大正製薬が医療用医薬品も手掛ける理由

2017年12月7日 15:44

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 大正製薬の売上高は大雑把に、店頭販売の「一般用医薬品:2」に対し「医療用医薬品:1」。営業利益に至っては「10対1弱」という状況。同社関係者の間からも「店頭販売品に特化した方が利益率はグンと上がる」といった声が漏れる。だが一方で大正製薬を担当するアナリストの間からは、「大正はいま(医療用医薬品と関わり続けてきた結果)一般用医薬品分野で拡大の好機を迎えている」と指摘する声が聞かれる。

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 周知の通り現政権は「社会保障費増/財源不足」という難問に対する施策の一環として、今年1月から「スイッチOTC医薬品(医療用医薬品の成分を転用した一般用医薬品)」の使用促進を目的に「年間購入額が所定額を超える分については、所得控除の対象とする」という策を執った。対象となる一般用医薬品数は年初時点で1500品目を超えている。大正製薬は一般用医薬品事業を「安心して使えること」「よく効く薬であること」「利便性が高いこと」に加え、「スイッチOTC医薬品への対応」を旗印に進めてきた。だけに「拡大の好機」とされるわけである。

 スイッチOTC医薬品への好影響ばかりでなく、同社にとっては医療用医薬品の研究・開発には相応の価値・効果があるのが事実。例えば製剤技術の発展につながり、飲みやすい一般用医薬品の開発にも寄与する。また世界の医薬品メーカーは、他社の開発状況に“目を皿”にしている。臨床開発の段階に至り、上市が有望視される化学物に関しては「提携関係」を求めたがる。医療用医薬品の開発に力を注ぎ続けることで、「導入/導出」のチャンスが増え「品揃え」の拡充につながる。

 時は1991年に遡るが、大正製薬は医療用医薬品「クラリス」(抗生物質)を世界的なヒット製品に育てた実績がある。ヒット製品を持つ医薬品企業を他社は常に「目を皿」の対象としている。ちなみにここ数年間でも大正製薬からは、4つの医療用医薬品が世に送り出されている。

 大正製薬という企業、「無駄」なことはしていない。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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