ホモロゲーション車両が背負う決意 (3) 「そのままローカルラリー出場」が出来る車

2020年8月20日 06:28

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トヨタ・GRヤリス・RS (プロトタイプ)(画像: トヨタ自動車の発表資料より)

トヨタ・GRヤリス・RS (プロトタイプ)(画像: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]

 次に、トヨタ・GRヤリス3タイプの走りの差について触れておこう。ただ残念ながら筆者自身で試乗できないので、ドライビングについてはプロの評論を参考に、必要と思われる周辺の知見を付加することとした。GRヤリスを一言で表すなら、「そのままローカルラリー出場」が出来るクルマだ。WRCカー、すなわちWRCのトップカテゴリーカーに近い操作感を味わえるようだ。パワーについては実際のラリーでさらにチューニングされるであろうが、操縦性能に関してはかなり近いのではないか?と思われる。

【こちらも】ホモロゲーション車両が背負う決意 (2) GRヤリスRZ High performance、RZ、RS、RC

 ・GRヤリスRZ High performance
 豪華装備にLSD付きのハイパワー4WD。

 ・GRヤリスRZ
 装備省略でLSDなしのハイパワーモデル。

 ・GRヤリスRS
 FFでヤリス標準車のパワーユニット、Direct Shift-CVT。

 「GRヤリスRC」はラリー参戦車両開発のためのベース車両であり、日常使用を前提とした場合は論じても無意味なので除外する。筆者が昔のようにラリー参戦を考えるに、すでに年を取りすぎたのが残念であると思わせる車だ。

 「GRヤリスRZ High performance」、「GRヤリスRZ」は、ハイパワーの1.6Lターボエンジン:最高出力272ps、最大トルク37.7kgmを搭載している。そのため、WRC「世界ラリー選手権(World Rally Championship)」の「トップカテゴリーカー」と極めて近い操縦感覚が味わえると考えられる。

 ハンドリングについては、「オーバーステア」が出やすいようにセッティングされているようだ。コーナリング中にアクセルを踏んでパワーをかけたときにはFRのようにオーバーステアになり、ブレーキを踏んでもFFのタックインのようにオーバーステアが出る。曲がるには容易になっているようだ。素人であるとスピンの危険を感じる場面だが、これにも制御が入るようだ。

 「GRヤリスRZ」はLSD(リミテッドスリップデフ)を装備せず、ドリフトの後、コーナー立ち上がりに不安が出るのかと思いきや、意外にスリップは制御されているようだ。この辺の味付けは、テスト結果によるもののようだ。

 エンジン出力については、ターボエンジンのおかげか低回転から強烈なようで、立ち上がりから鋭く、高回転まで伸びると言う。この辺は高回転型エンジンの持ち味であり、上級者にとってたまらない魅力になっているようだ。軽量であることも見逃せない。

 4WD「GR-FOUR」の前後トルク配分は、3段階を選べるようになっている。ノーマル・モードF:R=60:40、トラック・モード50:50、スポーツ・モード30:70とあえて固定されており、この辺のマッチング具合は実際に試乗してみないと分からないのが本当のところだ。また路面状態によっても大きく変わるはずで、ラフロードでの使用を当然として考えているのであろう。日常の一般道でその差を試すことはご遠慮いただきたい。

 注目すべきは「GRヤリスRS」であるが、FFでありながらかなりの旋回性能を持っているようだ。軽量であることも手伝って標準車のエンジンパワーでありながら、上級者にはそれなりの楽しみを与えてくれるようだ。この仕様の売れ行きが、WRCカーの運命を握っていることに注目したい。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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