日本の宝でもある産業用ロボット業界に、「揺さぶり」をかける動きを感じる

2021年2月22日 17:33

印刷

「コロナ禍で密回避という気運の高まりもあり、注目が高まった」とも指摘される、産業用ロボット(以下、ロボット)業界。少子高齢化という時代の進捗が、需要を伸長させることが容易に推測できる。経産省傘下のNEDOではその市場規模を「2015年:1兆6000億円、20年:2兆9000億円」とし、これが35年には9兆7000億円まで拡大すると予測している。

【こちらも】半導体不足に悩む自動車業界、斜め読み

 現状で世界の4大ロボットメーカーは、「ABB(スイス、売上高約3500億円)」「ファナック(約2000億円)」「安川電機(1500億円強)」「KUKA(ドイツ、約1400億円)」とされる。日本企業の存在感が高い。

 だがアナリストの間では、こんな見方が浮上している。「4大メーカーはこの限りでは日本対欧州と映る。が、実は17年の段階で、KUKAは中国企業に買収されている。いま世界で最もロボットが稼働している国が中国であることを勘案すると、当然の成り行きだったと言える。中国は産業政策重点領域として、ロボット産業を支援している。結果、未だ小規模ではあるが現地メーカーも育ち始めている。中国はそうした小規模メーカーの増強策として、M&Aを視野に入れている。その延長上戦で、日本企業が俎上に乗ってくる公算が否定できない」。

 果たしてファナック・安川電機の他に、言葉を選ばずに言えば「中国が食指を動かしかねない」ロボット関連企業はどこなのか。当該企業にとっては迷惑な話だろうが、有力企業はどこか。川崎重工業や三菱電機も候補とする見方がなくはないが、ともに時価総額で兆を超える点を考えると現実的ではない。アナリストの口からは、こんな企業名が聞かれた。

■不二越: ベアリング・工具大手。先駆けて開発を手掛け、自動車業界で多用されている「垂直多関節ロボット」で知られる。また1981年には日本で初めて電動式大型多関節溶接ロボットを開発している。ロボット関連の事業売上高比率は約12%だが、記した様に多様な商品を保有している。

■ユーシン精機: プラスチック成形品取り出しロボットで、世界最大手の実績を残している。20年夏には、パレットなどに段ボールを積み上げる「パレタイジングロボット」を発売している。可搬質量20kg・40kgがあり、パネル画面をタッチするだけで切り替えが可能。最大1時間で420箱を積むことができる。

■芝浦機械: 射出やダイカスト等の成形機が主軸だが、多様なロボットでも実績を残している。スカラロボット(水平関節ロボット)や垂直多関節ロボットなどを、自動車・電子・医療機器メーカーなどに供給している。

 確かに、中国には魅力的ロボット関連企業と言える。「知的財産権を盾に云々」とは言うまい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事