三菱マテリアル「IR Day(第1部)」  全社経営進捗および各事業に関する取り組みを発表

2021年12月14日 08:28

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記事提供元:ログミーファイナンス

三菱マテリアル株式会社「IR Day」

小野直樹氏(以下、小野):みなさま、こんにちは。三菱マテリアル執行役社長の小野でございます。本日は弊社の「IR Day」に多数の方にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。また、日頃より弊社に対しまして関心をお寄せいただいていますことに、あらためて感謝を申し上げる次第でございます。

さて、今日の「IR Day」は全社の経営戦略についてのお話や、当社はカンパニー制をしいていますのでカンパニープレジデントから各事業についてのご説明、また事業戦略を支えていくコーポレートとしての戦略についても、各担当の執行役からご説明します。

今から17時までの予定ということでかなり長時間にわたりますが、ぜひそれぞれのパートでの質疑に積極的にご質問をお寄せいただき、実りのある「IR Day」にしたいと思っています。

私どもが質問に対してお答えしていくことで、それぞれの事業、あるいはコーポレート全体の戦略についてご理解を深めていただくとともに、私どもとしてはみなさまからの質問から、みなさまの関心、あるいは留意されている点を学び、それをまた弊社の経営にも活かしていきたいと思っている次第です。それではさっそく始めたいと思いますので、今からの時間、よろしくお願いいたします。

【IR Day】経営戦略の進捗

髙柳喜弘氏(以下、髙柳):経営戦略全般を担当している執行役常務の髙柳でございます。それでは、資料にしたがって全社方針の進捗、経営成績サマリー、サステナビリティに関する取り組みの順番でお話ししていきます。

当社の目指す姿(企業理念体系)

3ページは、当社の全社方針についてです。こちらのシート自体は、昨年3月に2020年度から2022年度までを対象とする「22中経」を発表した時にお示ししており、企業理念から全社方針までを図で示したものです。

会社が目指す姿を実現するための中長期の全社方針として、スライド一番下のグリーンの部分に記載のとおり、事業ポートフォリオの最適化、事業競争力の徹底追求、新製品・新事業の創出の3つを掲げています。

私のパートでは事業ポートフォリオの最適化と、新製品・新事業の創出の一部についてお話ししたいと思います。

事業ポートフォリオの最適化

こちらは、当社グループの事業ポートフォリオの最適化に関する考え方を示したものです。すでにご存知かと思いますので、次のページに進みます。

事業ポートフォリオの最適化(2)

事業ポートフォリオの最適化に関する進捗を示したものです。主だったものを全部で9個記載しています。いくつか簡単にお話ししたいと思います。

1つ目はスライド右下の「9」の、赤字で記載されているアルミ事業についてです。11月25日に東京証券取引所の適時開示で、アポロ・グローバル・マネジメント社に事業を譲渡する旨をリリースしています。

アルミ事業については当社の他の事業とのシナジーが薄く、コア事業からも外れることから、経営資源を十分に投入することができず、結果として4ページでお示しした事業ポートフォリオの左下象限に位置付けている収益構造改善事業としておりました。

事業のアライアンスや譲渡などを想定してパートナーを探していたところ、アポロ・グローバル・マネジメント社との協議となり、今回合意に至ったということです。

アポロ・グローバル・マネジメント社は、アルミを含む素材事業についてグローバルな知見を有しており、同社のもとで事業競争力を追求していくことがアルミ事業2社についても最良であると考えています。

もう1つの事業ポートフォリオの進捗で大きな点は、スライド左下の「4」に記載しているPTS社の受託製錬化です。詳細は後ほど金属カンパニーのパートでご説明がありますが、インドネシア政府の鉱物資源に対する方針や、PTS事業の実態を踏まえた最適なかたちに着地できたのではないかと考えています。

新製品・新事業の創出(1)

ここからは、新製品・新事業の創出についてです。各事業の新製品関係は後ほどご説明がありますので、今回は研究開発により近いところについてお話ししたいと思います。

MMCイノベーション投資事業有限責任組合は、当社が2019年に材料技術を有するベンチャー企業を対象としたコーポレートベンチャーキャピタルです。スライドに記載のとおり、2019年度で1件、2020年度で3件、2021年度で1件というかたちで投資先を増やしています。

本格的な事業展開にはまだ至っていませんが、将来の事業の種になるものと期待しています。

金属材料の延長となる案件もありますが、スライド右側に示しているIMMUNOSENS社の案件に関しては医療領域のお話で、当社にとっての新たな事業領域、ビジネスモデルにも示唆を与えてくれることを期待しています。

新製品・新事業の創出(2)

今年度中にリリースした新製品の開発に関する主な内容です。こちらも後ほどの各事業からのご説明との重複を避ける意味で、セレクトしたものをお話ししたいと思います。

1つは、スライド左下に記載の「金属ゴム」の開発です。こちらは金属と同等の高温環境で使用でき、かつ有機材料と同等の柔軟性を発揮するという、これまでにない画期的な新材料を開発した旨をリリースさせていただいています。

かなりいろいろな照会を受けており、今後は航空宇宙、半導体医療などの分野で用途の開発を進めていきたいと考えています。

次に、スライド右上に記載の名古屋大学発の素材ベンチャーを開発パートナーとしている、新しいパワーモジュール用のセラミックス回路基板の共同開発です。こちらが実用化すると、パワーモジュールの小型化や高出力・高密度化への貢献が期待されるということです。

経営成績サマリー

ここから財務指標についてお話ししたいと思います。本日の「IR Day」の趣旨としては、短期的な財務指標についてお話しするというよりは、中長期における各事業戦略についての取り組みをみなさまにご説明する機会だと考えています。

ただし、みなさまに各事業についてご説明する前に、財務指標の観点から、現在、各事業がどのような位置にいるのかをお示ししたほうが、この後の説明の理解がより深まると思いますので、簡単にお話ししたいと思います。

8ページは、11月9日に発表した2021年度の年間業績予想をもとに、それぞれの財務指標の着地を予想したものです。

足元で金属価格が高騰していることや、半導体・自動車の市場がこの上半期に予想以上に立ち上がってきたことを大きな理由として、スライド右側に記載の2022年度の見直し目標に対してそれぞれ上回っています。

経営成績サマリー(各事業におけるROIC推移)①

9ページは、業績予想をベースに各事業のROICを試算したものです。プロダクト型では電子材料・加工が順調に回復しています。一方で、銅加工はやや苦戦しています。金属に関しては金属価格の上昇、硫黄価格の上昇に伴う硫酸価格の上昇、各セグメントが安定操業したということが寄与し、目標を大きく上回っています。

経営成績サマリー(各事業におけるROIC推移)②

環境リサイクルです。リサイクルについては先ほどの金属価格の上昇によって副産物の採算が改善し、増益となっています。一方で、再生可能エネルギーに関しては今年度に地熱発電所での定期修理が入り、一時的に収益が落ちています。

スライド右側の折れ線グラフは当社全体のROICとなります。金属価格などの外部環境が非常によいですが、このレベルでは絶対的にまだまだ低い数値ですので、引き続き資本効率を意識した経営を目指していきたいと思っています。

サステナビリティに関する世界の動向

ここまで全社の経営戦略として、事業戦略についてお話ししてきましたが、11ページからはサステナビリティに関する取り組みについてご説明したいと思います。

当社が営んでいる事業は、生活の基盤となる素材の供給です。また、これからの循環型社会に必須のリサイクル、さらに再生エネルギー事業などで脱炭素社会の構築に貢献すると考えています。そのような意味では、事業経営とこれからのサステナビリティの取り組みというのは非常に密接に絡んでいると考えていただければと思います。

こちらは、最近のESGに関する動きです。例えば、環境ではCOP26の影響について記載しています。このあたりはみなさまもご存知のことと思います。

価値創造プロセス

12ページは、当社の価値創造のプロセスを図に表したものです。当社の重要課題にも先ほどの世界的なESGに関する潮流が大きな影響を与えていることを示しています。こちらに対しても「E」「S」「G」の切り口でそれぞれ適切な対応を行っていますが、詳細については12月3日のESG説明会でお話ししたいと思います。

気候変動への対応(11/26 リリース)

最後のページになります。こちらは、11月26日にプレスリリースさせていただいた当社の温室効果ガスの削減目標見直しについてです。

2030年にセメント事業を除く全事業で、Scope1、Scope2の合計に関して2013年比で47パーセント削減するという目標です。こちらに関しても12月3日のESG説明会にて詳しくご説明したいと思っています。私の説明は以上です。

質疑応答:PTS社の最適化について

質問者1:後ほど金属事業のところで細かいお話があると思いますが、今回PTS社はわりと「虎の子」だったのではないかと思っています。持分法適用会社としては残りますが、切り出すと言いますか、この決断に至った背景について教えてください。

TC/RCが非常に低く、おそらくスライムの輸出ができなくなったなどで、追加投資を行ってもリターンが取れなくなったという判断だと思いますが、いかがでしょうか?

髙柳:非常によいポイントを突かれていると思います。1つは、我々がインドネシアで製錬所を経営している中で、インドネシア政府の鉱産物に対する姿勢が非常に変わってきたことが挙げられます。

これにより、今後、我々のパートナーのPTFI社からの銅精鉱をほぼ100パーセント処理することになり、限りなく鉱山付属の製錬所に近いかたちになります。その場合、今のかたちよりはPTFI社にPTS社の主導権を渡して経営を行うことが適切ではないかというのが一番の背景です。

2番目の理由としては、我々もPTS社のオペレーションについては受託というかたちで受け、引き続き適切な利益を上げられるため、今回の選択に至ったと考えていただければよいと思います。

質疑応答:多結晶シリコンと電子デバイスを収益構造改善事業と位置付けしている理由について

質問者2:多結晶シリコンと電子デバイスについて、どのような理由から、スライド左下象限の収益構造改善事業として位置付けしているのかを教えてください。

髙柳:まず、多結晶シリコンについてです。みなさまもよくご存知かと思いますが、私どもはもともとSUMCO社のウエハーの製造に携わり、一時期はこちらの事業を伸ばそうと進めていました。しかし、このビジネスは我々としては難しいという判断で撤退としています。

多結晶シリコンはウエハーの原料のため、一気通貫でこのビジネスを行うという意味合いが増してくるところがありましたが、そのうちの一番重要なウエハーから撤退したため、多結晶シリコンの事業から徐々に考え方をあらためていかなければいけないのではないかということです。

その多結晶シリコン自体のビジネス環境についても、金属シリコンの価格の乱高下があったり、ウエハーはプレイヤーが少なくバーゲニング・パワーがかなり強いこともあるため、非常に厳しい状況になるということで、スライド左下の象限になると考えていただければと思います。

電子デバイスに関してはいわゆる電子部品ですので、非常に競争が厳しいです。常にコストダウンを考えるなど、コスト競争力がないとなかなか勝ち抜けません。そのコスト競争力のところで疑問符があるため、スライド左下の象限になると考えていただければよいかと思います。

【IR Day】高機能製品カンパニー

鈴木康信氏(以下、鈴木):高機能製品カンパニープレジデントの鈴木です。それでは、当カンパニーについてご説明します。

1-1. 高機能製品カンパニーの主要製品群と対象市場

スライドの図は、高機能製品カンパニーの主要製品群と対象市場です。図の上のほうに「銅加工」「電子材料」と記載しており、スライド左側には対象市場として「自動車・輸送機器」「半導体・エレクトロニクス」「インフラ、産業機械、医療機器他」の3分類をマトリックス的に表しました。対象の3市場に対して、現在はご覧のような製品を販売しています。

1-2. 高機能製品カンパニーの主要製品例

4ページでは当カンパニーの主要製品について写真でお示ししています。ご参考までにご覧ください。

2-1. 市場の見通し(xEV市場) ~2030年以降にxEV化が加速~

ここから対象市場の見通しについてご説明します。みなさまもよくご存知の内容と思いますので、要点のみご説明します。5ページはxEV市場の見通しです。お示ししているのは開示が可能な資料で、若干古い資料となります。

このテーマについてはさまざまな予測が出ていますが、今年になって地球温暖化対応などを背景に、xEV化が前倒しになっているのはご存知のとおりです。

2-2. 市場の見通し(xEV市場) ~大電流・高電圧トレンド必至~

xEV市場の急速充電器に関する技術的仕様の推移を表したものです。左側の「CHAdeMO」以下は充電器の規格を示しています。年代が進むにつれて、大電流・高電圧が進んでいくことがおわかりいただけると思います。

2-3. 市場の見通し(半導体) ~ロジックを主軸に増加の見込み~

半導体市場です。スライド左側の棒グラフは、半導体の世界市場における実績と2030年までの予測を示しています。スライド右側の表は、ロジック、メモリ、その他について製品例と主要企業をまとめています。半導体市場はロジックを主軸に、3分野ともさらに拡大すると見ています。

2-4. 市場の見通し(半導体) ~短中期的に旺盛な需要~

スライド左側の棒グラフは、世界半導体市場の2020年から2022年までの実績と予測です。よく世界的な半導体不足が言われていますが、それを受けての堅調な増加を示していると見ています。

スライド右側の棒グラフは、半導体の前工程向け装置市場の実績と予測です。ロジック、メモリの両方で投資旺盛で、いったん波はございますが、2025年には1,000億ドルを超える見込みが示されています。

3-1. 高機能製品カンパニーの成長戦略

ここまでお伝えした市場トレンドを踏まえた当カンパニーの成長戦略をご説明します。当カンパニーでは、「コアコンピタンスを磨き組み合わせた、顧客になくてはならない高機能製品をグローバル・ファースト・サプライヤーとして提供し、持続可能で豊かな社会に貢献する」ということを目指しています。

スライドの表では、3つの事業領域について、私たちが提供する価値、具体的製品・サービス、その社会的価値をまとめています。

次世代自動車、輸送機器については、車載コネクターやジャンクションボックスなどの高性能化、大電流・高電圧化に応える無酸素銅や銅合金を圧延条、もしくは押出の成形品として提供します。

大電流・高電圧化により、熱マネジメントが重要となりますので、放熱部材としての銅製品、モーター、インバータなどの熱計測のためのサーミスタ、異常電圧を遮断するアブソーバなどの製品を提供します。また、快適な車内環境や、省エネに貢献する自動車窓ガラスの熱遮断用の素材についても成長を期待しているところです。

半導体製造の前工程については、製造工程で使用されている部材として、シリコン精密加工品や柱状晶シリコン、シール製品などを提供しています。後工程については製品に使用される部材として、リードフレームやヒートスプレッダーなどの銅部材を提供しています。半導体製造装置には、銅加工品なども部材として納めています。

今後も市場のニーズに応える製品開発により、半導体市場の成長に追随して事業拡大を目指していきたいと考えています。

インフラ、産業機械、医療機器他については、欧州での黄銅、真鍮製品中の鉛規制強化のうち、xEVについては規制強化がさらに3年延長となったものの、トレンドとしては米国を含めて鉛規制が強化される方向と考えています。

これに対応するエコブラスや、昨年発表したグローブラスを拡販していきたいと考えています。エコブラス、グローブラスについて、従来一般的だった鉛の快削黄銅が、快削というのは心地よく削れるということですが、まったく同条件では削りにくいというご指摘をいただいており、これに対しては当社の加工事業カンパニーとタイアップして、ソリューションの提供を行っていきます。

この他、欧・米・アジアの重電、弱電など、インフラ向けについて、Luvata社の銅加工品は今後ますます工場の自動化が進展する中で、伸長が期待できる空気圧製品向けのシールや世界的な医療の高度化に向けて導入が進んでいます。MRI向けのLuvata社の超電導線などでも成長を目指していきたいと思っています。

3-2. 高機能製品カンパニーの注力市場

10ページでは、当カンパニーの注力市場と市場中のセグメントを分類したものを示しています。参考としてご覧ください。

4. 事業ポートフォリオの最適化

ここから全社方針である事業ポートフォリオの最適化、事業競争力の徹底追求、新製品・新事業の創出について、当カンパニーでの取り組みをご説明します。

事業ポートフォリオの最適化について、推進中のものとしては、Luvata社におけるソーラーパネルのPVリボン事業の見直し、いわゆる撤退です。また、11月12日に公表のとおり、三菱電線工業の子会社である菱星システム社の株式譲渡があります。

電子材料事業の多結晶シリコン、電子デバイス、銅加工の持分法適用会社であるコベルコマテリアル銅管については、収益構造改善に向けた取り組みを継続していきます。

5-1. 事業競争力の徹底追求 ~拡大する市場へ増産により対応~

事業競争力の徹底追求についてです。基本的には拡大する市場に追随するための増産投資を行っていきます。

銅加工では、原料であるケーク・ビレットを製造する堺工場、車向けの主力製品であるMSPシリーズなどの製造を行う若松製作所、環境フレンドリーなグローブラスや車向けの無酸素銅の新製品である「MOFC-HR」の製造を行う三宝製作所において、増産に向けた投資を行っていきます。

電子材料では、シリコン精密加工品・柱状晶シリコンの増産、生産効率向上に向けた投資を実行していきます。また、xEVで使用される部材の生産も強化します。

5-2. 事業競争力の徹底追求 ~DX推進取組テーマ~

事業競争力の徹底追求として全社で取り組んでいるDXについては、当カンパニーではスライドで示している4テーマ、すなわち「顧客接点強化」「サプライチェーン一気通貫」「開発生産データ連携」「収益プラットフォーム管理」に取り組んでいきます。

6-1. 新製品・新事業の創出

新製品・新事業の創出についてです。今までご説明したものと重複するところがありますが、銅加工の圧延事業については「MSP5」「MOFC-HR」、次世代メッキなどに取り組んでいます。銅加工の押出事業についてはグローブラスを開発し、現在マーケティングを行っているところです。

電子材料については、xEV向けのサーミスタやアブソーバ、フレキシブルサーミスタセンサなどを開発し、こちらもマーケティングを進めています。車向けは一般的に採用まで時間がかかりますが、いずれもお客さまから評価をいただき、数年後の採用に向けて順調に進んでいます。

6-2. 新製品・新事業の創出 ~当社の各種モーター部材~

私どもの製品は、みなさまもよくご存知のメーカーや製品でよく使用されています。しかし、お客さまとの守秘義務があり、具体的な例を示すのは残念ながら難しいです。ここでは、プロモーション動画で、いくつかの製品の使用イメージをお見せしたいと思います。

(映像が流れる)

7. 高機能製品カンパニーの業績見通し

スライドのグラフは11月に公表したカンパニーの業績見通しです。スライド右下に記載のとおり、銅加工は総額300億円の成長投資やDX推進などの投資を先行実施し、戦略製品の増産・増販により中長期的な視点で事業拡大を目指しています。

DXによって償却費以外の固定費の増加を抑え、増産・増販を達成することにより、収益を持ち上げていくことに取り組んでいきます。

電子材料については、半導体関連製品の需要拡大に応えるための増産投資やサプライチェーンの強化により、半導体市場、xEV市場を主軸に事業拡大を目指していきます。

8. 高機能製品カンパニーにおける事業の方向性と課題

最後のページとなります。事業の方向性と課題をあらためてまとめたものです。ご説明は割愛します。私からのご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:銅加工のROICを高める方法と今後のxEV向け製品が占める割合について

質問者1:高機能製品の銅加工ですが、中経でもともと狙っていたROIC4パーセントを3パーセントに引き下げました。足元はまだ1.6パーセントといったところですが、どのようにROICを上げていくかを教えてください。

また、今後xEV向けの新製品を拡販していくとご説明がありましたが、例えば2025年を見た時に、xEV向けの商品が御社の製品の中で何パーセントを占めるかなど、目標があれば教えてください。

鈴木:足元の収益が低迷していることで、現在はROICが下がっています。要因としては、構造的なものと一時的なものがあると思っています。構造的なものとしては、将来の増産に向けた投資が先行した結果、償却費の負担が重くなっているということです。

また、若松製作所や三宝製作所での増産を行うため、この増産スペース確保のための対応を図っていることや、人員については将来の増産に向けて維持しています。これによる減益があると思っています。

そして、三菱伸銅社を当社に取り込んだことにも絡みますが、本社費用が増加していることや、ボトルネック工程の存在によって生産量が上がらないところがあることが構造的なものだと思っています。ただし、ボトルネック工程は増産に向けてこれから解決します。

一時的なところとしては、去年の新型コロナウイルスの影響で低水準の操業になったあと、今期に入って非常に高い水準の受注を受けています。

その中で、新設備の初期トラブルなどもありました。また、要求品質がここ数年でかなり高度化しています。そのため、生産量がなかなか上がらないところがあり、結果として在庫は低水準になっています。

お客さまからは非常に高いレベルで「希望納期までに納めてほしい」という要望があり、希望納期対応を優先した結果、私どもの工程の中で理想的な生産の仕方ができていないところがあり、このあたりが高コストになっている原因です。

また、資材関係、物流費、エネルギーコストの上昇などもあります。

このように構造的なものと一時的なものがありますが、短期的には歩留まりの改善、工程の改善、外注活用などによって生産を増やして在庫を積み増し、理想的な工程の流し方にして、コストも下げていこうと一生懸命に取り組んでいるところです。

また、価格改定に関しては、特にコスト上昇分はお客さまに価格改定のお願いを始めているところです。こちらは短期的な収益改善ですが、中長期的には、銅加工品の需要が伸びることは確実だと思っています。

特に、私どもが狙っている自動車と半導体関連の伸びは確実ですので、その伸びを取り込み、魅力的な新製品を出して、同時に増産体制を整えていきます。

一方、それによって償却費は上がりますが、例えば償却費以外の労務費などに関してはDXによって極力抑え、「増産の果実」を取り込むことによって集中的にROICの回復を目指していきたいと思っています。

ROICについては、全社でまず5パーセント、その次に6パーセントを目指していきますが、銅加工に関しては事業の特性上、現在は銅価は高く、運転資本が高いところがあります。それらを勘案すると、WACCとして4パーセントを実現し、そのあと5パーセント、6パーセントと上げていきたいと考えているところです。

質問者1:少し中長期的な話になりますが、例えば2025年など、xEVや半導体向けの商品はどのくらいの割合を占めるのでしょうか?

鈴木:中経でお出ししている数字があります。2022年で月間1,200トンです。こちらをさらに増やしていくことを考えていますが、2025年段階での具体的な数字はまだお示しできない状況です。

質疑応答:Luvata社とのシナジー効果について

質問者2:ここまでの段階では、銅加工の分で2017年に買収したLuvata社の買収効果があまり上がっているようには見えないのですが、本来は本体事業とのシナジーも追求し、グローバルにマーケットを展開していく中で、トータルの効果を上げていく戦略だったと思います。

今後数年にわたっての本体とのシナジーなどを通じた増益効果・寄与について、どのように考えているのかを教えてください。

鈴木:Luvata社について、まず概要をお話しします。5事業ありますが、特に新型コロナウイルスの影響をより強く受けています。

5事業のうち、自動車の溶接用電極を主力としている部門に関しては、特に欧米での販売が多いため、半導体不足による自動車減産の影響をそのまま受けています。

ただし、中国においてはローカルとの競争が激化している面がありますが、全般的に市場シェアは失っていないと思っています。したがって、自動車生産が回復すれば収益的にはもとに戻ると思っています。

超電導線はMRI向けが主力ですが、こちらに関しても昨年は世界中の病院でMRI向けの投資が抑えられたため、お客さまも非常に苦戦していました。今年の下半期から立ち直ってきています。こちらもシェアは維持していますので、市場が戻れば収益的には戻ってくると考えています。

米国での導電部材の工場は非常に好調です。需要も高く、引き合いも多く受けており、複数の増産起業を数ステップに分けて行っているところです。

マレーシアの導電部材に関しては、引き合いは多いですが、中国勢との競争が激化している面があります。

Luvata社の本社があるフィンランドのオペレーションに関しては、もともと社内の自動車向けの部材と超電導線の原料を出しているところがあり、現在は需要が戻ってきているところです。

一方、欧州の導電部材に関してはかなり堅調に推移しています。また、大きいところで鉄鋼や非鉄金属の溶鉱炉に使う大型の部材があります。こちらも昨年から今年の上期に関してはかなり低調でしたが、この下期から需要が戻ってきている状況です。

また、堺工場とLuvata社は、材料としてはかなり近いところを取り組んでおり、シナジーの一例として実現したことを挙げると、自動車の溶接用電極材の銅合金については私どもからLuvata社に材料を出しています。

また、我々がビレットやケーク不足の時には、先方から日本のオペレーションに持ち込むことはすでに行っています。一部の製品で同じものがあるため、クロスセルを行うなどで売上を上げていくことに取り組んでいます。

先ほど少し触れましたが、今後、米国での導電部材については増強起業を行っており、フィンランドの工場においても押出機がかなり老朽化しているため、こちらを入れ替えて効率化するとともに、製品のラインナップを増やします。

欧州では、これから再生可能エネルギーなどで増えると考えられるインフラ向けの投資を取り込むことを行っていきます。

当社とのシナジーという意味では、先ほど説明したエコブラス、グローブラスの拡販において特にフィンランドと米国の拠点とタイアップし、そちらを販売していこうと検討中です。

それらにより、Luvata社のEBITDAも買収時にくらべて10ミリオンユーロ程度落ちているかたちになっていますが、それを早く戻し、さらにそれを上乗せしていくことを行いたいと思っています。

質疑応答:多結晶シリコン事業と他のシリコン系事業のつながりについて

質問者3:電子材料についてです。多結晶シリコンを、いわゆる収益改善の対象事業としていますが、一方で柱状晶シリコンなど、シリコン精密部品は非常に好調な気がしています。多結晶シリコンと他のシリコン系事業の相乗関係と言いますか、つながっているものなのかを確認させてください。

鈴木:基本的にはつながっていません。おおもとの需要が半導体ということは一緒ですが、マーケットが違うと言いますか、多結晶事業に関しては2005年から2010年くらいに半導体とソーラー向けのブームがあり、それによってかなり供給能力が増えています。それを未だに引きずっており、マーケットが回復しない状況です。

製品として半導体グレードの多結晶を作れる大きな企業は世界で4社しかなく、そのうちの1社が我々なのですが、そのような意味で技術や製品には価値があると思っています。

しかし、市場環境と言いますか、多結晶シリコンの市場構造から収益がなかなか上がらないという少し苦しい状況にあると思っています。今は収益を実現する方法を一生懸命に考えているところです。

一方、柱状晶シリコンやシリコン精密加工品については、先ほどお伝えした半導体の製造過程で使われるもので、今の半導体の高需要にそのまま密接して売れており、好調です。ここは、前中経で行ったシリコン精密加工品の増産起業がここで花開いていると思っています。

質問者3:製品の面ではそのとおりだと思いますが、生産プロセスにおいて、例えばアルミのように切り離したりできるのかどうかを確認したいです。

鈴木:多結晶シリコンと柱状晶シリコン加工品に関して直接つながっているところは限定的です。かなり薄いと思っていただいてよいと思います。

【IR Day】加工事業カンパニー

田中徹也氏(以下、田中):加工事業を担当しております、田中と申します。本日はよろしくお願いします。

加工事業カンパニー経営方針

加工事業カンパニーの経営方針です。「顧客視点に立ったスピードと変革を常に求め、実現し続けることで、顧客より真のパートナーとして信頼を得る、活力溢れたワクワクする事業体となる。」としています。

また、スライド最下段に記載のとおり「DIAEDGE」という商品ブランドを掲げて、ビジネスを展開しています。

超硬事業の概要

超硬事業の概要です。売上高1,337億円、営業利益128億円の規模で、超硬切削工具の売上高が全体の8割を占める事業体です。切削工具は当社と子会社のMOLDINO社で、建設工具・耐摩耗工具・工具素材は子会社のMMCリョウテック社で、粉末事業は子会社の日本新金属社で行っています。

超硬事業の事業領域(川上・川中・川下)

超硬事業の事業領域です。タングステンという資源を軸に、川上・川中・川下事業と分けた場合、川上・川中については日本新金属社、ならびに昨年12月に資本出資した、ベトナムのマサン・ハイテック・マテリアルズ社との協業で推進し、川下事業を当社・MOLDINO社・MMCリョウテック社で担当しています。

超硬切削工具市場①

こちらのスライドは、超硬切削工具の市場の見通しを示しています。2030年の超硬切削工具の市場規模は2兆600億円と見ています。その時点での当社のグローバルシェアは10パーセント以上を達成するという目標です。

そして、スライド左下に記載のとおり、現在はグローバルの4位グループにいますが、そこから抜け出し、トップ3の一角に食い込むことを目指しています。

超硬切削工具市場②

こちらのスライドは、我々がターゲットとする市場を示しています。我々は「自動車」「金型」「航空機」「医療」の各産業をターゲット産業と位置付けて注力していきます。

産業別売上計画と施策①

ここからはターゲット市場での施策についてご説明します。まず、自動車産業です。市場の動向は、生産台数については2030年に向けて今後も成長していくと見ています。しかし、電動化の加速によってエンジン部品の加工が減少し、超硬工具の需要は2024年頃をピークに漸減していくと見ています。

そのような中、足回り操舵系部品のソリューション提案を強化していくこと、また、成長が見込まれるEV部品加工用工具のラインナップの拡充に取り組んでいきます。

次に、金型産業です。市場の動向は、自動車生産の継続的伸長により、需要は拡大していくと見ています。ITや自動車のCASEの進展によって、各種センサーや制御装置など、新たな金型需要が創出されていくと見ています。

そのような中、MOLDINOブランドを軸に金型加工に特化した新製品開発および金型種別にトータル加工ソリューションの提案を進めていきます。

産業別売上計画と施策②

航空機産業です。市場の動向は、現在、新型コロナウイルスの影響によって需要は大きく落ち込んでいますが、2030年に向けて、特に2023年以降は急速に需要が回復していくと見ています。

そのような中、ジェットエンジン部品や機体部品に使用される超耐熱合金やチタン合金など、いわゆる難削材加工で他社との差別化を図るとともに、産学連携によるオープンイノベーションを推進し、R&Dを加速させていきます。2030年の売上規模としては、2017年の3倍を目指しています。

次に、医療産業です。市場の動向は、世界的な人口増加と高齢化によって、ヘルスケアの需要は堅調に拡大していくと見ています。足元も2030年も、北米が主要市場と見ています。一方で、2030年頃には中国市場も急成長する可能性があると見ています。

そのような中、チタン合金やステンレス合金など、難削材加工が多い代替再生治療機器の加工用工具の拡充を図るとともに、最大市場の北米エリアで医療専任チームを発足し、マーケティング・ソリューション・販売活動を強化していきます。こちらの2030年度の売上は、2017年の6倍の規模を目指しています。

エリア別売上計画と施策

エリア別売上計画です。特に北米や中国での売上を増やしていくという計画にしています。注力産業もエリアごとに若干異なっています。主な施策については、スライド下段に記載のとおり、サービスやソリューションの強化を中心に推進していきます。

高効率製品とソリューション提案による価値提供

高効率製品とソリューション提案による価値提供についてご説明します。我々の事業の強みは、素材とコーティング技術をコアコンピテンシーとした圧倒的な性能を持つ製品開発力にあると考えています。

従来の製品の10パーセント増などではなく、2倍や3倍の高効率で加工可能な製品を開発・提供していきます。スライド左下には、そのような新製品の市場での評価の一端として、今年度の受賞事例を記載しています。

一方、よい製品を作れば売れるという時代はもうすでに終わっているといわれていますが、我々も「もの売り」から「こと売り」への変革を進めています。スライド右側に記載のとおり、単に消耗品の切削工具を売るだけではなく、お客さまの困りごとの解決や生産性向上のニーズに応えるソリューションを提供していきます。

スライド下段に記載のとおり、CAEによる切屑解析、CAMによる加工パスシミュレーション、切削モニタリングシステムによる切削負荷解析などを用いて、ソリューションを提案していきます。

DXによる顧客体験価値の向上

DXの取り組みについてご説明します。はじめに、DXによる顧客体験価値の向上についてです。スライドの図は、上段にお客さま、下段に当社を示しています。

お客さまの行動プロセス、すなわち情報収集から始まって、工具選定、工具購入、量産準備、量産実行、工具管理の各プロセスにおいて、当社とお客さまのデジタル接点を強化、充実させていきます。

そうして蓄積されたデータから、市場やお客さまのニーズをしっかりとらえ、当社内のさまざまな意思決定を最適化し、適切な製品・サービス・ソリューションをよりリアルタイムに提供していくサイクルを回していきます。

DXによるスマートファクトリー化の推進

DXによるスマートファクトリー化の推進についてご説明します。我々は製造業ですので、ものづくりの現場で、デジタル技術を活用した生産性が高い効率的かつ高品質なスマートファクトリーを推進していきます。

スマートファクトリーで実現したいことは、品質向上、コスト削減、生産性向上、リードタイムの短縮です。そのために、計測技術や装置化技術、情報技術の3つの観点から、スマートファクトリー化を推進しています。

クリーンなものづくりの推進

クリーンなものづくりの推進についてご説明します。超硬スクラップの回収から、タングステンカーバイド原料の再生プロセスをグローバルで展開し、長期的にはリサイクル率80パーセント以上を目指して活動しています。

今年度のリサイクル率は現時点で39パーセントと、22中経の目標である35パーセントはほぼ達成している状況です。ベトナムのマサン・ハイテック・マテリアルズ社への出資を通して、リサイクルに関する協業の検討を進めていきます。

また、スライド下段に記載のとおり、加工事業カンパニーは温室効果ガスの排出削減についてもアグレッシブに取り組んでいきたいと考えています。2030年度までに、省エネ設備への切り替えを推進するとともに、再生可能エネルギー由来の電力へ100パーセント切り替えを目指して取り組んでいます。

DIAEDGEブランドに込められた想い

最後に、「DIAEDGE」ブランドに込められた思いについてです。「お客さまと共に、より良い未来を創る。」をコンセプトに、手に取るすべての方々に「ワクワク」を感じていただけるよう、最先端の技術を結集させた「DIAEDGE」ブランドが2017年に誕生しました。

私たちは、工具としての価値を提供するだけではなく、お客さまと共に考え、感動を共有し、挑戦し続けてまいります。

以上で、私のプレゼンテーションを終わります。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:自動車向けの売上を伸ばしていく計画について

質問者1:スライド8ページ目に関して1点質問です。自動車向けの超硬工具の需要が2024年頃でピークアウトするという一方で、御社の自動車向けの売上は引き続き伸ばしていくというご計画でした。

おそらくEV向けなどに力を入れるというご想定だと思うのですが、御社としてどのような入り繰りで引き続き自動車向けを伸ばしていくのかという点について、もう少し詳細なご解説をいただけないでしょうか?

田中:ご説明したとおり、自動車向けの超硬工具の需要はわずかながら減少してくる見込みですが、そのような中で我々として注力していく部門は、例えば自動車の精密小物部分や、電動化になっても必要となるソレノイドバルブなど、小物の部品のシェアを上げていくことだと思っています。

さらにはガソリンエンジン中心になりますが、ターボチャージャー、デフケース、ハブ、ナックル、トルクコンバーターなど、自動車のコアになる部品についてはシェアアップを図っていきたいと考えています。需要全体は減少するものの、我々のシェアを伸ばしながら売上を伸ばしていくという計画です。

質疑応答:EV化の影響と市場全体の見通しについて

質問者2:実際に内燃機関の自動車からEVとなると、自動車だけで見た時にどのくらい使用原単位が減ってくると見ているでしょうか? また、6ページ目の市場全体のグラフが右肩上がりになっているのですが、それ以外の自動車など、いろいろな分野が増えて市場全体が伸びるという見通しなのでしょうか? この市場の構想についても教えていただけますか?

また、もう1点お聞きしたいのですが、この事業でM&Aは検討していないのでしょうか? 買収して大きくなるという手もあると思います。

田中:まずスライドの右肩上がりは、他にはどのようなものがあるのかということですが、先ほどご説明した我々の注力分野でいうと、自動車の成長はごくわずかと見ていますが、それ以外の分野では航空機産業が最も伸びる産業だと見ています。

CAGRでいうと2030年に向けて7.5パーセント程度は成長すると見ています。医療分野についても5パーセント程度は成長すると見ています。エリアでは、北米が4パーセント以上伸びると見ています。その他では欧州が2.7パーセント、中国が2.5パーセント、日本はそれに比べるとあまり伸びがなく、1.3パーセント程度の伸びと見ています。

また、EV化が進んだ場合にどのくらい下がるのかに関しては、個別に何パーセント下がると言うのはなかなか難しいのですが、超硬工具全体の需要見通しとしては年間マイナス0.5パーセントくらいで、EVの進展に伴って総需要が下がってくるという見立てをしています。

M&Aについても考えてはいますが、現時点であまり具体的な事案はなく、模索中というステータスです。

質疑応答:シェアアップへの戦略について

質問者3:6ページの今後シェアを増やしていくというところについての質問です。この事業は今までもシェアを増やしていくことを模索してきたと思うのですが、今までなかなかシェアが増えていかなかったという歴史もあるかと思います。

シェアを増やそうとしている中で、今までなぜ増えてこなかったのか、それを今後どのように戦略を変えてシェアを増やしていくのでしょうか? もちろん市場自体が増えていく中で、御社の強みを活かしてシェアを増やしていくと思うのですが、シェアが増えていくようなイメージが湧かないため、そのあたりをもう少し詳しく教えてください。

田中:本日のプレゼンテーションの中にもありましたが、我々のコアコンピタンスとして捉えているのは、素材やコーティングの技術開発力がベースにあると思っています。それをもとに、よい製品を開発して供給していくというのがベースにあります。

それに加えて、DXの取り組みのところでご説明したとおり、お客さまへあらゆる接点で今以上にサービスとソリューションを提供していくことによって、お客さまから認められる存在になっていくことで、シェアをアップしていきたいと考えているところです。

質問者3:今までシェアが上がってこなかった背景は何かありますでしょうか?

田中:DXのところでご説明しているデジタル化の進展については、現時点で欧米各社に対して大きく遅れを取っているという認識です。このようなデジタル化に関するお客さまへのサービスの部分が、今まで遅れを取っていたところだと認識しています。

質疑応答:マーケティングの営業人員拡充と費用のかけ方について

質問者4:従来までのご説明では、航空機向けや拡販に向けて営業員の拡充に取り組まれてきたというご説明もあったと思うのですが、製品分野を広げていく上でのマーケティングの人員展開をどのように考えているのでしょうか?

また、その分だけコストもかさむと思うのですが、このあたりのマーケティング費用のかけ方についてどのように考えているのかも含めて、ご解説をお願いできますでしょうか?

田中:航空機向けには数年前に航空宇宙部という組織を立ち上げて、アメリカやヨーロッパでのお客さま対応やマーケティングを推進しているところです。日本にもこの春からマーケティング組織を立ち上げており、各エリアとの連携でマーケティング活動を推進すること、あるいはそれに基づいた製品投入計画を策定していくということについて、先行投資として人員を採用して強化しているところです。

質疑応答:航空機と医療分野売上計画について

質問者5:スライド資料で航空機と医療分野の売上計画を立てられているかと思います。2030年のレベルはそれぞれ高い目標になっていると思うのですが、これらの分野は参入してから実際に売上が立つまでの間に、認定を取得するなどの期間もそれなりに長くなってくると思います。

需要の伸びが期待される一方で、今後9年間のシナリオになりますが、御社の売上として成果が出てくる伸びのカーブは、後半により急速に上がっていくようなイメージになるのか、実際に種まきの成果がどのように表れてくるのか、という売上の伸びの時間軸を教えていただけますでしょうか?

田中:ご指摘のとおり、航空機などは認定を取るまでに時間がかかると見ているため、売上の目標は非常に高いのですが、絶対額としては後半集中型というかたちの設定になっています。ただし、対前年の伸び率を見ると、前半の伸び率がそれほど低いという設定ではなく、伸び率は一緒なのですが、額の大きさは後半集中型という設定になっています。

質問者5:現行の中経のエンドを挟むような向こう2年から3年の見方としては、すでにこれまでの営業の成果がある程度出てくるようなイメージで捉えておけばよいでしょうか?

田中:特に航空機に関しては、まだこの数年は需要の回復が不透明なところがあるため、市場の回復具合によると見ていますが、今までの取り組みや、それに加えたいろいろな取り組みを行っていますので、これらの成果を出していきたいと思っています。

【IR Day】金属事業カンパニー

酒井哲郎氏(以下、酒井):金属事業カンパニーの酒井と申します。本日は、よろしくお願いします。私からは、金属事業カンパニーについて説明します。まず、事業全体の概要および長期目標と戦略について説明した後、トピックスをご紹介します。

金属事業カンパニーの概要

金属事業カンパニーは、資源事業、製錬事業、貴金属事業の3つの事業を行っています。資源事

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