静脈企業・リバーHDの強み

2021年5月21日 16:18

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 「静脈産業」。自動車や家電などの製造業「動脈産業」に対し、製造された商品が廃棄された時点で回収し、「再資源化」「処理」を行う産業を指す。

【こちらも】21年3月期を既に3回上方修正した、宝HDの理由

 東証2部のリバーホールディングス(リバーHD)は、そんな静脈産業の代表的1社。主たる業務は、製造工場や建物の解体現場から出る鉄・非鉄の「端材」や、廃棄自動車・家電を引き取り破砕・選別し有価物の鉄・非鉄「金属」を電炉・高炉・精錬メーカーに販売する。

 2020年度に受け入れた資源量約75万tのうち、約60万tを再資源化している。リサイクル還元率は、約80%に及ぶ。

 前身で金属リサイクルを手掛けてきたメタルワン(現リバーHDは15年)にとって転機となったのは、20年。「循環型社会形成推進基本法制定」。以降、順次「家電リサイクル法」「建設リサイクル法」「自動車リサイクル法」が施行された。

 廃棄・リサイクル業界の大きな転換期が背景だった。そうした流れに対応するために、M&A戦略を執った。メタルサイクル(自動車リサイクルに強み)や、中田屋(家電リサイクルに特長)の買収が代表例。

 リバーHDの強みは通常、鉄スクラップなどは輸出などで在庫を抱えていると販価動向の市況変動リスクに左右されがち。が、それがない。これまでの積み重ねで繋がりを強めてきた地場の電炉メーカーに売却しうるからだ。精々在庫保有期間は3-4日と短い。つまりリスク在庫を抱えていない。

 関東圏では現在30基の大型シュレッダーが稼働しているが、そのうち6基(トップ)を保有している。大型シュレッダーは車や家電等の複合素材を単一素材に処理するが、設営は自治体の許認可制。認可取得には4年から5年かかる。新たな参入障壁は高い。

 リサイクル対象物の最大の排出圏は関東。そのエリアに20を超える営業(受け取り)拠点を配置し、家電・車の廃棄物に対応。全国でみてもシェア10%水準を占めている。リバーHDでは今後の展開を、こう公言している。「現状で80%の還元率を、100%まで高めたい。そのために不可欠なのは、リサイクル技術力の向上」。

 ではそのために、どんな策を展開しているのか。アナリストは、2点を強調している。

(1)ダスト(残渣物/不溶物orカス)の削減。年間リバーHDでも年間30億円水準の処理費がかかっている。対応策として、「樹脂選別回収ライン」の新設が予定されている。

(2)複合素材の再資源化。ミックスメタルの回収ライン等を増設し、複合素材を単一素材に選別する体制を高めている。

 (1)(2)に対し、今後3年間で60億円の投資が計画されている。

 ちなみに今6月期は「3.8%減収、2.3%の営業減益」計画で立ち上がったが、中間期開示(2月15日)と同時に「7.7%増収(305億5700万円)、101.3%営業増益(19億7300万円)」と大幅な上方修正。経済停滞下による排出分減少も「加工選別の徹底」「残渣物の減容」で・・・とするリリースを発信している。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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