トヨタ・カローラスポーツのショックを造るKYB、ビル免震・制振装置の検査データ改ざん

2018年10月18日 10:17

印刷

 トヨタ・新型クラウン、トヨタ・新型カローラスポーツのショックアブソーバーを造るKYBが、「ビルなどの免震・制振装置」の検査データ改ざんを行っていたことを公表した。KYBは自動車のショックアブソーバー生産では世界第2位と見られ、4,000憶円弱の売上高と150億円強の純利益を、2018年3月時点決算で出している大手優良企業だ。

【こちらも】スバル、9.28追加調査の結果発表(1) スバルには「自動車メーカーの体裁」はない

 国土交通省は16日、油圧機器メーカーKYB(中島康輔社長)と子会社のカヤバシステムマシナリー(広門茂喜社長)が、ビルやマンションなどの建物で地震の免震や制振オイルダンパーについて、検査データを改ざんしていたことを発表した。全国のマンションやビル、都庁舎など986件が改ざんした装置を取り付けている疑いが出てきた。

 KYBは1919年創業の老舗だ。自動車向けショックアブソーバーで世界2位。今後、自動車用オイルダンパーについても疑いが持たれることのないことを祈るばかりだ。今回、不正が発表されたのは建物用、免振・制振オイルダンパーだが、この部門では国内トップシェアを誇る。東京都庁でも工事が進められているところで、大阪府庁舎でも使われている。また、スカイツリーにも使われているという。今後、回収・取り換えなど対策が急がれるようだが、全国のどの建物で、データ改ざんされた製品を使っているのかは、ユーザーの承認を得ないと発表できない模様だ。

 KYBの創業は古く、ゼロ戦のオレオ主脚も作っていたという。従業員1万5千人の心境はいかなるものであろうか?

 データ改ざんは出荷本数の7割に及ぶと言われるが、データが改ざんされていても「震度7の地震にも耐える」とKYBは語っている。それが根拠のあるものだとすると、また「規格が厳しすぎる」となるが、ことはそれほど単純ではあるまい。「コストダウン要請が厳しく、人手不足であった」と言い訳が聞こえてくるが、経営者の認識がまた問われることとなろう。この事件については引き続き注目して、真実の原因を掴む努力をしていかねばなるまい。

 かつてアメリカファンドであるゴールドマン・サックスが出資したアコーディア・ゴルフが経営するゴルフ場があるが、これまでの経緯を見ていると、品質に関する現代企業経営陣による極端な利益追求の認識などがあり、今回の件も事の真実が見えているように感じる。自動車産業の品質に関する認識が、株主から欠如してしまわないことを願っている。なんと言っても、株主の経営陣に対する影響力は絶対的なものであり、その認識が企業風土を作ってしまうことから逃れることはできないからだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事