トヨタ組織改編 ソフト開発競争に対応するハードとソフトの開発分離を狙う

2020年9月28日 17:22

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 トヨタの人事異動が激しい。経営陣から幹部社員と続き、これまではどちらかと言うと豊田章男社長の後継体制構築に目的があるように見ていた。今回の改変は、自動車業界が直面する変革に対応するもののようだ。ハードとソフトの分離開発に都合が良いと思われる組織を目指している。

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 現在、自動車を構成する要素で、メカニカル部分、つまりハードと呼ばれるものの開発は、1モデルのハードの仕様に沿って行われるのが基本だ。それに伴い、ECUなど制御システムを開発するのも1モデル単位だった。

 しかし最近では、運転支援ソフト、スマホ機能など繋がるソフトの改変については、モデルチェンジを待っている訳ではなく、進歩のスピードが「3年経てば古代の遺物」と言われたパソコンに匹敵するようになってきた。スマホのモデルチェンジスピードと言っても良いくらい早くなっている。

 さらに新しいソフトへの更新は、ハードのモデルチェンジを待たずに通信で行うようになっている。スマホやパソコンは、既に通信でアップデートが自動的に行われており、自動車のソフトが通信で更新されない方がおかしいと感じる。ソフトはハードと一体で役割を果たすが、ソフトだけの進歩でも機能はかなり進歩することが出来る。スマホなどと比較すれば、自動車のハードの役割は重大だが、それだけに制御ソフトの変更だけで解決できる問題も少なくない。

 しかしそこで問題となるのは、「ハッキング」と「バグ」だ。ファイヤーウォールは通信を使う以上厳重にしなければならないが、「完璧」な防御が出来ないことは知れたことだ。必ずハッカーは現れる。そこで安全限界をどこに設けるのかが、問題となる。危険が及ぶ範囲のソフトのアップデートは、ディーラーで本人承認を確認しないと出来ないようにすることも考えなくてはなるまい。

 バグの修正については、マイクロソフトのWindowsなどの修正と同様では、さらに問題を起こしてしまうことが考えられる。スマホやパソコンと違うのは、ソフトのバグ(エラー)によって「事故」に直接繋がることが考えられるからだ。現在でもECUソフトのバグは散見されるのであり、ユーザーが知らぬ間に故障の修正が行われていることを前提にすると、法律上もどの様に安全を保障するのか?また事故について責任の所在が明確に出来るのか?など、開かれたアーキテクチャーが必要である。航空機の「ブラックボックス」などと同様に、事故に至る経過を保存する義務を課すことが必要ではないだろうか?

 ドライブレコーダーでアクセルブレーキなどの操作を記録することなどを義務付け、現在までのような保険会社の査定基準による簡易な責任分担ではなく、厳正かつ敏速に判断できる基準を社会に向かって公表しておく必要があると考える。

 今後、さらにソフトウェアの比重が高まり、自動車の機能が根本的に変わりつつある中では、開発においてハードとソフトが一体であることは不合理となっている。VWなどは「ソフト開発企業になる」と宣言するくらいの覚悟を持っており、トヨタ、日産、ホンダなど日系企業においても、ソフトは常時入れ替えが進む機能にしなければならない時が来ている。テスラは、既にこうしたシステムとして出来ている。今回のトヨタの組織改編が、こうした背景から開発機能が時代の要請に応えるようにするため、まず組織の在り方を変えていることは賛成だ。

 トヨタの組織らしい対応の仕方であると考える。むしろ、遅すぎたと言えるかもしれない。開発から製造現場、販売現場からアフターサービスまで、システムの見直しが急務であることは言うまでもない。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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