【カイゼンでトヨタは改革が出来ない?(下)】「下請け」は資金効率を上げる

2017年10月2日 07:40

印刷

■カイゼン出来る組織でなければ改革は出来ない。

 実際に製造現場の組織を率いて改革を行おうとしたとき、それまでカイゼンなどしてきていない組織では動きも取れない。組織は人間そのもので、その意識が言動を決める。日々「カイゼン」を重ねて当然であるとしていないと、改革のような大きな動きに反応することすらできない。

【前回は】【カイゼンでトヨタは改革が出来ない?(中)】バーチャル・シミュレーションの欠落?

 「改革」は「カイゼン」より大きな動きで、細かい改善の動きをしている組織は、大きく動き出せないと考えている経済学者が多いのであろう。これは「勉強不足」「経験不足」「勘違い」「間違い」と言わせていただく。日々「カイゼン」作業をしていない人は「変革」に同意しない。改革のような目に見えて大きな変化を理解できはしない。「カイゼン」の意識のない「問題意識を持って日常を過ごしていない人々」にとっては、改革などあり得ないことだ。

 「カイゼン」が「改革」の邪魔となるような動きは、現在起きてはいない。エンジン車からEVへの変革が、これまでの変革より大きな動きとしても「カイゼン」の意識がないと、ついてはいけない。自分で「カイゼン」と「改革」を指揮してみればその意味が解る。組織員の意識改革から行わねば「改革」はおろか「カイゼン」も行えない。「カイゼン」を組織内で起動させるときの苦労を経験すれば、「意識改革」が全ての始まりであることは身に染みて分る。

■「下請け」は「サプライヤーに対するグローバル発注」よりムダが多い?

 「下請け」と「グローバル発注」との差は何か?「あうんの呼吸で下請けが動く」のがメリットと考えるのは、とんでもない間違いだ。下請けを使うメリットは「資金効率が良い」のだ。そして「独自技術」を開発することで「絶対の商品価値」を得ることが出来る。それは生産技術の場合もあるのだ。

 さらに言及しておくと、「投資効率」と「資金効率」を混同して本来の「ビジネスモデル」を壊してしまう誤りも見受けられる。事例とすればSONYであろう。

【参考】【トヨタ、東北産業振興に動く】日本経済の正念場、グローバル発注と系列の勝負


 簡単に言えば「グローバル発注」であると「ロット発注」となることが大多数となる。船便でありコンテナで運ぶのだ。例えば、完成車の輸出の場面を考えると、日本から船便で送るとき、港に大量の完成車をストックしなければならない。少なくとも船1隻分は必要だ。在庫が完成車なので、その在庫金額はいったいくらになるのであろう。それだけではない。その駐車場の面積は巨大なものだ。また駐車を管理する人数など経費がかかる。積み込み、積み下ろしの手間暇、コストも巨大にかかる。これなら多少人件費が高くても、現地生産が良いと感じないだろうか?これが仕掛在庫で、製造工程で工程間に掛かる在庫を局限しているのは、この資金を減らすためだ。

 フォード方式、つまりロット生産に比較して「トヨタの看板方式」は数千倍の資金効率と考えてよい。それが、生産方式でせっかく仕掛在庫を減らしているのに、完成車の在庫は努力を無駄にしてしまう。「順序生産」など夢のまた夢だ。それを、今度は材料仕入れ段階の入り口側で、無駄な資金を生んでしまうのがグローバル発注の無駄だ。少しぐらい部品単価が安くとも、そのロット管理の費用で飛んでしまう。カルロス・ゴーン社長が知らない訳はない。この話を進めると「文明論」に行きつく「日本人の気質」を、欧米人と比較しながら論じなければならないだろう。

 「下請けを使うべきか」「グローバル発注とすべきか」の検討はケースバイケースであろう。しかし、下請け体制を作り、維持することは容易ではない。確かに競争がないとコストダウン努力は続かない。開発資金回収には下請けは時間がかかる。それでも独自の生産技術がコストを決める。

 「カイゼン」が「改革」の邪魔をしていると考える根拠はない。製造現場を知らない人の間違いだ。それよりも、どのように「改革」すべきかを考えろ!実行するのは「カイゼン」チームだ!いや「改革」の方向性すら「カイゼンチーム」が作り出すことも考えられる。

■トヨタの弱点はディーラー組織?

 トヨタが衰退するとすれば、「販売」のディーラー組織の在り方からであろうと考えている。ディーラー組織は「カイゼン」チームに入っていないからだ。IoTによる整備や販売が始まったとき、メーカーは見捨てる可能性もある。この販売・整備組織の再編が問題である。テスラの行き方も参考になる。これはまた別に論じよう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事