「ビッグモーター」で発覚した、器物損壊と詐欺行為という滅茶苦茶 (上)

2023年7月22日 16:49

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 中古車販売大手として知られるビッグモーター(東京都港区)が、激しく揺れている。

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 ビッグモーターは中古車の買取・販売から車検、修理、自動車保険の代理店業務など、日本全国で幅広く営業している企業だ。HPには「買取台数が6年連続日本一」と誇らしく掲載されている。中古車の販売は買取という仕入れ行為がなければ旨味がないから、販売面でも大きな存在感を示していたことは想像できる。

 現在報道されているのは、修理の依頼を受けた車を故意に傷付けて、修理金額を嵩上げしたというものだ。ドライバーで引っ掻いたり、靴下に入れたゴルフボールを車体に叩きつけたりしていたと言うから、器物損壊罪が成立しそうな話である。

 修理を依頼したオーナーの中には、「そんな傷があったかな?」と半信半疑だった人もいただろうが、「保険で直りますから」と言われたら車を確認する手間までは掛けない。不正な上積み分を請求するのは詐欺罪に当たりそうだ。法曹人でもない素人が、既に器物損壊罪と詐欺罪を疑っているような、とんでもない事案である。

 しかも、伝えられるところに依ると、1回の修理で最低請求額のノルマが「14万円」と設定されていたと言う。修理代に下限ノルマがあるというのは、相当「いかれちゃってる」証拠だろう。

 21日現在、ビックモーターのHPは大混雑とみえてとっても重いが、「キズへこみ・修理」の項目を見ると、「ビッグモーターでは日本全国に走るすべての車を扱っているため、鈑金修理をはじめとした整備実績も業界トップクラス。扱う台数もケタ違いのあらゆるクルマのノウハウを知し尽くしたプロの車体・整備士集団がお客様の大切な愛車をどこよりも速く、正確に、丁寧に、美しく仕上げていきます」(原文のまま)と、格調高くうたい上げている。当然、ドライバーやゴルフボールの活用法は書かれていない。

 今回の事案報道では、店長の年収が4607万円、工場長が同1494万円、営業職員が同2237万円、整備士で同946万円などが並行して報じられている。世間の相場とは大幅に乖離した高額給与だが平均値ではなく、より積極的にドライバーやゴルフボールを使いこなした猛者の役得ということだろう。

 この報酬を見て感じるのは、高すぎるインセンティブは加熱して暴走するということだ。シェアハウスローンの取り扱いで墓穴を掘ったスルガ銀行では、割高で劣悪な物件の購入資金としてローンを組む際の証拠書類を、「銀行員」が偽造していたと注目された。

 ローンの扱い高で給与や賞与が加算されると、その上司にも余録が付く。多くの部下に闇雲なローン獲得を強要する上司の懐は潤う。その結果、不正が常態化し手口が共有される。

 スルガ銀行では、成績の上がらない職員に対して「窓から飛び降りろ!」と罵声を浴びせていたと言われるから、組織全体が理性も良識もない異様な雰囲気に包まれていたことが分かる。ビッグモーターからも、似たような話が聞こえている。(下に続く)(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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