「チコちゃんに叱られる!」のはNHKか、日本郵政か? (2-1)

2019年10月10日 19:50

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 NHKの人気番組「チコちゃんに叱られる!」は、永遠の5歳児で何でも知っているという設定の「チコちゃん」という女の子が、当たり前すぎて誰も疑問を持たないような質問を出演者にし、答えられないと「ボーっと生きてんじゃね-よ!」と決め台詞を繰り出すバラエティ番組だ。

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 日本郵政の鈴木康雄上級副社長は、3日に国会内で行われた野党合同ヒアリング後の記者会見で、18年7月にNHKのディレクターから、「取材を受けてくれるなら(交換条件として情報提供を呼びかける)動画を消す」と言われたと主張した上で、NHKの取材方法を「・・・それじゃ暴力団と一緒でしょ。・・・ばかじゃないの」と発言している。

 翌4日に開催された2回目の合同ヒアリングでも、動画を消すための条件提示があったことと、「暴力団と一緒でしょ。・・・ばかじゃないの」と自分が発言したことを再度認めた。

 チコちゃんの「ボーっと生きてんじゃね-よ!」も強烈なインパクトを持つ言葉だが、愛らしいキャラクターが奏功して何故かほのぼのとできるから不思議だが、鈴木上級副社長の発言はいただけない。

 NHKのどこが暴力団と一緒なのか説得力のある説明がないばかりか、発言している口調が相当威圧的で、どっちが暴力団なのかと思わせる響きがある。

 かんぽ生命保険で行われていた不正販売問題が、NHKへ飛び火してさらにこじれて火勢を増そうとしている。

 発端は、かんぽ生命保険で行われていた不適切販売に焦点を当てた「クローズアップ現代+」だった。18年4月の番組放映後に日本郵政グループからの抗議を受けたNHKが、計画していた続編の放送を延期していたことが9月にスクープとして報じられた。

 当時NHKには、初回番組を放送した後で、情報提供を求める動画をツイッターに投稿して、新しい情報を集めた上で続編を放送する構想があった。

 この動画が、現場の実態に目をつむっているくせに、プライド高い日本郵政グループ幹部の気に障ったようだ。「犯罪的な営業活動を、組織ぐるみでやっている印象を与える」などと、NHKに抗議文を送り動画の削除を求めた。

 日本郵政グループの幹部が、当該番組を視聴した際に不快と感じたのは当然だ。自分が任されて経営に当たっている企業が、犯罪的な営業活動を組織ぐるみでやっていると言われて、動揺しない方がおかしい。

 当然、まず社内調査を行い、放送内容の信憑性を確認して、不当な報道であると確認できた場合に抗議に及ぶのがセオリーだ。ところが日本郵政では調査も行わず、NHKに対する抗議を行った。

NHKは番組の幹部が事情を説明する中で「番組制作と経営は分離しており、会長は番組制作に関与していない」と発言したようだ。日本郵政は、「放送法で番組の最終的な責任は会長にある。NHKでは全くガバナンスが利いていない」と問題をすり替えて、上田良一会長宛てに釈明を求める文書を18年8月に送付した。

この時点で動画は削除され、続編の放送も一時的に延期された。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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