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エア・ウォーター、成長加速により売上収益1兆円へ挑む
エア・ウォーターは3月10日、エアゾール製品や化粧品(液体化粧品)の受託製造を強化するため、100%子会社のエア・ウォーター・ゾルが茨城県小美玉市で建設を進めていた新研究所が完成し、稼働を開始したと発表した。
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エア・ウォーター・ゾルは、化粧品や医薬部外品、家庭用品、塗料・工業・自動車用品など暮らしや産業に欠かせないエアゾール製品の製造・販売を行い、年間生産量では国内3位につる。今回の研究所開設により、より高品質・高付加価値な化粧品の受託製造体制の確立を目指す。
エア・ウォーターは、1929年に北海道で創業の「ほくさん」、1933年に大阪で創業の「大同酸素」、1962年に和歌山の住友金属工業内で創業の「共同酸素」が順次合併し2000年に設立。積極的なM&Aで産業基盤を強化し、事業領域を広げてきた。
2019年3月期の売上高は8,015億円。事業別の構成比は、酸素、窒素、アルゴンなど産業ガスが22.0%、医療用ガス、病院設備・機器、病院サービスなど医療が22.0%、冷凍食品、飲料、スイーツ、生鮮野菜の農業・食品が17.0%。以下、キノン系製品、電子回路材料など機能化学品のケミカルが9.4%、LPガス、灯油、LNGなどエネルギーが6.6%、高圧ガス輸送、食品物流、医療・環境物流などの物流が6.0%、情報電子材料、エアゾール受託、塩、マグネシアの海水を含むその他が17.0%と多彩な事業を展開するエア・ウォーターの動きを見ていこう。
■前期(2019年3月期)実績と今期見通し
前期は各事業が順調に伸び、売上高は8,015億円(前年比6.4%増)、経常利益は470億円(同5.1%増)であった。
今期から国際会計基準(IFRS)ベースでの基準に移行する。
今期(2020年3月期)第3四半期累計(4-12月)売上収益は5,921億円(前年同期比10.1%増)、営業利益388億円(同23.4%増)の中、今期売上収益8,300億円(前年比11.8%増)、営業利益480億円(同12.2%増)を見込んでいる。
■中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)による推進戦略
持続的成長により、2022年3月期売上収益1兆円(対前期比34.8%増)、営業利益600億円(同40.6%増)を目指して、次の戦略を推進する。
●1. M&Aの推進、既存事業の成長、製品開発力の強化、発電事業の開始により成長加速
・M&A投資700億円、戦略投資1,300億円、通常投資400億円で期中合計2,400億円の積極投資継続。
・前期末263社のグループ会社を重複機能見直しにより期末150社へ再編。
・全国8社の地域事業会社でM&Aを活用した地域密着の成長戦略。
・研究所機能の充実による製品開発力強化。
●2.事業別の推進
・産業ガス売上収益2,350億円、営業利益210億円(2022年3月期、以下同): ガス供給拠点拡充、海外事業の拡大。
・ケミカル売上収益360億円、営業利益12億円: M&Aの活用とキノン系製品の増強。
・医療売上収益2,100億円、営業利益130億円: 高度医療などに対応した総合医療サービス拡充、8K内視鏡、再生医療など新規事業の創出。
・エネルギー売上収益740億円、営業利益44億円: 民生用LPガスの直売強化と産業用LNG拡大。
・農業と食品売上収益1,700億円、営業利益60億円: 原料野菜の安定調達力強化、加工工場建設による中食ビジネス本格参入、飲料事業基盤強化。
・物流売上収益660億円、営業利益30億円: 低温物流事業とネットワークの拡大、グループの物流一元化推進。
・海水売上収益500億円、営業利益33億円: 環境事業拡大、海水総合研究所の設立。
・全社調整その他売上収益1,590億円、営業利益81億円: エアゾール事業と海外エンジニアリング事業拡大、発電事業の開始。
革新=イノベーションの実行により持続的成長を目指すエア・ウォーターの動きに注目したい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る)
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