関連記事
富士フイルム、戦略的M&A投資で成長を加速 新中期計画を発表
(c) 123rf[写真拡大]
富士フイルムホールディングスは、1934年写真・フイルムの国産化を目指して創業された。ディジタル化の急速な進展に伴い培ってきた技術を生かして、液晶ディスプレイ材料、医療、化粧品、複写機などの分野で収益を拡大してきた。
【こちらも】富士フィルムHDは自社株買いを発表
不適切会計問題で前期決算発表を6月に延期発表した後、8月30日に3年間の新中期計画を発表し、戦略的M&A投資で成長を加速する方針を示した。今後の富士フイルムの動きを見てみよう。
■決算発表延期の原因となった不適切会計問題
富士フイルムは6月12日第三者委員会による調査結果を公表した。
コピー機器販売時に機器代金・消耗品代・保守料金、金利などを含めて一括契約する中で、ボーナスやコミッションの対象となる機器代金が過剰に計上されていた。2010年から2015年までさかのぼって合計285億円の決算修正が行われることになった。
■前期(2017年3月期)実績と今期(2018年3月期)見通し
前期は、売上高2兆3,222億円(前年比94%)から為替の影響額1,527億円を考慮すると前年比101%、営業利益1,723億円(同99%)から影響額336億円を考慮すると前年比は118%であった。海外売上比率60%と高い中、前年からの大幅円高(1ドル120→108円、1ユーロ133→119円)の影響を受けることになった。
今期見通しは、為替レートは1ドル110円、1ユーロ120円で、売上高2兆4,600億円(同106%)、営業利益は1,850億円(同107%)を見込んでいる。
■新中期計画(2018年3月期~2020年3月期)の推進
不適切会計問題への反省から部門横断のプロジェクトによりガバナンスの強化を図る。
5,000億円規模のM&A投資で成長を加速し、下記4事業別の戦略により2020年3月期には売上高2兆6,000億円(対前期比112%)、営業利益2,300億円(同134%)を目指す。
1.イメージング事業: 売上高3,800億円(同111%)、営業利益450億円(同122%)。
インスタントカメラ「チェキ」の世界への拡販、スマホ向けプリント需要確保、4K向けレンズビジネスの拡大を図る。
2.ヘルスケア事業: 売上高5,000億円(同130%)、営業利益400億円(同323%)
未来の柱として成長を加速し重点投資を行う。アルツハイマー、ガン治療薬、再生医療の研究開発に力を入れ、培養受託関連事業を拡大する。X線画像診断などのメディカル機器の拡販、サプリメント、エイジングケアなどのライフサイエンスの拡充を図る。
3.インフォメーション事業: 売上高6,200億円(同120%)、営業利益850億円(同120%)
電子材料、ディスプレイ材料、ファインケミカルは、先端製品のタイムリーな開発・拡販を進める。
4.ドキュメント事業: 売上高1兆1,000億円(同102%)、営業利益950億円(同115%)
トップポジッションを維持し、収益性を重視したオペレーションにシフトする。
富士フイルムがM&Aへの取組により、今後どのように成長戦略を具体化するかを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る)
スポンサードリンク