ブラザー、空調事業に本格参入へ 新たな事業の柱として海外展開も

2025年2月28日 14:30

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新シリーズのPD-7100とPD-3100(画像:ブラザー工業の発表資料より)

新シリーズのPD-7100とPD-3100(画像:ブラザー工業の発表資料より)[写真拡大]

 ブラザー工業は25日、空調事業に本格参入すると発表した。完全子会社のブラザーエンタープライズを中心に展開していた、スポットクーラー「Pure Drive」の製品開発を本体に集約。ブラザー工業内で開発を強化し、事業を加速させる。現状、販売エリアは日本国内に留まっているが、今後は海外への事業拡大も想定しているという。

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 軸となるPure Driveは、ブラザーが独自開発した冷却技術「TwinAqua」を搭載した製品。ブラザー工業とブラザーエンタープライズが共同で開発し、2020年7月より販売している。

 特徴は、水の気化熱で空気を冷やす「気化冷却」を2段階で行う点にある。排気による水の気化熱で湿度を上げずに外気を冷やす「間接気化式冷却」の後、水で湿らせた冷却エレメントを通す「直接気化冷却」でさらに冷やして冷風を届ける。

 一般的なコンプレッサーによる冷却方式と異なり、外気温より熱い排気を出すことがなく、冷媒が不要で、フロンレスで使用できる。また従来のヒートポンプ式と比較して、年間のCO2排出量を約75%まで削減するという。

 環境負荷を抑えるPure Driveはもともと、SDGs達成への貢献を想定した製品として誕生。置き型のスポットクーラー発売後、省電力でスポット冷却できる技術にトヨタ自動車が着目したことから事業が進展した。

 トヨタは、フォークリフト作業者を安定的に冷やして熱中症対策になるスポットクーラーの開発を打診。ブラザーは、トヨタの高岡工場での性能評価や走行試験などの協力を得て、開発を推進。消費電力を抑えながら暑熱対策できる、フォークリフト専用のスポットクーラーを開発した。2021年7月より一般販売も開始している。

 ブラザー工業は同日、従来製品を改良した新シリーズの発売も発表。置き型スポットクーラーを小型化した「PD-7100シリーズ」と、フォークリフトを含む産業車両全般に設置できるコンパクトな「PD-3100シリーズ」を展開する。販売はブラザー販売とブラザーエンタープライズが担う。

 ブラザーグループは、中期戦略「CS B2024」(2022-2024年度)の中で、「産業機器事業の大幅成長」を掲げている。今回の事業本格化もその1つと推察される。

 ブラザー工業は今後、空調事業を新たな事業の柱に成長させる方針。製品開発を強化し、温暖化対策への関心が高い欧州を足掛かりに海外事業の拡大を目指す。(記事:三部朗・記事一覧を見る

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