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ドコモがNTTの完全子会社に、楽天が5G使い放題で2980円の衝撃 強まる「携帯料金」値下げの加速感!
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携帯料金の値下げへの胎動は、菅首相が官房長官時代の18年8月に札幌市で行った講演から始まった。要旨は「携帯料金は4割程度は値下げする余地がある」ということである。
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携帯料金の引き下げが進まない大きな要因として政府が問題にしていたのは、3大キャリアに競争原理が適正に働いていないという認識だった。
監督官庁である総務省は通信料金と端末代金の完全分離により、通信料金の「見える化」を計り、2年縛りや4年縛りなどの期間拘束の撤廃と、解約違約金の大幅減額を実現して、消費者がキャリアの変更を容易にする施策を進めてきた。
楽天がキャリアに参入出来た要因の1つには、ぬるま湯の3大キャリアの枠組みに刺激を与えて、競争を活発化させようという思惑があった筈だ。
消費者が弾力的にキャリアを選択する環境は改善したが、相変わらず競争原理は働かず携帯料金は高止まりのまま動かない。消費者が通信会社の変更を始める程の魅力とはなっていなかったようだ。
鳴り物入りの低料金でキャリアに参入し競争環境を構築する筈だった楽天が、基地局の設置に手間取って半年間の参入遅延を招いたことも想定外であった。20年4月、楽天はようやく月額2980円という破格の単一料金でキャリアに参入したが、基地局不足によって通信エリアが制約されるハンディと、新型コロナウイルスの感染拡大時期であった不運にも祟られてしまい、大きな勢いを生み出すには至っていない。
もう打つ手は尽きたかと思われた時期に菅義偉新首相が重点施策の1つとして、再び「携帯料金の引き下げ」を打ち出した意味合いは大きい。
9月29日、NTTは上場子会社であるNTTドコモの完全子会社化を発表した。NTTとドコモが開催したオンライン共同記者会見で携帯料金について聞かれたNTTの澤田社長は、「NTTが政府の出資を受けていることと関係なく、競争に打ち勝つために出来ることをやって行く。完全子会社となるドコモには余裕が出て来るので、顧客の要望に応えるための携帯料金の引き下げも検討している」と答えた。
この発言は、3大キャリアのドコモ、KDDI、ソフトバンクが組むスクラムに軋みが生じ始めたことを示している。もちろん、携帯料金を引き下げるためにドコモを完全子会社化する訳ではないので、過剰な期待が禁物なことは言うまでもない。
だが、今でも政府と地公体はNTTの32%を超える株式を保有する大株主だ。菅首相が言っていることは大株主が言っていることでもある。落し所にどんな金額を想定しているのかが注目される。
翌30日、楽天は「データ通信と通話が使い放題で月額2980円」の料金体系に第5世代携帯電話(5G)を含めることを発表した。既に楽天モバイル契約者の希望者に対する先行切り替えが始まっている。5Gの月額料金が3大キャリアの全てで1万円近い金額に設定されているため、圧倒的な安価ということになる。楽天のネックである基地局問題に頓着しない消費者にとっては、願ってもない話だろう。
いよいよ、「携帯料金引き下げ」の動きが本格化しつつあるようだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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