カルロス・ゴーン被告が、弘中惇一郎弁護士と究極の絶縁! (下)

2020年1月3日 10:43

印刷

 カルロス・ゴーン被告の逃亡に関して、現在伝えられていることろを大略すると、ゴーン被告の滞在先を訪れたクリスマスディナーの音楽隊が、楽器箱の中にゴーン被告を隠して連れ出し、民間警備会社に類似したグループの支援を受けながら、関西国際空港からプライベートジェット機でトルコに出国した。

【前回は】カルロス・ゴーン被告が、弘中惇一郎弁護士と究極の絶縁! (上)

 トルコからはフランスのパスポートを使い、キャロル夫人と共にレバノンに入国。現地紙は「合法的にレバノン市民として入国した。アウン大統領と面会した」と伝えている。

 ゴーン被告は幼少期から高校までをレバノンで過ごし、レバノンでは立志伝中の国民的英雄として政府の信頼も厚いようだ。ゴーン被告が東京拘置所に拘留中には、レバノン大使館関係者が再三面会に訪問し、対外的にも「ゴーン被告は無実だ」とアピールしていた。レバノンの外務・移民相が駐レバノンの日本大使に長期拘留への懸念を伝えたこともあった。(以上は、未確認事項を含む)

 上記のような経緯が背景にあった上に、日本とレバノンとの間に「犯罪人引き渡し条約」が締結されていないことを考えると、身柄の引き渡しが実現する可能性はほとんどない。

 逃亡ほう助に関しては、逃亡に使用されたプライベートジェット機を特定することは容易だろうし、民間警備会社のような組織や背後関係も次第に明らかになる。登場人物が相当の数に上ると見られるため、ゴーン被告の身代わりのような輩が多数逮捕の憂き目を見ることになる。

 刑事訴訟法では被告人の権利を保護するため、被告人が法廷へ出席することが開廷の原則とされている。ゴーン被告のような逃亡に対しても、「被告人の権利を保護」するために被告人自身が出廷しなければ開廷されないという不条理は適用される。結果として、公判廷が開かれることはなく、事実上刑事責任の追及は停止された状態が継続する。

 同時期に逮捕された日産の元代表取締役であるグレッグ・ケリー被告の公判は順調に推移するだろうし、今回の逃亡ほう助罪で検挙される輩の裁判もいずれ開始される。足りないのは首魁のゴーン被告なのだから、締まりのない裁判になる懸念は高い。

 但し、ゴーン被告は国籍を有し「友好的な法的環境」が担保されているレバノンで裁判を受け、身の潔白を証明したいと考えているようだ。アウェーよりもホームでの試合を望むという身勝手な発想だ。

 今後は、レバノンの空の下から国際社会に向かって身の潔白を強く主張すると共に、「レバノンで裁判を受ける用意があるのに、日本が応じないのは不当だ!」というアピールを行う可能性がある。海外で起こした事件の裁判を母国で求める被告が続出したら、司法制度はおそらく崩壊する。

 作業服を着せられて東京拘置所から保釈されたゴーン被告が、「名声に泥を塗った」と激怒し、発案した弁護士が謝罪に追い込まれた珍事があったが、今回の逃亡劇の卑しさは優にそれを上回る。

 19年5月に始まった公判前整理手続きで、検察側が集めた証拠が弁護側に開示され争点を絞り込む作業が行われていた。ゴーン被告が勝ち目のないことを察知してレバノンへの逃亡を図った考えるのが自然であり、被告自身が逃亡先のレバノンで発表した声明の中で、「有罪が予測される日本の不正な司法システムの下でとらわれの身になることはもうない」と述べている。

 もう「無罪請負人」を自称する弘中惇一郎弁護士がゴーン被告と接触することはない。自力で裁判を逃れて自由を獲得したゴーン被告は、弘中弁護士と弁護費用の精算をすることもなくなった。浅ましい犯罪の嫌疑を残したまま、猛々しく身勝手な屁理屈を命ある限り世界中に撒き散らすことになるのだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事