ソフトバンクGに漂う暗雲 アリババに3000億円の罰金、解体の懸念も囁かれ・・

2021年4月13日 08:31

小

中

大

印刷

 2020年11月3日、中国・アリババ集団(アリババ)を構成するアント・グループが、11月5日に予定していた上場を、直前になって延期すると発表した。新規株式公開(IPO)で発生したまれな事態は、直前の10月24日に上海で開催された会合に於ける、馬雲(ジャック・マー)氏の発言が発端になったと見られている。

【こちらも】ソフトバンクGが経営方針を転換? 群戦略よりも投資会社か?

 銀行界や金融監督当局、政府の要人が出席する会合で、アリババ創業者のジャック・マー氏は、中国政府の金融政策を批判すると受け止められる発言を行い、会合参加者の怒りを買ったようだ。

 アント・グループの上場延期から2週間ほど経過した11月17日、ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は、ニューヨーク・タイムズ紙のオンライン講演会で、「最悪のケースに備えて、現金を積みあげている」と語り、既に約約800億ドル(約8兆3000億円)にも上る現金を確保していることを明かした。設定されていたかのようなタイミングだったが、アント・グループの上場延期とは関係なく、事前にスケジュール化されていた講演会での話だ。

 確保した現金の使途を具体的に言及することは避けたが、現金確保の理由は米シェアオフィス大手のウィーワークの上場が見送りとなったことでも、アント・グループの上場が延期されたことに関係することでもない。

 折から深刻さを増した新型コロナウイルスによる悪影響が、事業運営に及ぶのを未然に防止するためであり、状況次第では人工知能(AI)企業に対する投資や自社株買いという使途にも含みを持たせていた。誰が見ても驚嘆する金額を容易(に見える)に確保する底力に、安心感を増した投資家も多いことだろう。

 但し、20年9月末に30.9兆円だったSBGの保有株式価値は、アリババの株価急落を受けて12月末には26.9兆円へと減少して、再び注目を集めた。SBGの並外れた資金力の源泉がアリババ株にあることを思えば、アリババの行方に関心が集まるのは当然だろう。

 2021年4月10日、中国政府は独占禁止法に違反したとして、アリババに対して罰金182億2800万元(約3000億円)の処分を下した。独禁法違反としては中国で過去最高額の罰金となったが、金額そのものは20年3月期に1403億元の純利益を計上しているアリババにとって、致命的なものではない。懸念されるのは、当局の姿勢に軟化の兆しがないことだ。

 20年10月以来、ジャック・マー氏は1月10日にオンライン会議に参加している様子が、ビデオで公開されたのみで、公の場に姿を見せていない。

 3月15日には、中国政府がアリババ集団にメディア関連資産の処分を要求したことが明らかになっている。アリババの解体を懸念する声も出始めた。

 アント・グループの上場で利益を受ける筈だった関係者の多くを、習近平指導部が快く思っていないと伝えられるようになり、アリババは経済や経営の問題から外れてしまった感が強い。

 SBGの孫正義会長にとっては、悪夢のような思いだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

関連キーワードソフトバンク習近平独占禁止法孫正義アリババ新型コロナウイルス

関連記事