革命的進化? 新型ダイハツ・タント「DNGA」の成果 「D-CVT」は何をもたらすのか? (3)

2019年7月13日 20:41

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ミラクルウォークスルーパッケージのイメージ。(画像: ダイハツ工業の発表資料より)

ミラクルウォークスルーパッケージのイメージ。(画像: ダイハツ工業の発表資料より)[写真拡大]

 こうした中で新型ダイハツ・タントは、商品力・資金効率の大幅な進化を見せている。それが、「発進時・低速時の走りやすさ」とある程度の「高速走行時の快適性」、そして全速度域での燃費の良さをもたらしてくれる主役技術、「D-CVT」である。自動車としての「走る性能」の進歩や、軽四輪自動車としての実用性を適えている。

【前回は】革命的進化? 新型ダイハツ・タント「DNGA」の成果 「D-CVT」は何をもたらすのか? (2)

■4代目、新型ダイハツ・タントの改善点

●プラットフォームの進化

 DNGAに準じた設計により採用された新開発プラットフォームは、曲げ剛性が約30%向上し、約40%の軽量化を成し遂げている。この軽量化にはアルミ・カーボンなどの新材料の使用は増えていないが、コスト的に対応可能な「ハイテン材の活用・構造の見直し」などで(1)「軽量化」し、(2)「衝突安全性を向上」させ、(3)「振動や騒音のレベルを下げる」ことなどに成功している。

●運転支援機能の進化

 衝突回避支援システム「スマートアシスト」は、世界最小(左右カメラ間隔80mm)の「小型ステレオカメラ」を採用し、歩行者にも反応出来る機能を持ち、衝突回避支援ブレーキ機能を作動する。

 リヤについては、2箇所のソナーセンサーによって、左右後方の障害物を検知し死角を無くすことを実現。ブザー警告音を発する「コーナーセンサー」としている。さらに、ハンズフリー駐車支援なども可能にしており、上級車並みの運転支援システムの装備は、はなはだ喜ばしい限りだ。

●電動ドア、Bピラーオート連結など

 パワースライドドアを左右に採用し、電動で重量がかさむが「使い勝手」を優先している。これはBピラーをドア側に持たせる構造で、ドアを閉めたとき、ボディ構造とドア側Bピラーを自動的に連結する。これらの機能搭載を行うことで増加する重量を、プラットフォームの「軽量化」や「D-CVT」などで補っている。

 ミラクルオープンドア、最大540mmロングスライド運転席シートなどを組み合わせて「ミラクルウォークスルーパッケージ」を実現している。これは「使い勝手」として、軽四輪製造各社が、後を追いかける大きなアドバンテージとなってきた。

■基本性能の高性能化

●プラットフォームの高剛性化に成功

 新型タントは、プラットフォームの構造を変えると同時に、ハイテンを多用して剛性を30%ほど上げることに成功している。これは、ボディの制御不能な動きや振動を抑え、サスペンションセッティングに良い影響を与えている。ハンドリング向上と乗り心地の向上、静粛性の向上に貢献。とても軽四輪自動車とは思えない乗り心地を実現しているのだ。

■「変速レンジを幅広く取る」ミッション(変速機)「D-CVT」の貢献

 今回、新型ダイハツ・タントに装備されたミッション(変速機)はCVTで、新開発の仕組みだ。CVT基本構造の「プーリーと金属ベルト」による動力伝達と、「遊星ギア」による伝達の組み合わせで、「変速レンジを幅広く取る」ことに成功している。トヨタのCVTでは「1速」をギアで受け持つシステムがあるが、ダイハツのD-CVTは「オーバートップ」をギアで造ったと考えると良いかもしれない。

 「変速レンジを幅広く取る」ことで、発進時などでは大きな変速比でエンジンに負担がかからず、強い力で走ることが出来る。高速走行になるとエンジン回転数を落とすことが出来るため燃費も良く、高速道路でのクルージング時も騒音や振動を下げ、乗り心地に貢献出来ることとなる。実用性から考えて、「走る基本性能」の向上に最も寄与している新開発技術と言える。

 新型ダイハツ・タントの「D-CVT」は、軽自動車枠660ccのエンジン排気量の制限内で、日常使用領域での良好なセッティングを可能にし、コスト面から考えると「現状の最高技術」と見ることが出来る。「エンジン性能で規制が出るならミッションで最高性能を・・」と努力しているのだ。

 マイルドハイブリッドで解決する方法もあるが、モーターやバッテリー搭載を避けて、コストを抑えても可能なことがあると示している。CVTについて「タイムラグ」などフィーリングの面で否定的声も多く聞くが、エンジン性能を無理なく引き出すシステムとして、「天性の合理性がある」ことと、ギアとの組み合わせで欠点を克服していく努力で、エンジン車にとって適切なシステムであることが見て取れる。特に軽量小型の軽四輪自動車にとっては・・。

■軽自動車の実用性の高さ

 近年の日本国内市場を考えると、軽自動車の枠内での工夫は素晴らしいものがある。買い物や、老人・子供の送迎など「日常使用」に特化したその使い心地は、日本市場では、ボディの大きさと共に、実用車としては小型車が無意味になるほどである。軽四輪自動車であるのに、ある程度の遠距離を走行することも苦にならない「安全性と快適性」を実現した技術力を称賛したい。国民所得が伸びない中で、軽四輪自動車の実用性をここまで上げてきた、「日本国、国民万歳」なのだろうか?国民所得を伸ばすことが先行すべきではないのか・・!?(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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