台風15号被害、未だ復旧せず 見直されるべき、災害に強い町づくり

2019年9月22日 11:29

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記事提供元:エコノミックニュース

大きな被害を出した千葉県内では、送電塔2本と電柱84本が倒壊した他、約2000本にのぼる電柱の損傷が確認されており、約56万3300戸で停電が発生。3万件近くの世帯で断水も発生した

大きな被害を出した千葉県内では、送電塔2本と電柱84本が倒壊した他、約2000本にのぼる電柱の損傷が確認されており、約56万3300戸で停電が発生。3万件近くの世帯で断水も発生した[写真拡大]

9月9日午前5時頃に千葉県千葉市付近に上陸し、関東全域に甚大な被害をもたらした台風15号。9月17 日(火)午前7時に総務省消防庁の災害対策室が発表した「令和元年台風第15号に よる被害及び消防機関等の対応状況(第14報)」によると、東京都で死者1名、埼玉県と千葉県、神奈川県、茨城県での重傷者10人を含む、1都6県で145人が重軽傷を負った。しかし、被災地各地では台風通過後も、この影響による停電や断水などによって熱中症とみられる症状が数多く報告されている上、復旧作業中の事故やケガなども多発しているような状況で、一週間以上経った今も、被害は広がるばかりだ。とくに大きな被害を出した千葉県内では、送電塔2本と電柱84本が倒壊した他、約2000本にのぼる電柱の損傷が確認されており、約56万3300戸で停電が発生。3万件近くの世帯で断水も発生した。未だ完全復旧には至っていない。

 また、今回の台風では、東京電力〈9501〉や各自治体などがホームページやTwitter等で情報を発信してはいるものの、被災地ではインターネット回線や固定電はをはじめ、NTTドコモ〈9437〉、KDDI〈9433〉、ソフトバンク〈9434〉の携帯3大キャリアでもことごとく通信障害が発生し、情報収集や確認もできない状況が問題となった。そもそも停電下ではスマホの充電もままならない。電池が切れた時点で、情報から遮断されてしまうという恐怖が被災者たちを襲った。さらに、コンビニやガソリンスタンドにも大きな被害が出たため、営業どころか商品の確保もままならず、被災地に不安が拡がることとなった。

 関東上陸時の勢力では過去最強規模とはいえ、今回の台風では都市部の風害に対する防災機能の脆弱さが浮き彫りになってしまったようだ。とくに、ひとたび電気が途絶えてしまうと電気製品だけでなく、水道からの給水もままならない。これが真夏だったらと考えると恐ろしい。さらに被害は拡大してしまっていただろう。自然の力は強大で、近年は異常気象の影響もあって、想像をはるかに超えてくる災害が多発しているが、二次的被害を少しでも抑えるためには、これまで以上の防災意識と災害に対する備えが必要なのではないだろうか。

 折しも、9月13日に埼玉県久喜市の大型ショッピングモール内に新規オープンした総合住宅展示場「モラージュ菖蒲ハウジングステージ」で、株式会社アキュラホームグループが日本で初めての試みとなる、もしもの時「災害時支援施設」となる住宅展示場を公開し、来場者からの関心を集めていた。

 同社では、日産自動車株式会社〈7201〉 及び日産プリンス埼玉販売株式会社と災害連携協定を 締結し、蓄電量40kwhの大容量の蓄電能力のある電気自動車「リーフ」をモデルハウスに装備。災害時は10kwhを展示場で運用し、残りを携帯電話の充電にあてることを想定している。1台あたり30分の充電で、約6000人以上の充電がまかなえるという。もちろん、太陽光 を搭載しているので持続的な運用も可能だ。

 また、アキュラホームでは、以前より災害時の非常用水を確保する目的でも、住宅に井戸の設置を推奨しており、同展示場でも手漕ぎポンプを使用することで、停電時でもトイレ用水として井戸水を活用できる仕組みになっている。

 他にも、展示場内には災害時用備蓄品倉庫が設けられており、飲料水や防寒グッズ、使い捨てカイロなどの備蓄品を災害発生時に無料提供することや、一時避難所としての展示場開放、テレビによる災害情報の提供、一時帰宅困難者へのPC 利用無料開放なども想定しており、平時は近隣避難所マップの配布なども実施している。

 今回の災害では、近隣の避難所が機能していなかったり、機能していても住民がその場所を把握していなかったというようなことも多く見受けられたようだ。この住宅展示場の試みが注目を集め、このような施設や場所が増えれば、災害発生時には心強い。また、避難所の地図やハザードマップが役所だけでなく、もっと身近な様々な場所で入手できる環境が増えてくれば、二次災害などの抑制にもつながるだろう。

 今回の台風被害を受けた被災地の一日も早い復興を願い、復興支援を行うことはもちろん何よりも大切だが、それと並行して、今回の災害から学び、もしも同じような、またそれ以上の災害襲い掛かってきたときに適切に対処できるよう、もう一度、わが町の災害に対する強さを見直したいものだ。(編集担当:藤原伊織)

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