マムダニショックでウォール街はどうなるのか?

2025年11月10日 17:35

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●NY市長に民主社会主義者マムダニ氏当選で市場は警戒感

 11月4日に米国ニューヨーク(NY)市長選挙が行われ、民主党・急進左派のゾーン=マムダニ氏が当選した。マムダニ氏は34歳の若さで、NY市長としては、初のイスラム教徒であるのと同時に、過去100年で最年少の市長となる。

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 マムダニ氏は民主社会主義を掲げており、物価高に苦しむ市民に、家賃値上げの凍結や市バス無料化、幼保の無償化、高所得者への増税などを訴え、SNSを中心に支持を受けた。

 これらのアフォーダビリティ(利用しやすさ)の問題は、一般市民には受けがいいが、ウォール街を抱えるNYでは、投資家や金融関係者らが競争力の低下を招くと難色を示す。

●なぜウォール街が警戒

 NY市長がウォール街を取り締まる権限はない。

 マムダニ氏は法人税の引き上げに加え、NY市民の上位1%の富裕層には、年収100万ドル(約1億5000万円)を超える部分に2%の追加化課税を導入するミリオネア税により、年間40億ドル(約6000億円)の財源を見込み、市バス無料化・幼児教育無償の財源に充てる方針だ。

 家賃値上げの凍結や不動産開発への規制は、安定的な賃貸需要が支える不動産投資の前提が崩れる可能性もある。

 雇用減速や利益確定売りもあったが、マムダニ氏の当選を受けて、NYダウは250ドル下落した。6月にもマムダニ氏リードの報道により、不動産関連の企業が下落する場面もあった。

 米ヘッジファンド運営会社のエミネンス・キャピタル創業者リッキー=サンドラー氏は、マムダニ氏当選で会社移転を示唆しており、富裕層の市外流出も懸念される。

●他の選挙への影響も?さらに混沌とする米国

 マムダニ氏の公約がどこまで実現するかは、未知数な部分もある。家賃値上げ凍結は州レベルの権限が絡むことも考えられ、NYの地下鉄やバスは州が管轄するため、市長の一存で無料には出来ない。

 富裕層への増税も議会の承認が必要となる。マムダニ氏が市長就任後、現実路線になり、これらの公約が頓挫する期待の声も大きい。

 同時に行われたバージニア州やニュージャージー州でも民主党候補が勝利するなど、共和党・トランプ政権にも打撃となった。今回の一連の勝利が民主党への追い風となり、来年の米国中間選挙へと弾みとなる可能性がある。

 現在の“トリプルレッド”が崩れ、ねじれが生まれることで警戒感が強まる恐れもある。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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