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脳神経疾患に関与するタンパク質の働きを特定 創薬に貢献へ 東北大ら
患者から発見された脳神経疾患に関与するタンパク質「ATP6AP2」の遺伝子変異。(写真:東北大の発表資料より)[写真拡大]
東北大学は11日、遺伝子変異に由来する新生児の脳委縮が発症する仕組みを、一部明らかにしたと発表した。脳神経疾患など、治療法の開発に役立つとしている。
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■高齢化社会で問題化する脳神経疾患
65歳以上の高齢者の人口は1950年以降増加し、2018年には約3,500万人と、総人口の約28%を占める高齢化社会に日本は陥っている。高齢化社会になるにつれ、認知症患者数も増加の一途を辿る。内閣府の発表によると、2020年には高齢者の認知症患者が600万人、2050年には800万人から1,000万人の範囲で推移すると予想される。
脳神経疾患は、脳梗塞やギランバレー症候群、パーキンソン病など多岐にわたり、その中に、脳や脊髄にある神経細胞の特定の部位が障害を受ける「神経変性疾患」が存在する。認知症やパーキンソン病等の疾患の原因は未だに判明していない。
■創薬開発につながるタンパク質を特定
近年、病気の原因を特定するために、遺伝子を調べる研究が盛んに実施されている。遺伝子を形作るDNAの配列が正常とは異なる「遺伝子変異」が発生し、病気としての症状を示すことがあるためだ。
東北医科薬科大学、東北大学、岡山大学などから構成される研究グループは今回、タンパク質「ATP6AP2」に着目した。血圧の調節や組織の障害に深く関与するATP6AP2だが、このタンパク質に遺伝子変異をもつ家系から、てんかんやパーキンソン病等の脳神経疾患の発症が報告されるなど、脳神経疾患との関連が疑われている。
研究グループは、知的障害(精神遅滞)と出生後の神経変性に伴う脳委縮をもつ患者から、遺伝子変異したATP6AP2の存在を突き止め、それを採取した。その後再生医療等で用いられるiPS細胞を作製し、神経細胞に分化させた結果、異常な神経細胞の分化や細胞死が起こっていることが判明した。
研究グループはさらにATP6AP2を精査するために、マウスを使った実験を実施。人為的に遺伝子変異したATP6AP2をもつマウスを作成し観察した結果、多数の神経が集まる中枢神経を生み出す幹細胞で、分化の障害や細胞死が観察された。研究グループによると、「V-ATPase」と呼ばれる、細胞膜に存在する膜内のpHを調節するタンパク質がうまく機能しないために、異常な細胞の分化や細胞死が起きているのだという。
近年、ゲノム創薬に代表される、病気に関与する遺伝子やタンパク質を特定し、これを標的に創薬する試みが盛んに実施されている。「V-ATPase」もまた標的タンパク質に分類される。脳神経疾患の研究だけでなく、V-ATPaseに関与する病気の理解や治療法開発の進展につながるとだろうと、研究グループは期待を寄せている。
研究の成果は、国際専門誌The Journal of Clinical Investigationにて5月1日付で掲載された。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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