味の素、中期計画で地域・事業ポートフォリオを強化

2017年9月18日 09:15

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ミャンマーで「味の素」を生産する「ミャンマー味の素食品社」の外観。(写真: 味の素の発表資料より)

ミャンマーで「味の素」を生産する「ミャンマー味の素食品社」の外観。(写真: 味の素の発表資料より)[写真拡大]

 味の素は食品業界で世界のトップ10入りを果たすため、中期計画で食品の地域ポートフォリオ強化を目指しており、9月14日、ミャンマーに11億円をかけて生産工場を建設すると発表した。ミャンマーは日本の人口の4割にあたる約5,100万人の人口を抱え、2016年のGDP成長率6.3%の急成長国である。

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 味の素は「滋養に富める粗食を美味ならしめて、おいしく食べて健康づくり」の志を立てた鈴木三郎助によって1908年に創業された。以後アミノ酸を起点として、調味料、加工食品、甘味料、飲料、健康食品、化粧品など様々な商品を開発し、世界各地に展開してきた。

 味の素の中期計画を見通した動きを見てみよう。

■前期(2017年3月期)実績と今期(2018年3月期)見通し
 前期実績は売上高1兆912億円(前年比95%)で、事業利益は969億円(同99%)であった。海外売上高比率54%の中、前年に比較して急速な円高(1ドル120.2→108.3円、1ユーロ132.6→118.7円)の影響により、売上高で613億円、事業利益で65億円減少しており、実質は増収増益であった。

 来期見通しは前期と同じ為替水準の前提で、売上高1兆1,870億円(同109%)で、事業利益は1,020億円(同105%)を見込んでいる。

 なお、今回からIFRS(国際財務報告基準)を適用しており、事業利益は事業の業績や将来の見通しがより把握できるように持ち分法の損益を加えるなど、営業利益より若干異なる数字となっている。

■中期計画(2017年3月期~2019年3月期)の進め方
 中期計画では1ドル100円、1ユーロ110円と為替レートは保守的に見て、2019年3月期に売上高1兆3,112億円(対前期比120%)、事業利益1,240億円(同128%)を目指す。そのため食を通じて社会づくりに貢献する理念に基づき次の戦略を推進する。

 1.コモディティ事業から独自性のあるスペシャリティへの転換
 動物栄養食品では高機能配合品の強化、調味料・甘味料の外食・外販ルート強化、製薬カスタマーサービスでは中高分子事業の比率を高める。

 2.生産・物流・営業の食品バリューチェーンの構築
 関係会社一体での流通体制と物流は他社との共同で物流改革を進める。

 3.食品の地域ポートフォリオの強化
 世界各地に適合した商品開発、生産・販売体制の構築を行う。

 4.新たな事業ポートフォリオの構築
 アミノサイエンス事業で独自性の確保、バイオ医療分野の強化、中食・外食・加工食品向け事業の拡大を進める。

 食生活の改善、健康的な生活習慣など、地道に浸透していくやり方で事業を進める味の素の動きを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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