家賃保証大手:ジェイリース、好収益の背景と適した施策

2023年8月13日 15:12

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 ジェイリース(東証プライム)。住居・事業用家賃保証の大手。好調な収益状況が続いている。

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 2022年3月期の「20.5%増収、108.8%営業増益、142%最終増益(最高純益)、35円増配40円配」に続き、前3月期も「14.0%増収、11.6%営業増益、10.4%最終増益(同更新)、10円増配50円配」計画で立ちあがる。最終的には、「19.6%の増収(109億6000万円)、25.0%の営業増益(24億6500万円)、24.4%の最終増益(16億6700万円)、20円増配60円配」と上ぶれた。

 その理由は煎じ詰めると「住居用・事業用賃料保証の売上高が当初計画を上回って推移。貸し倒れコストや債権管理業務のコストコントロールも奏功」。

 ジェイリースをはじめ、上場各社の賃料保証業務拡大の要因は、2020年4月の120余年ぶりの「民法改正」に求められる。要約すると、こんな具合だ。

 改正民法下では、「連帯保証人の責任極度限度額の明記」「借主から連帯保証人への財務情報の提供」「賃料支払い状況の情報開示」が義務化された。

 だが貸主(オーナー)には、「高額極度限度額に連帯保証人のなり手が減少、空室化のリスクが高まる」「極度限度額を超える場合は、連帯保証人に超過分を担保する義務はないので滞納金の回収が困難になる」「借主の財産情報の提供が正確でないことが判明すると、連帯保証人は保証契約を取り消すことができる」などの不都合が生じる。

 そうした経緯から需要が急浮上したのが「賃料保証会社」の存在だ。

 ジェイリースの収益が急角度で上昇し始めた21年3月期「12.7%増収、506.8%営業増益、5億5200万円最終純益、5円配当実施」の決算関連資料にも、こんな表現が目立つ。

 「2020年4月の改正民法による連帯保証人の保証限度額設定の義務化などにより、家賃債務保証に対する需要は引き続き好調に推移・・・またコロナ禍における顧客のリスク変化で、事業用保証商品の引き合いが強まった」

 ジェイリースでは事業用賃貸保証事業を「J-AKINAI」で担っている。支店開設を積極的に行っており、現在全国に36カ所の不意なトラブル等も含めた「よろず相談」所は機能している。各保証の限度期間は24カ月。改正民法成立の2018年3月期、新型コロナウイルス流行の19年3月期を挟み前22年3月期までの4期間で契約件数は約25.5倍に増加している。

 業容拡大の施策も着実に打っている。「年2~3店舗を新規開設」を謳っている。また全国不動産協会と提携し23年度から、会員業者向けのサービス提供を始める。時流と巧みに渡り合う企業といえよう。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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