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過去10年間で株価6倍、島津製作所の再考察 (下)
「新型コロナウイルス変異検出コアキット」(画像: 島津製作所の発表資料より)[写真拡大]
島津製作所は島津源蔵氏により、1875年に京都木屋町で「教育用理化学器械」製造業として興された。140年余の歴史を誇る。
【前回は】過去10年間で株価6倍、島津製作所の再考察 (上)
歴史を調べていくと「1877年に日本で初めて有人軽気球の飛揚に成功」に始まり、「日本で初めて」といった記述によく出会う。詳細は読者諸氏の調べに委ねる。
2021年3月期第3四半期の決算資料では、こんな表現に出会った。『当社の強みである液体クロマトグラフや質量分析システム』。質量分析システムは「上」で記した、フェロー:田中耕一氏のノーベル化学賞受賞の背景でもあるので読み返して欲しい。日本で初めて開発された液体クロマトグラフは、こう理解して頂きたい。「光の吸収性が乏しい化合物は、高感度分析が困難になりがち。それをクリアする為の機器」。
こうして始まった島津製作所は現在、以下の様な事業で成り立っている。
◆分析機器事業: 代表的な製品が液体クロマドグラフ(液体中の微量な成分の種類や測定。血液や尿などに含まれる代謝物や薬効成分を調べ、癌のスクリーニングや医薬品の効果確定を促す)であり、質量分析計。上下水道の水質管理環境保全に関わる機器。赤外光の反射を利用し、食品・医薬品・電子部品等に付着した超小異物を観察・解析する機器など。
◆計測機器事業: 材料試験機、非破壊検査機、疲労・耐久試験機。またクリニック向け全自動PCR検査装置や今回発表された「変異株新型コロナウイルス向け検査用試薬キット」なども範疇に入る。
◆医用機器事業: 血管撮影システムや回診用X線検査装置。後者は新型コロナウイルス禍に伴う肺炎診断用途の需要増の状況。遠隔操作方式X線透視診断装置なども含まれる。
◆航空機器事業: 防衛向け・民間航空機向け機器事業。
◆産業機器事業: 油圧機器や工業炉向け機器。また昨今の半導体需要増の中で需要増のターボ分子ポンプなどがある。
そして今、23年3月期に至る新中期計画が始まっている。掲げている数値目標は、この間の収益動向同様に地味。「売上高4000億円以上(至る20年3月期の前回中計日3.8%増)、営業利益460億円以上(同9.9%増)、売上高営業利益率11.5%(同+0・6P)」。また重要取り組み課題として「感染症対策プロジェクトの推進/治療薬開発支援」が謳われている。
更には「成長分野の拡充」として「液体クロマドグラフ・質量分析システムの拡充」を明確にし、「リカーリング事業(単体製品を売るだけでなく、その後も販売先から収益を上げるビジネスモデル)の強化」「アドバンス・ヘルスケア(認知症検査や癌治療関連)注力」「スタートアップインキュベーション立ち上げ」を標榜している。為に設備投資費用540億円、研究開発費530億円を計上している。
見守る価値「十分」な企業である。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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