これで良いのか?日産・ノートe-POWER 1ペダル操作は回生充電のための苦肉の策

2019年2月13日 16:55

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日産ノート・e-POWER(画像: 日産自動車の発表資料より)

日産ノート・e-POWER(画像: 日産自動車の発表資料より)[写真拡大]

 日産・ノートe-POWERは、レンジエクステンダーを造って見せてくれた日産のヒット作だ。しかし、「常識を変えたからナンバーワン」との解釈には納得がいかない。燃費で言えば、「トヨタ方式」、つまり「電気式CVT」を名乗るエンジンとモーターのパワーの比率を自動的に最適に保つ方式が、一番成績が良い。一方、「ホンダ方式」、つまり80km/h付近まではレンジエクステンダーで、それ以上の高速領域でエンジン直結とする方式では、どうしてもトヨタ方式を燃費で抜けない。ホンダは、モーターで走る領域が広がれば燃費でトヨタを抜けると考えているようだが、その見込みがないので、他の世界の各車もHVに参戦しなかったのではないだろうか?

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 日産・ノートe-POWERが「1ペダル方式」を取った理由の一つに、バッテリーの容量を押さえたい狙いがある。バッテリーは、同じ重量のガソリンに比べてエネルギーを持ち運べる量が圧倒的に少ない。つまり、ガソリン車と同じ距離を走るには、現在のバッテリーではかなり巨大になってしまう。そこで、出来るだけ軽量にするためには、回生ブレーキをフルに使うことが必要なのだ。

 日産・ノートe-POWERは、箱根山のふもとで80%の充電量があったとしても、頂上までフルスロットルで駆け抜けようとすると、途中で充電が間に合わなくなってしまう。もう少しバッテリーを大きくしたいものだ。しかし、その分クルマが重くなってしまうため制限が出来てしまっている。新しい「日産・リーフe+」を見ても、標準車よりも150kgも重くなってしまった。純粋EVで実用的な航続距離300km以上にするためには仕方がないのだ。しかし、「全固体電池」のような性能向上した電池が実用化されれば、ほとんど現在のガソリンエンジン並みの実用性は確保できる。逆に言えば、「1ペダル操作」の必要性がなくなってしまうだろう。

 一方、現在のトヨタ・プリウスなどのHVのブレーキングは、これまでのガソリンエンジン車のエンジンブレーキ操作フィーリングと同じにする努力をしてきた。つまり、HV程度のモーター走行距離では、無理して日産・ノートe-POWERの1ペダルフィーリングにする必要がないのだ。日産・ノートe-POWERでは、1充電の航続距離を出来るだけ延ばすため、回生充電の効率を上げたのだ。ブレーキペダルを離した時、油圧ブレーキと合わせて、常に0.2Gのマイナス加速度を安定して出せるように協調ブレーキを調整し、1ペダル操作を「新しいフィーリング」とした。それが「商品力」として、見事にヒットしたのだ。だから、「常識を超えた」と言うには技術的には先進性がなく、「苦肉の策」がヒットしたと言えるのだ。

 しかし、「クルマの商品価値」が、この程度の技術でも「フィーリング」で評価される時代になったことが驚きだ。確かに、技術的には「調整」の違い程度なのだが、「常識を超えたフィーリング」であることは事実で、それが「商品力として高評価」になったことはなんとも言えない気持ちだ。充電のためにいつでも回生ブレーキがかかってしまうことを、日産は逆に宣伝ポイントとしたことが成功したのだ。見事な宣伝マンである。

 実際に、日産・ノートe-POWERやリーフにも試乗してみて1ペダル操作を試したが、確かに慣れると便利に使えるであろうことは感じた。しかし、どちらの車両も安定した走り、つまり直進安定性、旋回安定性、加速・減速の安定性については、ここでは詳しくは書かないが、かなり改良の余地がある車両と感じた。低価格車両であっても、スバル・インプレッサなどは優れた走行性能を示す競合メーカーである。そこで、日産が「回生ブレーキを商品力」としたことは見事だが、もう少し自動車としての基礎機能をしっかりと造り上げてほしいものだ。かつての「技術のニッサン」になるためには、原点に戻ってほしいと感じている。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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