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スバル国交省への報告書(4) スバルの言い分(3) 「実際の不良はなかった」
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(2)実際の不良はなかった。
調査期間は2012年12月~2017年11月で、残存していたデータから、「実測数値を予測復元してみたが、管理限界を超えるものはなかった」としている。これは、上限値と下限値のデータが残っていたので中心地を取ってデータ再現としたようだ。その値そのものにそれほど違いは考えられないが、問題は、調査したのが第三者ではないところから、多岐に渡った書き換えの方法論からして、「不良品」と断定するデータを隠蔽している疑惑は、完全にはぬぐえない。
【前回は】スバル国交省への報告書(3) スバルの言い分(2) 「組織的関与ではない」
検査台数は、“車系毎に原則として生産台数の1%以上(最大で月あたり30台)”としている。対象工場の生産台数が分からないが、車種別に月当たり3万台であると300台となり、最大が30台までなので1/1000となる。つまりロットが大きくなり、不良が見つかると大変な損害となる。前提条件となっているこのロット検査において、『品質保証上からみてこれで良い』とする理由は示されていない。
Car Watchによる「スバル、完成検査工程における燃費・排出ガスの抜き取り検査で903台の測定値を不正書き換え」の記事によると、
“判明しているのは、燃費・排出ガス測定の対象となった台数が6939台、測定装置などにデータが保存されていた台数が6530台、測定値の不正な書き換えを行なった台数が903台となる。”としている。
なお、スバルのこの報告書からは、『不正が行われた台数、それによって影響を受けたであろうロット数、並びに総計の生産台数』などを知るのは困難だ。それは「被害状況」とまでは言わないが、この書き換えにより影響を与えたかもしれない規模について、言及を避けたかったのであろうと推察できる。何しろ「不良品はなかった」としたのであるからだ。しかし、「事の重大性をわい小化させかねない」ものと感じる。『間違いをスバルが犯せば、損害を被るであろうユーザーの立場』に立って、分かりやすく説明する姿勢が求められるのだ。報告書の法的弁護の姿勢では、ユーザーの反感を呼ぶことになる。「不良はなかった」とするなら、よけいに、不安を与えているユーザーに対して『自分の不遜を詫びる常識』が欲しい。
つまり、「調査期間は2012年12月~2017年11月で、燃費・排出ガス測定の対象となった台数が6939台」とすると、「生産台数の 1%以上(最大で月あたり30台)」が検査対象であるので、「少なくとも69万3,900台が生産され、903台が書き換えられ9万300台が不良であった可能性があった」と疑惑が残るのだ。これらの測定対象が「良品であった」とする根拠を、推測でなく科学的に証明することが必要であろう。
もちろん、「デジタル・フォレンジックス調査」を排出ガス測定装置に搭載されたハードディスクに対して行い、再現値は根拠が明確になっているとされている。しかし、測定値を書き換える不正を冒した組織としては『組織全体が信頼を失った』状態であり、さらに不正がないかどうかについて不信が続くのが当然だ。したがって信頼を得るには、契約弁護士の言葉により論証しても難しいだろう。
報告書P39
“検査の現場では、測定値の不正な書き換えが上記のとおり長年にわたって行われており、このような実態からは、検査の公益性・重要性について自覚がほとんどなかったと言わざるを得ない。燃費・排出ガスの測定値に関し、このように不正な書き換えが行われているとユーザーが知った場合、当社に対する信頼が失われることは容易に想像することができる”
自らこの報告書で、信頼性が根本から失われたことをとうとうと述べているが、スバルは残存していたデータを推測再現してみると、“全て管理限界内にあり、不良はなかった”と宣言して見せている。国土交通省には報告書で詫びても、ユーザーには詫びる姿勢を見せていない。現場のディーラーの営業マンは「問題はない!」とする強い姿勢で対処してきた。新車購入の前向きな会話の中であったので、営業マンのこの問題についての異様に強い口調は違和感でいっぱいだった。特にこちらが、この問題をその時、問題視していないだけに、ユーザーである当方が怒られているような気分になった。私が営業マンをなだめたのだが、この問題をかなり気にしており、気の毒に感じる場面だった。
次に、原因は「規範意識の欠如」とするスバルの言い分を見てみよう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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