相場展望8月19日 過剰マネーとリスクの攻防が始まる リスク: 金融緩和縮小・景気鈍化・感染爆発

2021年8月19日 08:57

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/16、NYダウ+110ドル高、35,625ドル(日経新聞)
  ・中国の景気減速懸念やアフガニスタンでの地政学リスクの高まりから、売先行しNYダウは一時▲280ドル超下げる局面があった。
  ・値ごろ感からヘルスケア関連株が物色され、今週に相次ぐ小売の決算発表に期待した買いがはいり、NYダウは上げに転じ最高圏で取引を終えた。
  ・買われたのは、医療保険のユナイテッドヘルス、製薬会社アムジェンなど。売られたのは、運輸省の安全検査調査でテスラ、半導体のAMD、エヌビディア。

【前回は】相場展望8月16日 夏季休暇で閑散相場となり、振れ幅拡大に注意 外国人投資家は3週連続買越し⇒売り転換に注目

 2)8/17、NYダウ▲282ドル安、35,343ドル
  ・米7月小売売上高が市場予想より減少、米景気回復の鈍化を懸念して小売株や景気敏感株を中心に売られ、一時▲500ドル超下げた。利益率悪化のホームセンターのホームデポが▲4%安、ディズニー、ナイキ、ボーイング、キャタピラーが大幅安となった。
  ・NYダウは前日まで連日、過去最高値を更新しており、高値警戒の売りもあった。
  ・上昇基調のハイテク株にも利益確定売りが広がり、ナスダック指数も下げた。

 3)8/18、NYダウ▲382ドル安、34,960ドル(みんかぶ)
  ・FOMC議事録要旨が公表されたが、予想したよりはタカ派ではなかったが、年内の量的緩和の段階的縮小(テーパリング)が示唆された。
  ・公表を受けて、株式市場は次第に売りが強くなり、NYダウは利益確定売りがきっかけとなって下げ幅を拡大した。
  ・原油が下げ幅を拡大したことでエネルギー株を中心に重石になり、銀行・産業株が下落し、IT・ハイテク・薬品株も売られた。

●2.米国株式市場は、FOMC議事録公表で量的緩和縮小を示唆され、楽観論が少し冷やされる

 1)米連邦準備制度理事会(FRB)は「雇用の回復」を掲げて、量的緩和に邁進してきた。結果、毎月1,200億ドル(約13兆円)もの過剰なマネーを市場に供給してきた。

 2)一方、企業は労働力不足で、賃金上昇や採用奨励金支給するなど雇用増に対処したが、労働力解消には至っていない。経済鈍化が指摘されているが、労働力不足が供給力増の阻害要因となっている面もある。住宅の需要ニーズが高いが、資材価格の高騰と建設労働者不足でニーズに応えられない状況が続いている。この状況は、『景気が過熱している』ことを表していると思われる。

 3)求人件数が1007.3万件と過去最高を記録した。FRBはそれにもかかわらず、『雇用がパンデミック前まで回復していない』として、景気回復のための必要資金の2倍を超える、過剰な資金供給を継続している。

 4)この過剰な資金が引き起こしているのが『インフレ率の上昇』である。FRBは、「インフレ上昇は一過性」と決めつけているが、原因をFRBによる過剰マネーの供給にあることを認めようとしない。過剰マネーは、需給ひっ迫を見込んで、株式市場にみみならず、木材・農産物などの高騰に大きな影響を与え、インフレ率を押し上げている。住宅価格の上昇は、家賃の高騰を招いているが硬直性があり簡単に下がらない。家賃は物価指数に大きな影響を与えるもので、「インフレは一過性」で済ます問題ではない。

 5)一番怖いことは、『FRBの金融政策転換の遅れ』である。金融政策の遅れに気が付いて、FRBが急ブレーキを踏むと、景気に氷水をかけてしまう。株式市場も大混乱するリスクを抱え込む、と思われる。過去によくあった、『株式のバブル終焉』となる可能性を秘めている。FRBは景気回復を潰さないためにも、急ブレーキを踏まない早期の政策転換を望みたい。

●3.FOMC議事録要旨公表、年内の資産購入ペースの縮小の可能性は十分との示唆(みんかぶより抜粋

 1)米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録は、予想したほどタカ派ではなかった印象だった。
  内容は、
   (1)最近のインフレ率上昇は一時的との見解を示す。
   (2)一方、ほとんどの委員の中から、資産購入ペースの縮小を年内開始するべきとの主張が明記された。ただ、慎重な意見も見られた。
   (3)雇用も、「満足する水準に近い」との指摘もあった。

●4.米FRB、9月テーパリング発表も(フィスコ)

 1)米連邦準備制度理事会(FRB)高官の中から、早期の緩和縮小を支持する声が高まりつつある。

 2)9月の緩和縮小の発表の可能性も高まっているようだ。

 3)9月に緩和縮小を発表し、10月か11月に開始、各月150億ドル規模の削減で、完了まで8カ月から10カ月をかけることが織り込まれつつある。金融危機時は2年ほど費やしたことを考えると、速いスピードの縮小緩和となる。

●5.半導体メーカーに危機到来か(JB Pressより抜粋

 1)台湾の半導体市場調査会社「トレンドフォース」の資料によると、パソコンメーカーの高い在庫率、パソコンの需要の鈍化などを理由に、今年9~12月期のパソコン用DRAM価格が最大で▲5%下落すると見通した。

 2)モルガン・スタンレーも「半導体に冬が来る」と題したリポートを通じて、「半導体サイクルが後半期に入り、半導体株投資のリスクが高い」とし、サムスン電子の目標株価を9.8万ウォン⇒8.9万ウォンに下げた。

●6.米7月小売売上高は前月比▲1.1%減と、予想▲0.3%減から落ち込んだ(ロイターより抜粋

 1)半導体不足で自動車や家電の生産制限で、売上が落ち込んだため。消費者は価格に関わらず購入したい自動車を手に入れられない状況にある。

 2)7~9月期はサービス消費の支出により、堅調な経済成長が続く可能性がある。

 3)家計の貯蓄はパンデミック以降、少なくとも2兆5000億ドルに上り、個人消費は年末まで底堅さを保つとみられる。

 4)4~6月期のGDPは年率で前期比+6.5%増で、アトランタ連銀は7~9月期を+6.0%とみている。

●7.米7月鉱工業生産指数は前月比+0.9%増と、4カ月ぶりの大きさ(時事通信)

 1)自動車・同部品が+11.2%上昇したのが寄与した。

 2)7月製造業生産指数は前月より+1.4%上昇した。

●8.米8月NAHB住宅市場指数75と、予想80を下回った(ブルームバーグ)

 1)指数75は高水準ながら、2020年7月以来13カ月ぶりの低さ。(ロイター)
  (注)改善と悪化の分岐点は50であり、75は相当高い位置にあると言える。

 2)住宅購入への関心は依然として高いものの、価格高騰が重石になった。

●9.米当局、コロラド川を水源とする西武貯水池の水量不足で給水制限を初めて発動(ロイター)

 1)原因は、米西部の深刻な干ばつ。

 2)ロサンゼルス、サンディエゴ、アリゾナ州フェニックス、ネバダ州ラスベガスなどの大都市の2,500万人に水を供給している。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の指数

 1)8/16、上海総合+1高、3,517(亜州リサーチ)
  ・中国経済指標の下振れを受け、中国当局の景気テコ入れ策が期待された。
  ・中国7月経済統計は、小売売上高や鉱工業生産などの増加率は予想以上に鈍化。
  ・新型コロナの感染拡大など不安材料も多く、全体としては上値が重かった。
  ・業種別では、不動産株が上昇し、消費関連株の一角もしっかり。反面、自動車関連株は冴えなかった。

 2)8/17、上海総合▲70安、3,446(亜州リサーチ)
  ・投資家のリスク回避スタンスが鮮明化する流れとなり、引けにかけて下げ幅拡大。
  ・米中の景気指標が大幅に下振れし、経済回復が一服したと懸念された。
  ・コロナ感染拡大が中国・米国・アジア・オセアニアなどで歯止めが掛からず、経済活動の縮小が不安視された。
  ・全人代常務委員会で、複数産業の規制強化方針が示されるとの観測も浮上。
  ・業種別では、ハイテク関連の下げが目立ち、消費関連株も安かった。

 3)8/18、上海総合+38高、3,485
  ・景気テコ入れの期待が強まる流れとなった。
  ・経済回復ペースの鈍化が懸念され、景気の腰折れを回避するため、中国当局は金融緩和として10~12月期に預金準備率の引き下げ観測が広がった。
  ・業種別では、金融株が上げを主導し、不動産株もしっかり。反面、消費関連株は冴えなかった。

●2.中国景気減速の懸念、7月中国工業生産高が前年比+6.4%増と、予想下回る(日経新聞)

 1)中国の経済回復がピークアウトしたとの見方がくすぶる。

●3.中国企業が発行するADR(米国預託証券)は、もはや「投資不可能」(ブルームバーグより抜粋

 1)590億ドル(約6.45兆円)を運用する会社のマーシャル・ウェイス氏の見解
  (1)中国政府による政策リスクが中国投資の魅力を損なう。
  (2)中国企業の上場は今後、主に中国本土の株式市場に限定される可能性が高い。
  (3)米国株式市場に上場する、中国企業株への投資はもはやリスクを冒すに値しない。

 2)米当局への届け出によると、ジョージ・ソロス氏の投資ファンドや、複数の著名ヘッジファンドが既に、中国への投資を減らしている。

●4.香港株式市場8/17、規制強化発表で中国大手テクノロジー株大幅下落(ブルームバーグ)

 1)中国政府の独占禁止法による統制強化が発表された。

 2)百度(バイドゥ)と網易(ネットイース)は▲5%超の値下がり。アリババと騰訊(テンセント)の下げも目立った。

●5.中国政府はバイトダンス子会社に出資し、影響力強化を狙う(時事通信より抜粋

 1)動画アプリ「ティックトック」を運営する中国IT大手の字節跳動(バイトダンス)の主要子会社「北京字節跳動科技」に、国有企業が1%を出資・取締役1人も派遣する。

 2)中国政府はまた、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」の関連企業に1%出資した。

●6.中国・全人代は「反外国制裁法」を香港に導入について8/20にも決定(共同通信)

●7.資金難の中国恒大集団、創業者の許家印氏が本土部門会長を辞任(ブルームバーグ)

 1)不動産開発会社として世界で最も債務負担が重いといわれている。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/16、日経平均▲453円安、27,523円(日経新聞)
  ・日経平均は3日続落し、7/30以来の安値となった。
  ・大幅下落の要因
  (1)米8月消費者態度指数は下げ幅が大きく悪化し、市場予想をも下回った。
  (2)日本でもインド型(デルタ型)の感染が急拡大し、緊急事態宣言の期限延長や対象地域の拡大検討。
  (3)日本4~6月GDP成長率はプラスに浮上したが、個人消費の低迷が目立った。
  (4)中国の7月工業生産高や小売売上高が予想を下回り、中国経済の先行きの警戒感が出た。。
  (5)アフガニスタン政権が事実上崩壊し、地政学リスクの高まりを意識。
   など、投資家心理を悪化させた結果、景気敏感株の多い日本株の売り材料となった。

 2)8/17、日経平均▲98円安、27,424円(日経新聞より抜粋
  ・自律反発を見込んだ買いが先行したものの、買い一巡後は伸び悩み、後場にはマイナスに転じた。
  ・新型コロナ感染者拡大し、重症者数も日増しに深刻化している。経済活動の正常化が一段と遅れるとの見方が投資家心理に影を落とした。
  ・中国上海総合指数を始め主要なアジアの株式指数での大幅下落が、重荷になった。

 3)8/18、日経平均+161円高、27,585円
  ・前日まで4日続落で▲600円超下げたこともあり、自律反発の買いが優勢となる。
  ・ただ、新型コロナ感染者数の増加に歯止めが掛からないため、国内景気の先行き不透明感が根強く、上値を抑えた。

●2.日本株式は、米株式市場次第の動きとなりやすいので、米株式の動向に注目

●3.日本4~6月期GDP+1.3%増、個人消費が伸び悩み、持ち直し力強さ欠く(NHK)

 1)国内総生産(GDP)の内訳は、輸出+2.9%、設備投資+1.7%、個人消費+0.8%。

 2)個人消費は、ネット通販は大きく伸びたが、交通・旅行・外食・居酒屋パブが落ち込んだ。輸出は、自動車・中国向け半導体製造装置が6月に7兆円と大きく伸びた。企業の鉱工業生産は6月にコロナ前の水準に並んだ。

●4.40都道府県が「爆発的感染」に相当(共同通信)

 1)厚生労働省は8/18、東京や大阪、沖縄など40都道府県で、人口10万人当たりの1週間の新規感染者数がステージ4(爆発的感染拡大)相当となったと明らかにした。

●5.東京など緊急事態宣言を9/12まで延長、百貨店の入場制限徹底(ブルームバーグ)

 1)GDP減少額は0.75~1.2兆円程度に拡大(第一生命研)

●6.企業業績

 1)荏原     2021年12月期純利益370億円、前期比+53%増(日経新聞)
         従来予想295億円。 株価は一時+8.3%の+460円高。
 2)日通     2021年12月期個別決算の営業利益+240⇒+225億円に下方修正。
         連結決算は、売上は上方修正、営業利益は据え置き。(日経新聞)
         景気回復で需要増、燃料費上昇でコスト重荷。株価は一時▲14%安。
 3)シチズン   2022年3月期純利益+90⇒+115億円に上方修正 (日経新聞)
         前期は▲251億円の赤字。
 4)東京エレク  2022年3月営業利益4,420⇒5,080億円と+58%上方修正(ロイター)
         4~6月営業利益は前年同期比+92%増の1,417億円と予想上回る。
         株価は8/17に一時+3%高、終値は▲0.73%の下落。
 5)パンパシフィック 「ドン・キホーテ」運営会社、巣ごもり需要で食品伸長(NHK)
            2021年6月年間純利益は536億円と過去最高、前期比+7%増

●7.企業動向

 1)住友商事   豪ロレストン炭鉱の権益を売却(時事通信)
 2)ルネサス   同業の英ダイアログの買収を8月末までに完了(時事通信)
 3)日医工    メディパルと資本業務提携し、品質管理向上を目指す(朝日新聞)


■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・7012 川崎重工      水素・手術ロボットなど新事業。黒字転換。
 ・8439 東京センチュリー  リース事業。業績好調。
 ・1926 ライト工業     国土強靭化。業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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