【トヨタ、水素ミライの実験開始】ガラパゴス化?成功すれば日本の救世主

2018年1月7日 09:02

印刷

トヨタのFCV「MIRAI」。(c) 123rf

トヨタのFCV「MIRAI」。(c) 123rf[写真拡大]

 昨年の夏、トヨタは他社および神奈川県と協力し、横浜市風力発電所(ハマウィング)で電気を作り、敷地内で水を電気分解して水素を製造、それを貯蔵・圧縮して充填車で近隣に運び、横浜・川崎市の倉庫や工場で稼動する燃料電池フォークリフトに供給するというプロジェクトを開始した。実施期間は2018年度までとなっている。

【こちらも】【トヨタ・全モデル電動化】当面は全固体電池がカギ 電池生産に1.5兆円投資

 風車で発電し、水を電気分解して水素を作り出すシステムは理想だ。しかし、本格的なFCVの到来の初期時点では石炭や石油から水素を抽出することが考えられており、電気自動車(EV)の方が水素を媒介しないだけに現実的なのではないのか?

■ガラパゴス化するのか?FCV(燃料電池車)
 トヨタが世界に先駆けて燃料電池開発に成功、特許を公開したときはびっくりした。なぜなら「燃料電池の開発は巨額の投資が必要で、その資金需要のため単独の自動車会社では倒産の危険がある」とされていたからだ。そのため世界の自動車会社は連合軍を作り始め、どこが主導権を握るのかと注目を集めていた。

 しかし、開けてみればEVの従来のバッテリー性能の向上との競争であり、水素の製造に石油が必要で、再生可能エネルギーで発電しなければ意味はなく、水からの電気分解での水素製造は将来のこととされたからだ。

 さらには水素ステーションなどインフラ整備にEVと比べて巨額の費用が掛かり、災害時の水素貯蔵の心配があり、家庭に水素が分散すると管理が行き届くのかと心配になる。

 バッテリーならば充電スタンドはコンビニでも整備出来、短期間・低資金量でインフラ整備は終わるものと見える。中国・インドなど水素インフラ整備よりEVを普及させる動きに出てきたが、当然の動きで需要が大きく伸びる可能性がある。

 一方で、BMWなどドイツ勢もFCVに熱心で、大型長距離の車には水素が良いとの観測に立っている。しかし、それもバッテリーの性能向上が進むと、一気にすべての自動車市場がEVに傾く危険がある。

■2030年までにEV・FCV比率を10%以上に
 トヨタは、2017年年末の「トヨタの電動車普及に向けたチャレンジ」説明会においても、EVとFCV両にらみで備えていることは確かだとわかった。プリウス、MIRAIなど電動専用車は車種を拡大していく方針で、2030年までにはEV・FCV比率を10%以上にまでもっていきたいようである。乗用車では、SUVやレクサスにもFCVを展開していく予定だ。

 世界でただ1社、燃料電池開発に成功した技術力と資金量には敬意を表するが、その特許を開放してしまったのが、世界の水素社会到来の難しさを証明しているのだろう。しかし成功すれば、エネルギー自給率の低い日本は永久にエネルギー輸入から解放されて、世界の経済圏も激変することになる。アメリカのシェールガスどころでない激変なのだ。日本の救世主となるかもしれない。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事