均の寄与度が高い値嵩株を軸に株式操作をして買い仕掛けをおこなっていただけに、日銀によってハシゴを外された思いだろう。
  ・加えて、日銀のETF購入抑制の転換は、日銀による買い支えが無くなることである。内外投機筋は、その買い支えを前提としていただけに、外資系長期マネー(海外の年金・政府系)と内外投資筋にとって、『日本株を買わない理由としては十分』ある。

 8)日銀ETF購入約35兆円が嵩上げした日経平均約4,000円の行方?
  ・日銀ETF購入が、内外投機筋に与えた『買い仕掛けの安心感』があった。それで日銀は『間接的な高株価誘導』をかなえてきた。
  ・外資系短期筋は今まで、日経平均の寄与度の高い値嵩株を軸に、日経平均を上下させることで、日本の株式市場を思うままに操縦してきた。
  ・今回の日銀のETF購入の抑制で、外資系は運用の基本戦略の変更を迫られた。そして、態勢立て直しのため、今まで買い込んできた値嵩株含めた現物株を売って買いポジションを下げるリスクが出てきた。外資系による1月第1週~4月第2週の現物株買い残高:1兆6,370億円
  ・米国ではFRBが市場に毎月1,200億ドル(約1兆3,000億円)の資金供給を続けている。また、FRBは金融緩和と低金利政策を継続しており、NYダウも史上最高値を更新している。そのため、日本株は米国株にサポートされ平穏な動きをすると思われるが、今後の外資系の現物株の動向に注視したい。
  ・日本株式の最大の保有者・日銀は国債と違って、どこかで売る必要がある。最大の保有者である日銀が『売りに出れば、その報道だけで株価が急落する』懸念がある。
  ・外資系は日銀のETF売りを待つことなく、早めの『売り仕掛け』をしてくる可能性がある。
  ・日本株は3月まで、米国株との連動性が高かったが、今後は日銀の動向を意識しながら相場と向き合うことになりそうだ。4月に入ってからの日本株動向が軟調に向いている要因はここにある可能性がある。黒田総裁の任期終了は2023年4月8日に迎える。運用のプロである外資勢は最大の注意を「日銀の動向」に向けているはず。

●3.企業動向

 1)日産自  独ダイムラー株を全株売却、1,500億円を車の電動化投資へ(ロイター)
        協業が進展せず、ルノーに続き、持ち合い解消

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2802 味の素    調味料・医薬・飼料。増益。
 ・2503 キリン    増益。
 ・2801 キッコーマン しょうゆ最大手。北米が成長。増益。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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