IHI、製造からソリューション主体事業への構造改革で利益大幅増を目指す

2021年10月11日 16:56

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大型アンモニア受入基地のイメージ図(画像: IHIの発表資料より)

大型アンモニア受入基地のイメージ図(画像: IHIの発表資料より)[写真拡大]

 IHIは10月5日、アンモニア大規模サプライチェーンの実現に向け、大型アンモニア受入基地の開発を開始した。同社は、アンモニアを石炭火力やガスタービンの燃料として利用するための技術開発を進めてきたが、今後はカーボンニュートラル社会の実現に向け、輸入される大量のアンモニアを効率的に受け入れる大型アンモニア受入基地の開発に着手する。

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 IHIは、国内LNG受入基地の約3割、LNG貯蔵タンクの約5割の設計・建設実績を持つトップメーカーで、これらの技術を生かして2025年頃の開発完了を目指す。

 IHIは、ペリー来航による欧米列強への対抗のため1853年水戸藩により江戸で石川島造船所として創業された。1876年、個人経営の石川島平野造船所となったが、経営不振の中、渋沢栄一が国家にとって必要な事業として、1893年に株式会社とし、会長になり立て直した。

 1960年、播磨造船所と合併して石川島播磨重工業となり、2007年にグローバルブランド強化のため社名をIHIへ変更した。

 2021年3月期の売上収益は1兆1,129億円。事業別の構成比は、産業システム・汎用機械事業が33.6%、資源・エネルギー・環境事業が28.5%、航空・宇宙・防衛事業が22.0%、社会基盤・海洋事業が14.2%、その他事業が1.7%を占めるIHIの動きを見ていこう。

■前期(2021年3月期)実績と今期見通し

 前期売上収益は1兆1,129億円(前年比11.9%減)、営業利益は前年よりも199億円減の279億円(同41.6%減)であった。

 営業利益減少の要因としては、コロナ禍による航空旅客需要の減少により航空・宇宙・防衛事業が612億円、設備投資の様子見により産業システム・汎用機械が15億円の減益であった。

 一方、工事採算の改善と売上収益拡大により資源・エネルギー・環境事業が152億円、中国の車両過給機の好調により社会基盤・海洋事業が40億円、研究開発費の一時抑制、固定費の削減、投資不動産の売却などにより全社調整その他が236億円の増益であった。

 今第1四半期(4-6月)の売上収益は2,452億円(前年同期比12.7%増)、営業利益は前年の赤字79億円から202億円の黒字へ改善した中、今期は売上収益1兆1,800億円(前年比6.0%増)、営業利益700億円(同150.3%増)を見込んでいる。

■プロジェクトチャレンジ(2021年3月期~2023年3月期)による推進戦略

 2023年3月期に売上収益1兆4,000億円(対前期比25.8%増)、営業利益1,120億円(同301.4%増)を目指して、製造主体からDXを活用したソリューション主体事業への構造改革を推進する。

●1. 産業機械・汎用システム事業

・東南アジアでアフターサービスを強化。車両過給機のグローバルアフターサービス体制を確立。

●2. 資源・エネルギー・環境事業

・東南アジアへの展開加速とオペレーション、メンテナンス事業への参入。

●3. 航空・宇宙・防衛事業

・整備・部品修理体制の拡充と宇宙事業の打ち上げサービスへ参入。

●4. 社会基盤・海洋事業

・工期短縮、経済性向上と点検・診断技術の高度化。

●5. 今後の成長事業

・脱CO2、暮らしの豊かさに向けて、航空輸送システム、カーボンソリューション、保全・防災・減災を今後の成長事業として育成。

 エンジニアリング力によって、環境、エネルギー、産業・社会基盤への貢献を目指すIHIの動きを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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