円安による資源高で、今年も注目の集まるパワー半導体

2013年2月17日 19:15

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記事提供元:エコノミックニュース

昨年世界で初めてフルSiCパワーモジュールを量産化したローム。SiCの開発では日本企業が世界をリードしているだけに、GaNでの開発も先陣を切っていけるのか、注目が集まるところだ。

昨年世界で初めてフルSiCパワーモジュールを量産化したローム。SiCの開発では日本企業が世界をリードしているだけに、GaNでの開発も先陣を切っていけるのか、注目が集まるところだ。[写真拡大]

 日本企業の業績を後押しする一方で資源高を招く円安。資源の輸入コスト増加に伴い、機器の省エネ化がますます求められている。こうした中、電力損失を低減し、限られた電力の有効利用を進めるものとして、高効率化が進められているパワー半導体に注目が集まっている。

 現在のパワー半導体に多く用いられているのがSi(シリコン)であるが、近年はより高効率な次世代パワー半導体としてSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を用いた製品の開発が広がっている。特にSiCパワー半導体に関しては昨年、ローム<6963>がダイオードとMOSFETとの双方にSiCを用いたフルSiCパワーモジュールを量産化したことで注目を集め、その普及が期待されている。そして今年は、昨年のSiC以上に、GaNを用いた製品・開発に注目が集まりそうである。

 GaNは従来、発光材料として研究が進められており、現在では一般的となった発光ダイオード(LED)照明の中心部材である青色LED用材として産業化されているものである。そして、発光素子としての利用が実現したのと同時期からパワーデバイスへの応用が研究され始め、既に高周波パワーアンプとしては実用化も始まっている。

 このGaNパワーデバイス開発に関し、リーディングカンパニーといえるのが米国のトランスフォーム社である。今年に入り同社との業務提携を発表した日本インター<6974>は、世界初のGaN8インチウエハ量産製造を開始するなど、普及に向けた体制が整いつつある。また、富士通セミコンダクターが、シリコン基板を用いたGaNパワーデバイスを搭載したサーバ用電源で2.5kWの高出力動作を実証したと発表したのが昨年の11月である。その量産化に関し、2013年後半から開始できる目途がついているという。さらに、フルSiCパワーモジュールの量産化で昨年注目を浴びたロームも、昨年のシーテックにおいてGaNトランジスタを利用した10W非接触給電送電モジュールを出展するなど、GaNパワーデバイスの開発にも積極的な姿勢をみせている。

 その高環境耐性からエネルギー密度が高い分野に向いているSiC。一方、高周波領域でのパワーアンプとしては既に実用化されているGaNパワーデバイスは、速いスイッチングに特徴がある。これらの特性を活かすことで、SiCとGaNの棲み分けが進めば、より広い分野で電力の低損失化が進むであろう。グローバルインフォメーションの調査によると、GaNを利用したパワーデバイスの売上高は2011年の時点で250万ドル弱である。しかし今年は、生産量が増加し、新規参入の動きも活発化して、市場規模は5000万ドルに達する見通しだという。数少ない成長市場であり、さらに、日本企業がSiCの開発では世界をリードしているだけに、GaNでの開発も日本企業が先陣を切っていけることを期待したい。(編集担当:井畑学)

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