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イオン株価反発と内需株の見直し買い

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11月19日、東京株式市場では市場の主役交代が鮮明になっている。これまで相場を牽引してきた人工知能(AI)関連銘柄の上値が重くなる一方で、小売大手のイオン(8267)を中心とした内需株に資金が流入し、市場の下支え役として注目を集めている。
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■イオン株、上場来高値を更新
11月19日、イオン株は前日比116円(4.57%)高の2645円を付け、株式分割考慮後の上場来高値を更新した。この急上昇の背景には、10月14日に発表された好決算がある。2025年3月~8月期の連結決算では営業利益が前年同期比20%増の1181億円となり、市場予想を上回る堅調な着地となった。
さらに注目すべきは、過去1年間のパフォーマンスである。2024年11月18日時点の株価1246.33円から2025年11月18日には2529.5円へと上昇し、102.96%のリターンを記録した。つまり、1年前に購入した投資家は「ダブルバガー」(株価が2倍以上)を達成したことになる。株主優待を目的に長期保有していた投資家にとって、予想外の大きなリターンとなった。
■政策期待が追い風に
イオン株上昇の大きな要因として、政策への期待が挙げられる。11月19日、自民党の小林鷹之政調会長が総合経済対策として児童手当を所得制限なしで2万円上乗せする方向だと報じられた。この政策は子育て世帯の消費を押し上げる可能性が高く、生活必需品を扱うイオンにとって追い風となる。
また需給面の改善も、株価を後押ししている。11月14日時点でイオンの信用倍率は0.27倍と売り残が多い状況だったが、上場来高値更新を受けて、売り方の損失覚悟の買い戻し(ショートスクイーズ)が入っているとの見方も出ている。
■内需株全般への見直し買いの広がり
イオンの反発は、内需株全般に見直し買いが入る流れの一部である。主要企業の決算発表が一巡し、業績の良かった内需関連株に再び資金が向かいやすくなっている。11月19日には建設や不動産にも買いが入り、中国からの渡航注意喚起で急落していた三越伊勢丹ホールディングスや良品計画といった銘柄も値を戻した。
この背景には、AI関連株の調整局面入りがある。19日、アドバンテストやレーザーテック、ルネサスエレクトロニクスは一時5%ほど下げるなど売りが先行した。米国市場では大手ハイテク企業がAIに過剰投資しているとの懸念が広がり、米アルファベットのCEOが「AIブームには非合理な部分もある」と述べるなど、関連株を押し下げる要因となっている。
■市場の安定役としての内需株
ここ数カ月の日本株高を牽引してきたソフトバンクグループ株も調整局面に入り、10月の上昇分を帳消しにしている。今後、米エヌビディアの決算などでAIへの過剰投資懸念が払拭されなければ、日本株は上値の重い展開を強いられる可能性がある。
このような状況下では、ディフェンシブ性が強く政策の恩恵を受けやすい内需株への買いが、日本株を下支えする展開が想定される。
イオン株の力強い反発は、投資家が高成長のAI関連株から、生活に密着し景気変動の影響を受けにくい内需株へと資金をシフトさせていることを明確に示している。政策による後押しを得た内需株は、今後の市場で安定性を保つ重要な役割を担うと期待される。
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