今年も「第17回イワタニ水素エネルギーフォーラム」に参加

2024年5月15日 16:30

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 Photo: グランフロント大阪コンベンションホール会場 ©sawahajime

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  • Photo: イワタニ水素フォーラム配布資料 ©sawahajime
  • 「FCEVとBEV」比較表 =「商用電動車普及に向けたCJPTの取り組み」Commercial Japan Partnership Technologies 株式会社発表資料より抜粋』(許諾済み)

 昨年の第16回に引き続き、4月15日に開催された「第17回イワタニの水素エネルギーフォーラム」に参加して来た。

【こちらも】水素エネルギーフォーラムに行ってきた 水素エンジン車の未来は

 僅か1年で、EV車に対する過度な期待感は、いろいろな課題に直面し、見直し感が出て来た。

 EV車を批判するだけでは無く、代替案を提起しなければ、単なるアジテーターでしかないので、そこから話を始めよう。

●3段階の分析

 前段としては、何故EV車に注目が集まったかを冷静に分析しなければならない。

 次の段階は、現時点での客観的なEV車のポテンシャルを評価するべきである。そして最終段階としては、総合的に判断して、「地球規模での自動車のあるべき姿」を検討すべきである。

 以下、前述のステップについて、簡単に解説したい。

●何故EV車に焦点が当たったのか

 言い出しっぺは中国であった。

 内燃機関搭載車の天下が続く限り、中国は未来永劫、日本や欧米に追い付くことは不可能だと悟った。

 そこで、大した技術も不要、部品工業の広い裾野も不要で、「モーターと車載電池さえあれば簡単に造れる」と考えてEV車推しを決めた。

 彼等が有利なのは、1党独裁の政治体制で、何事も強権発動で解決できる。

 そのEV車推しの尻馬に乗ったのが、ライバルである日本の「ハイブリッド技術」に対抗する手段として、当初推進していた「クリーンディーゼルエンジン」で挫折した欧州だった。

●現時点でのEV車のポテンシャル

 未だ、内燃機関搭載車とは同等に扱えるレベルには達していない。

 そこで、「1充電走行距離」の問題、「充電時間」の問題、「車両重量」の問題や「発火事故」の問題はさて置き、限定的用途で使用することを前提として、考察しよう。

 現状では、EV車は1台で自家用車として全ての用途をカバーすることは不可能なので、複数台数を保有する家庭の、主に近距離、限定エリア内で使用するセカンドカーにしか向かない。

 商業車の場合、バスなら限定エリアしか走行しないバス路線や、配送エリアを限定した宅配便、コンビニ向け配送車、スクールバスといった用途に限定される。

 長距離運送や、観光バスには完全に不向きだ。

 参考までに第17回の水素エネルギーフォーラム配布資料から、講演テーマ「商用電動車普及に向けたCJPTの取り組み」の「FCEVとBEV」のポテンシャル比較表を抜粋して以下に掲載する。

 FCEV(燃料電池車)は、現状では積載量はもとより航続距離も260km対100kmであり、燃料充填時間も大きな差があるため、BEV(EV車:バッテリー車)に革命的な技術革新が無い限りは、現時点では優位点は無い。

 加えて、走行時にEV車が使用する電力は、殆どが発電時にCO2排出が伴う。


「FCEVとBEV」比較表 =「商用電動車普及に向けたCJPTの取り組み」Commercial Japan Partnership Technologies 株式会社発表資料より抜粋』(許諾済み)

●地球規模での自動車の役割分担は

 昨今、「地球温暖化」だの「脱炭素」だのと騒がしいが、開発途上国にとっては別世界の話に聞こえるだろう。

 日常生活に使う水を汲むために、何kmもの道程を歩く様な環境に、CO2排出なんて関係無い。

 電気自体が通じていない、そんな地域では、内燃機関搭載車以外の選択肢は無かろう。EV車推しなんて能天気な話がまかり通るのは、地球規模から見れば極めて限られたエリアでしか無い。

 三菱トライトンの取材番組で、チーム三菱ラリーアート増岡浩総監督が、想定される使用環境として、「-40度から+50度」との発言があったが、こんな過酷な環境に耐えられるEV車は存在しない。

 アフリカ諸国、中近東、南米、東南アジアでは、内燃機関搭載車が主流であり続けるだろうことは疑いない。

 先進諸国で廃車となって流入する中古の「内燃機関搭載車」や、電子制御化を控えた昔のシステムを備えた内燃機関搭載車は欠かせない。

 「地球温暖化」を叫ぶ先進諸国は、「EV車1択」は不可能だと理解した筈だから、コンボイの様な長距離大型トラクターは「燃料電池車」。一般的な乗用車は「ハイブリッド車/プラグインハイブリッド車」、「クリーンディーゼル車」、「水素エンジン車」。そして街乗りのコミューター的な用途の「EV車」。商業車は「燃料電池車」、「クリーンディーゼル車」と、「EV車」が担うことになるだろう。

●水素の将来は明るい

 現在は、水素製造に関して「グレー水素」「ブルー水素」「グリーン水素」と、水素製造時のプロセスを問題視している。

 因みに、一般財団法人新エネルギー財団のHPを参照すると、「グレー水素」とは石油、天然ガスあるいは石炭といった化石資源から抽出される水素を指す。

 「ブルー水素」は、グレー水素の生成の際に出てくるCO2をきちんと処理し、大気中のCO2を増やさないように処理すると、それは「ブルー」の水素とされる。

 「グリーン水素」は、再生可能エネルギーを使って水素を生成するもので、例えば太陽光発電で作られた電気で水を電気分解して水素を作るといったことになる。

 EV車の製造から廃棄までのCO2排出と、充電に要した電気の発電に際してのCO2排出量から見れば、些細な議論だと言えよう。

 産業界全般から見ても、「脱炭素」を掲げるなら、水素社会の実現に向けたインフラ構築が重要である。

 結論から言えば、水素は地球規模から見た自動車の将来像の、大きな部分を担う存在である。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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