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JOLED、世界初の印刷方式有機ELパネルを製品化 医療用に採用
21.6型有機EL(写真:JOLEDの発表資料より)[写真拡大]
JOLEDは5日、RGB印刷方式による有機ELパネルを世界で初めて製品化し、5日より出荷を開始したと発表した。出荷を開始した製品は、21.6型4K高精細の印刷方式有機ELパネルである。
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JOLEDは2015年の発足以降、印刷方式による有機ELパネルの研究開発、量産技術の確立を進め、2017年4月から開発品のサンプル出荷を開始。製品の完成度や生産性の検証において必要とされるレベルを実現したことから、このたび製品としての出荷を開始。同製品は、医療用モニターへの採用が決まっているほか、さまざまなアプリケーション向けに順次出荷されるという。
有機ELパネルの市場は韓国勢の独壇場だ。スマートフォン向けの小型パネルはサムスン、テレビ向けの中型パネルはLG電子がほぼ独占している。
有機ELパネルは発光ダイオードの一種で、発光材料に有機化合物を用いる。現在のTVで採用されている液晶に比べて、薄型軽量、低消費電力、応答性、高輝度、曲面が特長である。
有機ELパネルの製造方式は、蒸着方式が主流であり韓国勢が採用している。今回の発表は、蒸着方式と同等の画質を実現でき、蒸着方式に比べて製造コストを抑えられる独自のRGB印刷方式という。この製造方式の優位性で、市場の巻き返しを図る。
日本が韓国勢に対して巻き返しを図るためには、量産化投資、印刷方式の業界標準化、注力する市場が重要であろうか。
JOLEDは、産業革新機構が75%、JDI(ジャパンディスプレイ)が15%、ソニーとパナソニックがそれぞれ5%を出資している会社である。JOLEDの連結子会社化は、JDIの業績不振から見送られている。このような状況下での量産化への資金調達は水面下で行われているようだが、重要な戦略のひとつであろう。
次に、有機ELの製造コストを3割下げる印刷方式の優位性を活かすことである。印刷という製造方式はパナソニックと共同開発した独自なものである。つまり、印刷方式が有機ELパネルの業界標準の一つになることも視野に入れた戦略が重要であろう。さもなければ、材料・製造設備・評価といった全ての工程をJOLEDが担うことになり、大きなリスクになる。
最後は、注力するアプリケーションであろう。4Kの高画質を活かせる医療向けの有機ELパネルへの出荷が決まっているとのことである。有機ELパネルの付加価値を認める市場を創造していく戦略が必要であろう。
大きな生みの苦しみがあるのであろうが、有機ELパネル市場で巻き返しがなることを大いに期待したい。(記事:小池豊・記事一覧を見る)
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