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UAEのOPEC離脱で原油市場に変化、円相場は中長期で円高要因か
アラブ首長国連邦(UAE)は5月1日、石油輸出国機構(OPEC)およびOPECプラスから離脱した。背景には、拡大した原油生産能力を制限なく活用したい狙いがある。市場では、OPECの結束低下による原油価格下落観測が広がる一方、中東情勢の不安定化リスクも意識されており、日本経済や円相場への影響が注目されている。
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UAEは近年、国営石油会社ADNOCを中心に、約1,500億ドル規模のエネルギー投資を進めてきた。しかしOPECプラスの協調減産体制では、生産枠が制限されており、「投資した生産能力を十分に活用できない」との不満が高まっていた背景がある。
■OPECの支配力低下懸念
OPECはこれまで、加盟国による協調減産を通じて原油価格を一定程度コントロールしてきた。しかし、主要産油国であるUAEの離脱によって、減産体制の維持は難しくなるとの見方が出ている。
市場では、「今後は各国がシェア確保を優先し、増産競争に向かう可能性がある」との声もある。特にサウジアラビア主導の価格維持戦略に対する影響が警戒されている。
■中長期では原油安要因に
UAEが自由に増産を進めた場合、世界の原油供給量は増加する可能性があり、市場では中長期的に原油価格の下押し要因になるとの見方が強い。
日本は原油や液化天然ガス(LNG)の大部分を輸入に依存していることから、原油価格が下落すれば、ガソリン価格や電気料金、物流コストの低下につながる可能性がある。
また企業側では、製造業や空運、陸運、小売業などでコスト負担軽減効果が期待され、家計面でもエネルギー価格低下を通じて消費環境改善につながる可能性がある。
■日本のインフレや日銀政策にも影響
近年の日本の物価上昇は、円安や資源高による輸入インフレの影響が大きかったことから、原油価格が下落すれば、輸入物価の上昇圧力は和らぐ可能性がある。
その結果、日本の消費者物価指数(CPI)の伸びが鈍化し、日銀の追加利上げ観測が後退する可能性もある。市場では、「資源高によるインフレ局面は転換点を迎える可能性がある」との見方も出ている。
■為替は中長期で円高要因との見方
為替市場では、中長期的には円高要因になるとの見方が比較的多い。
日本は資源輸入国であり、原油価格下落は貿易赤字縮小につながりやすい。輸入額が減少すれば、円売り圧力が和らぎ、円相場を下支えする可能性がある。
また、エネルギー価格低下によって米国を含む世界的なインフレ圧力が和らげば、米長期金利の低下につながる可能性もあり、日米金利差縮小観測が強まれば、ドル円相場では円高方向に作用しやすい。
一方、短期的には注意も必要だ。中東情勢悪化やホルムズ海峡を巡る地政学リスクが高まった場合、一時的な原油急騰から「悪い円安」が進行する可能性がある。
日本は中東依存度が高く、供給不安が意識される局面では、原油高と円安が同時進行しやすい構造となっており、市場では「中長期では円高要因、短期では円安リスク」という見方が広がっている。
■ドル決済体制への影響も注目
今回のUAE離脱を受け、市場では原油取引における「ドル決済体制」への影響を指摘する声多い。
近年は中国やBRICS諸国を中心に、人民元建てなど非ドル決済拡大の動きが進んでいる。UAEも中国との関係を強化しており、将来的に原油取引の通貨多様化が進む可能性がある。
もっとも、原油市場では依然としてドル建て決済が圧倒的多数を占めており、直ちにドル基軸体制が揺らぐとの見方は限定的だが、市場では「中長期的にはドル一極体制が徐々に変化していく可能性がある」との見方も浮上している。(記事:Osaka Okay・記事一覧を見る)
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