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「raining cats and dogs」とは? 有名すぎる英語イディオムの残念な真実
「It's raining cats and dogs」というフレーズを、聞いたことがあるだろうか。おそらく、英語を少しでも学んだことがある人なら、一度は目にしたことがあるはずだ。
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「土砂降りの雨」を意味する表現で、英語学習系のサイトでは「ネイティブが日常的に使う慣用句」として定番の扱いを受けている。
これまで本コラムにおいて、猫にまつわる英語イディオムを多数取り上げてきたが、実はこの表現だけは意図的に避けてきた。というのも、知名度こそ非常に高い表現だが、ネイティブが実際の会話でこのような表現を使うことはほとんどないからだ。
ネイティブに「大雨のときに何と言うか」と聞けば、おそらく「It's pouring(土砂降りだ)」や、イギリス英語なら「It's bucketing down(バケツをひっくり返したように降っている)」といった表現が返ってくるだろう。
もちろんネイティブも「raining cats and dogs」という表現を知ってはいる。しかし実際の会話で、大真面目に使う人はほぼいない。
ところが日本語のコンテンツを検索すると、今もこの表現がネイティブがよく使うイディオムとして紹介されているケースが少なくない。そこで今回はこの表現を正面から取り上げ、その実態と語源を掘り下げてみたいと思う。
■なぜ猫と犬が降るのか
語源については諸説あるが、どれも決定的な証拠を欠いている。
最も広く知られているのが、藁葺き屋根に関する説だ。16世紀のヨーロッパでは農家の屋根が藁葺きで、猫や犬がそこに潜り込んで雨宿りし、激しい雨が降ると滑り落ちてきたというものだ。しかしこれは、現在では信憑性の低い俗説とみなされている。
もう少し説得力があるのが、17世紀ロンドンの排水設備に関連した説だ。当時の都市部は排水インフラが未整備で、大雨のたびに路地に汚水が氾濫し、溝に溜まっていた動物の死骸が流れ出すことがあった。
詩人ジョナサン・スウィフトが1710年に書いた詩、『Description of a City Shower(街の驟雨の情景)』には、洪水とともに死んだ猫や犬が路上を流れていく情景が描かれている。この詩が由来だという確証はないが、背景理解の上では興味深い文献だ。
他にもさまざまな説があるが、どれも確証はない。実際には、単に荒唐無稽なユーモアとして広まっていっただけかもしれない。
■世界の「土砂降り」表現
極端な雨を極端な比喩で表現しようとする発想は、英語に限ったことではない。
フランス語では「雌牛がおしっこをするように降る(il pleut comme vache qui pisse)」、スウェーデン語では「小悪魔が降る(det regnar smådjävlar)」、ノルウェー語では「魔女が降る(det regner trollkjerringer)」と言う。
またギリシア語では、「椅子の脚が降る(βρέχει καρεκλοπόδαρα)」、ドイツ語では「若い犬が降る(es regnet junge Hunde)」という表現もある。
日本語の「バケツをひっくり返したような雨」に比べて、どれも荒唐無稽な比喩だ。「raining cats and dogs」が有名なのも、まさにこの荒唐無稽さにあり、その強烈なイメージが記憶に残りやすいのだろう。(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)
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