チケット流通最大手、収益回復基調:ぴあの株価動向は中計の進捗如何か

2024年3月2日 11:11

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 ぴあ(東証プライム)。周知のとおりチケット流通の国内最大手。コロナ禍に端を発した催事・人流抑制に晒された収益動向も、回復基調に転じ始めている。

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 2021年3月期:62億3100万円営業損失/22年3月期:8億3300万円営業損失から、前3月期は8億2000万円の営業黒字に転じ、今3月期は「0.7%増収(330億円)、46.3%営業増益(12億円)」計画。第3四半期に至る推移をみると「着地上振れ、有配復帰」の可能性も、と感じる。

 またこの間に三菱地所と提携(協業)で横浜みなとみらいに、2020年に100億円を投じ音楽専用アリーナMM(4階建て)を開設し、ホール運営・管理事業に乗り出している(豊洲PIT/仙台PITも展開)。追従しようとする同業者を2歩も3歩も引き離す、業界最大手の立ち位置を盤石なものとする施策も講じている。

 こんなぴあにも、「これまでか」という時期があった。祖業は現社長:矢内廣が学生時代に興した雑誌:ぴあの発行。催事情報満載の月刊誌。だが本邦初の代物。執拗に「並べて欲しい」と書店を口説きまわったが、「ノン」の連続。

 が、これが矢内氏の起業家たる所以と言うべきだろう。一面識もなかった当時の紀伊国屋書店の社長:田辺茂一氏に「お力添えを」と、コンタクトを執った。田辺氏から紹介されたのが多くの書店に「日本キリスト教書」の類で関係を築いていた、版元企業の中村義治専務。

 中村氏の反応は当初、決して芳しいものではなかったと言うが・・・、矢内氏の「こことここの書店に置きたい」というパトスが中村氏を動かした。89店に「ぴあ」が並ぶことになった。

 取締役社長室長の小林覚氏は、「89店がなかったらいまの当社もなかった・・・その後も相談役・社外取締役としてうちを支えてくれた方々の力添えがなかったら・・・と、方々の墓参りは毎年欠かしていません」とした。

 立ち直り気配濃厚なぴあの株と、どう付き合うか。気になるのは小林氏を取材した当日のぴあ株の、信用取り組みの倍率は0.61倍。いわゆる逆日歩状態。逆日歩を兜町では「逆日歩に買いなし」とする見方ある一方、「売りなし」とする見方がある。

 小林氏は「現状で無配株、株価動向を語れる状況でない」とする。PERの53倍超を勘案すると、やはり様子見が賢明かと思うが・・・まずは至26年3月期の中計への進捗がポイントか。

 今期予想の営業利益12億円に対し「新規事業(ex、万博などの国際的イベントのチケッティング事業)注力3割、既存事業7割」を前提に、25億円計画を掲げている。予定通りに進めば当然、PERは低下するし配当路線も定着する。歩みを確認しながら・・・が賢明か。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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