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下落傾向が続く南ア・ランド 今後の行方は?
●南ア・ランドが安値
高金利通貨としても知られる南アフリカ通貨のランドが、2023年に入って対ドルで安値を更新している。
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一時1ドル=19ランド半ばまで下落し、2020年に新型コロナウイルスの感染拡大でロックダウンした時を超えた。対円で見ても、昨年からランド安・円高傾向が続いている。
米国と同じくらいのペースで利上げし、政策金利は8.25%であるが、下落が止まらない。
金やプラチナなど資源が豊富な資源国であり、中国との結びつきも強く、世界情勢の影響を受けやすい南ア・ランドを取り巻く環境はどうなっているのか?
●アフリカ屈指の経済大国!問題も・・
ナイジェリア、ケニアと共にアフリカを牽引する経済大国で、サブサハラ・アフリカ全GDPの約20%を占める。
ブラジル・ロシア・インド・中国と共にBRICSの一角の新興国として期待され、ランドも高金利通貨として人気が高かった。
だがGDPは、2010年のサッカーW杯南アフリカ大会を終えた頃から頭打ちで、1990年代のアパルトヘイト撤廃後から続く高い失業率、犯罪率、貧困・格差が依然として課題である。
インフラ整備もまだまだ不十分で、最近では慢性的な電力不足も大きな課題だ。ロイター通信によると、2022年も年間約3分の2停電しており、2023年も1日に当たり最長10時間の輪番停電が続いている。
3月には電力危機を理由に、S&Pグローバル・レーティングが格付け見通しを、"ポジティブ"から"安定的"に引き下げた。
5月にはロシアへの秘密裏に武器を供与したという疑惑もあり、大幅にランドが売られる場面もあった。
●ランドの見通しは?
資源国通貨であるため、豪ドルなどと同様に資源価格に影響されやすい。
金価格に影響されやすく、今後のFRBによる利上げの状況によっては金価格が大きく動き、ランドが影響を受けることも考えられる。
中国との関係が深いことも考えれば、今後の中国景気の減速傾向が明白になれば、売られるだろう。ロシアとの関係も気になるところだ。
2023年8月に行われるBRICSサミットにロシア・プーチン大統領を招待するかも注目されており、米国政府などが懸念を表明している。
武器供与の問題などで国際的に非難の声が高まれば、南ア・ランドがさらに売られることも考えられる。
高金利通貨だからと安易に買うのは、しばらく危険であろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
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