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ホンダ、小型ジェット機エンジンで「世界シェア3割」奪取を宣言
ホンダ・エアクラフト・カンパニー(HACI)が生産する「Honda Jet」に搭載するエンジンは、GE Hondaエアロエンジンズが生産する「HF120」エンジン。このエンジンを単体で他の航空機メーカーに販売する。価格は1基8000万円程度だという。[写真拡大]
ホンダと米ゼネラル・エレクトリック社(GE)による合弁会社であるGE Hondaエアロエンジンズ「GE Honda Aero Engines, LLC」(GE Honda)は、米国フロリダ州オーランドで開催された「ナショナルビジネス・アビエーション・アソシエーション(NBAA)2014」において、GE Hondaが提供する航空機用ターボファンエンジン「HF120」のサービス体制の構築など、販売開始に向けた準備の進捗状況を発表した。この「HF120」エンジンは、発表されている2015年第一四半期に販売開始のホンダ・エアクラフト・カンパニー(Honda Aircraft Company/HACI)が生産する「Honda Jet」に搭載するエンジンだ。
本年5月、GE Hondaは「HF120」の修理ならびにオーバーホール拠点(MRO拠点)として米国ノースカロライナ州バーリントンにあるホンダ・エアロ・インク(Honda Aero, Inc.)を選定したと発表した。そのMRO拠点選定の発表以降、米国・カナダ・メキシコ・欧州各地域における顧客サポートに向け、認定サービス拠点の構築を進めてきた。これらの認定サービス拠点は、24時間365日対応のGE Honda オペレーションセンター、専任のフィールド・テクニカルマネージャー、及びカスタマー・チームマネージャーが、GE Hondaユーザーに業界トップレベルのサービスを提供することを目指している。
GE Hondaは、メーカーの保証期間・保証範囲を超えた定期点検・定期交換や故障時の修理・交換を保証する「エンジンメンテナンスケア」(EMC)プログラムを提供。ユーザーに包括的な保守内容を提供する“EMC2(イー・エム・シー・スクエア)”と、主に部品を提供する“EMC(イー・エム・シー)”の2つのコースを設定。GE Hondaの認定サービス拠点を通して販売・提供する。
同時に、GE Hondaは、シエラ・インダストリーズ社(米国テキサス州)との共同プロジェクト「サファイア・プログラム」を発表。このプログラムはセスナ社の中古機体(ビジネスジェット・サイテーション525シリーズ)に搭載しているエンジンを「HF120」に換装することにより、機体の性能改善と価値向上を目指すプロフラムだ。
一方、HACIは、小型ビジネスジェット機「Honda Jet」による顧客へのデモンストレーションフライトを開始。米国のユタ州ソルトレークシティー、アイオワ州デモイン、ノースカロライナ州グリーンズボロをはじめ、カナダのカルガリー、エドモントン、トロントで延べ100人以上の顧客・ディーラー関係者を乗せて体験フライトを実施した。今後は、米国テキサス州サンアントニオ、フロリダ州フォートローダーデール、メキシコのモンテレーおよびトルーカなどでも開催する。
ところで、ホンダが基礎研究からスタートしてつくり上げた小型ビジネス機「Honda Jet」だが、技術開発のめどが立っても、事業化までには高い壁が立ち塞がっていた。ホンダが1986年に航空機の基礎研究を始めてから30年弱。これまでの道程は決して順風満帆とは言えない。日本経済にはバブル崩壊、円高、金融危機など経済的波乱要素が押し寄せ、ホンダ本体の業績も大きな影響を受けた。資金を要する航空機の研究開発の打ち切りが検討されたのは一度では無い。
最大の関門が航空機生産についての事業化判断だ。「飛行機を開発してつくる」のと「その飛行機を量産・販売する」違いは大きい。事業化を決めれば、機体工場や販売・サービス拠点の整備などで巨額の投資が必要になる。自動車メーカーからの新規参入という難しさを含め、「Honda Jet」が事故を起こした場合の影響などのリスクも当然負わなければならない。航空機の研究開発ではなく「売るための飛行機をつくる」という会社としての目標を掲げることになるわけだ。
1999年にHonda Jetのコンセプト機の製作がスタート。2003年にテスト飛行に成功するも、ホンダ社内では否定的な見方が大方だった。大きな決断を下したのは、2006年、当時のホンダ社長だった福井威夫氏である。以降のHonda Jetの推移は何度かレポートしてきた。独特なスタイルのHonda Jetはテスト飛行を繰り返し、米航空宇宙局の承認も得られた。
そして、ホンダはこの10月16日、小型航空機エンジン事業で世界シェア3割を目指す方針を明らかにした。機体メーカーや先に述べたシエラ・インダストリーズ社との共同プロジェクト「サファイア・プログラム」のような、中古機のエンジン交換を手がける企業などにエンジン単体を販売し、プラット&ホイットニー社など米エンジン大手に対抗して事業拡大を目論む。GEと共同開発したジェットエンジンを他社製小型ビジネスジェット機などに向けて売り込むというわけだ。
エンジン価格は機体1機当たり8000万円前後とみられる。競合品を10%上回る燃費性能や耐久性を前面に打ち出す。2020年には年300基ほどのエンジン需要があると予想し、先行するエンジンメーカーの切り崩しを狙う。ホンダでは「Honda Jet」はもちろんだが、ジェットエンジン単体の販売をも事業化し、新たな収益源に育てるという。
ホンダの創業者である本田宗一郎氏の航空機事業進出の夢が、また一歩近づいてきた。(編集担当:吉田恒)
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