太陽光発電向け融資 ABLが銀行の担保主義を変えるのか

2014年8月12日 08:47

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記事提供元:エコノミックニュース

2012年に固定価格買い取り制度が導入されて以降、再生可能エネルギー事業の参入を目的に設備の認定を受けた企業は多い。太陽光発電事業は、安定性、収益性は他の事業と比べても優れている一方で、土地を転用している場合などは、銀行に担保が取れるものが何もない、というのが銀行にとって最大の問題点だった。

2012年に固定価格買い取り制度が導入されて以降、再生可能エネルギー事業の参入を目的に設備の認定を受けた企業は多い。太陽光発電事業は、安定性、収益性は他の事業と比べても優れている一方で、土地を転用している場合などは、銀行に担保が取れるものが何もない、というのが銀行にとって最大の問題点だった。[写真拡大]

 2012年に固定価格買い取り制度が導入されて以降、再生可能エネルギー事業の参入を目的に設備の認定を受けた企業は多い。しかし、実際には施設の建設や売電には至らず、計画が半ばのケースも多い。太陽光パネルの値下がりを見越して、事業着手を意図的に遅らせているような悪質なケースは論外だが、銀行が太陽光発電向け融資に二の足を踏んでいたことも否定できない。

 太陽光発電事業は、安定性、収益性は他の事業と比べても優れている一方で、土地を転用している場合などは、銀行に担保が取れるものが何もない、というのが銀行にとって最大の問題点だった。「担保主義」とこれまで幾度となく指摘されてきた銀行融資の悪弊だ。事業が優れているかを判断する能力がないため、担保の有無が融資判断に大きな影響を与えてきた。

 しかし、太陽光発電事業のマーケットが拡大するにつれ、銀行の融資スタンスにも変化が見られるようになってきた。従来の動産・売掛金担保融資(ABL : Aset Based Lending)の応用による融資スキームが広がりつつある。ABLとは企業が保有する商品在庫などの動産や売掛などの債権を担保とする融資形態だ。企業が営業資産を利用し生み出す事業価値に着目しており、中小企業等が経営改善・事業再生等を図るための資金や、新たなビジネスに挑戦するための資金確保の手段として、期待されている。

 これを太陽光発電事業に当てはめ、動産(太陽光発電システム設備、設備のメーカー保証、電力会社の売電契約、損害保険)、不動産(土地、土地の借地権や所有権等の事業にかかる資産)など、事業の全体を担保として融資するスキームとすることで、融資を可能にしている。すでに多くの銀行がこのスキームで実績を積み上げている。

 三井住友銀行<8316>では定型の審査を導入し、審査手続きも効率化することで、平均2~3カ月かかっていた審査期間を短くする。貸出期間は最長16年で、企業は売電収入を原資に返済する。既に企業への提案を始めており、今秋にも最初の融資を実行する計画だ。

 とかく銀行融資というのは融通が利かないものだ。時間もかかる。次々に様々な書類の提出を求められ、十分な説明もないまま融資の可否が言い渡される。このような不満を感じている利用者は少なくない。これまでにないビジネスのスタイルが次々と現れる今の世の中では、「担保主義」や「ことなかれ主義」の銀行審査のあり方は通用しない。(編集担当:久保田雄城)

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