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EVの正しい知識が議論の前提だ
●祝砲の意味
平和の祭典で、「(戦争の道具である)大砲を撃つとは何事か」と主張するクレーマーがいる。
【こちらも】EV化議論に先立ち認識すべき基礎要件
昔の大砲は、砲の先端から弾丸を込める。この大砲に弾丸が装填されていないことを明らかにするには、装填した弾丸を発射するしかない。
完全な友好関係が確立されていない相手国に入港する際には、大砲に弾丸を装填していないことを証明する為に、相手国の目の前で無害な方向に向けて大砲を撃つ。これが、相手国に対する「丸腰だから害意は無い」ことの証明となる。
この由来から、平和の祭典で、祝砲として「大砲を撃つ」のだ。
以上の様な基礎知識を持った上で、何等かの「独自理論で反対」を表明するなら、議論が成立する。
●EV車の方が環境には悪いという事実
「カーボンフリー」と唱えれば、地球環境に優しいみたいな印象を持つ様だが、「EV車」と「内燃機関車」を比較すれば、現在の電源構成から見ればEV車の方が環境に悪い。
この事象は、「原子力発電比率71.5%のフランス」や「水力発電約50%のノルウェー」以外の、日本及び殆ど全ての世界各国についていえることである。
2月26日付「EV化議論に先立ち認識すべき基礎要件」でも述べたが、EV生産の完成検査時には充放電をしなければならず、1台生産するだけで家1軒の1週間分の電力を消費する。単なる「完成検査の為だけに」である。
●トヨタの資料を基にしての解説
参考図1(トヨタ記者発表資料)は、9月7日、トヨタがメディア向けに「電池・カーボンニュートラルに関する説明会」を、ライブで実施した際の資料である。
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/35971587.html?adid=ag478_mail&padid=ag478_mail (トヨタ許諾URLよりアクセス可能)
提示された資料図で、これを噛み砕くと次の内容となる、
『トヨタの2021年7月までの グローバルでのHEV累計販売1810万台に使用した電池量では、BEVを約26万台しか生産出来ない。(1810万台のHEVに使った電池量は、BEV約26万台分でしかない)
そして、この1810万台が生産段階から実際の使用中を含めて排出したCO2の総量は、BEV約550万台の生産や、消費した電力の発電に関するまでに関わるCO2排出量と同等でしかない。(1810万台のHEVと、550万台のBEVは、生産段階から走行時に関する電力等を総合的に勘案すれば同等である = HEV1810万台の30.39%でしかない550万台のEVだけで、既にHEV分相当のCO2を排出)』
●もう少し詳しく噛み砕く
後半のHEV1810万台とBEV550万台のCO2排出に関する説明は、判り難いかも知れないので、これに補足を加える。
自動車が生産されて販売され、寿命を終えて廃車になるまでには、いろいろな段階でCO2が排出される。
車両本体の、ボディ等に使用される鉄、アルミ、FRP、カーボン素材、ガラス等の生産条件は同等で、HEVとBEVには、多少の使用量構成比率が変わるだけだ。
後は、「ガソリンを燃やして走る」か「電気を充電して走る」の違いとなる。BEVの場合は、この「電気」部分が曲者だ。
「車載バッテリーの電気で走っている」場面では「ゼロエミッション」だが、日本の電源構成から見れば、発電に際してのCO2排出量が多い。つまり発電所でCO2を排出するか、走行時の内燃機関からCO2を排出するかの、比較の問題である。
これ程までにCO2に関しても有利なHEVを、欧州は何故排除しようとするのか?
日本は、これに追従するのが正しいのかについても、基本条件を認識して議論すべきだろう。
●責任者である担当相がなすべきは
原子力発電に対する過度な拒否反応もあって、日本の電源構成が早期に大きく改善される見込みは極めて薄い。日本でEV車の議論をするには、先ずこの電源構成をどうするべきかの議論が必要だろう。
その際に焦点となるのは原発だが、原発に対する拒否反応は「理論的」では無く「感情的」だ。
福島原発の「処理水」を、反日的なスタンスの新聞や「マスゴミ」と揶揄されている一部報道関係者が「汚染水」と表現する。
本来は、この事象に対しても「汚染水を処理して無害化したものであり、“処理水”と正しく表現する様に」と、環境問題の責任者がその都度訂正して、風評被害を抑え込むべきである。そして、それでも風評被害が発生するなら、政府として十分な補償をするべきなのだ。
「のどぐろが好きだ」とかぃって、地元の漁協代表者と意気投合しているのでは無く、客観的なデータを示して、海洋放流に問題無いことを訴えるべきだろう。
月城原発1号機に至っては、20年以上放射性物質漏れがあったとの、現地報道まである、反日が国是の様な隣国に対しても、彼の国の原発が排出する「汚染水」に比べて、福島の「処理水」がどれだけ安全であるかを、客観的なデータを引用し、積極的に諸外国に向けて発信するのが彼の仕事では無いのか。
●日本の技術で世界を救う
日本には、大気汚染に関しては、極めて優秀な石炭火力発電システムがある。日本には世界に冠たる「内燃機関技術」「ハイブリッド技術」「燃料電池技術」がある。(参考図2: 燃料電池自動車の仕組み(引用:トヨタ自動車ホームページ))
世界が「カーボンフリー」だの「日本はCO2排出46%削減」だのと騒いでいるこの時代だからこそ、国家の電源構成、電力分野と自動車分野に日本独自の「地球温暖化対策」を世界に分与し、非現実的な「EVシフト」「内燃機関禁止」といった方向性自体を転換させるべきだろう。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
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