プラスチックの「パイオニア企業」の落下傘社長の奮闘

2020年1月24日 21:01

印刷

 縁あって、天昇電気工業(天昇電気)の石川忠彦社長と知己を得た。天昇電気といえば「プラスチックのパイオニア」と称される企業。

【こちらも】クリナップ、シャープに見る社名変更の舞台裏

 周知の通り海洋の「廃プラゴミ」問題が「海の生態系を崩す」とし危惧されている。石川氏も「ペットボトルやストローに象徴される廃プラ問題は看過できない。しっかりした再生の体制づくりが不可欠」とした上で、こうも言及した。「プラスチックが持つ軽さ・強さ・成形のしやすさは、産業構造を支えていることも事実」。

 天昇電気は売り上げの7割近くを、自動車の内装・外装品で占めている。独立系でその商圏は、内外の自動車メーカーの多くに及んでいる。また家電・IT関連製品とのパイプも太い。ビジネスの基盤は整備されている。

 だが石川氏は「いま、当社の技術を活かしてオリジナル製品(新規分野)の開発・深耕に注力している」とした。話を聞いていて「なるほど」と思わされる製品の存在を知った。

 例えば、「ミッペール」シリーズ(20タイプ)。医療用廃棄物専用の容器である。医療現場には言うまでもなく「感染性廃棄物」の厳重な処置が求められる。ミッペールの特徴は以下の3点。

 *ゴムパッキングによる完全密封で液漏れしない。
 *フタと本体の高密着性で外れない。
 *フタが完全に閉まると音がする設計で、密閉が確認できる。

 また商品名「プラダムくん」にも、惹かれた。

 駐車場・公園・学校・ショッピングモール・ホームセンター・コンビニなどの施設の地下に、既に1万数千件の施工実績がある。かつ年間5000件を超える引き合いがあるという。雨水貯留浸透資材だ。

 「ゲリラ豪雨」に象徴される局地的な豪雨の発生が多発。雨水流出抑制施設の必要性が高まっている。ポリプロピレン樹脂を射出成形した「プラダムくん」とシート類を組み合わせて、雨水を一時貯蓄し雨水利用や流出抑制施設として機能させる製品システムである。

 石川氏が天昇電気(上場1961年)の社長に就任したのは、2013年。大株主の三井物産で、主に化学品合成樹脂業界畑を歩いてきた。が、物産からの天下りではない。

 「天昇との縁が深かった知人から、再建を頼みたいという依頼で、第2の人生に踏み切った」。いわば「突如の落下傘社長」。「いろいろありましたが・・・」とする。紆余曲折は多々あった。

 例えば目下、台湾の鴻海精密工業の傘下で再建を進めているシャープの液晶TVのTV枠をはじめ内外装品に注力が過ぎて・・・経営悪化など。

 石川氏はいま、「オリジナル製品をどんどん提案・開発に取り組んでくれ。ゴーサインを出した以上は失敗しても責任は私がとる」。また「社員持ち株会をもっと活用してくれ」と執拗に社員に向け訴えている。

 ちなみに本校作成時点の株価は今3月期の「21%強の営業利益増(回復)」を映し、600円台出入り水準(昨年来安値比3.4倍近く上値)。

 先々を見定めたい企業・社長に出会った。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事