和牛預託オーナー制度運営の「安愚楽牧場」、民事再生法の適用を申請

2011年8月10日 20:56

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 肉牛飼育、和牛預託オーナー制度を運営する「安愚楽牧場」(栃木県)が、8月9日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、同日保全命令を受けたことが、10日わかった。

 帝国データバンクによると、放射能汚染による風評被害で牛肉価格が下落し、もともと内部留保に乏しく、風評被害もあり、オーナーからの解約が急増。7月には、一部の取引先に対して支払いの延期を要請するなど、資金繰りが悪化していた。8月1日には、弁護士名で債権債務調査の通知書を発していた。負債額は2011年3月末で約619億8700万円。

 帝国データバンクによると、同社は、1981年(昭和56年)12月に牧場経営を目的に設立。農業生産法人の資格も取得し、87年には東北支店並びに遠野牧場を開設した。

 仔牛の生産から成牛飼育まで一貫した生産肥育体制をとり、北海道から九州・沖縄まで国内各地に直営牧場40ヵ所、生産委託牧場338ヵ所を擁し、飼育頭数約15万頭と推定国内シェア15%を誇る最大クラスの黒毛和牛の生産牧場に成長した。

 個人オーナー向けに預託オーナー制度を展開し、オーナー数は約7万名に達し、和牛預託制度を採用する企業としては唯一の成功事例とされていた。2009年4月には有限会社から株式会社に改組するとともに、現商号に変更していた。

 2010年4月に宮崎県児湯郡で口蹄疫が確認され、その後、約1万5000頭の殺処分、埋却処理が行われたことで、2011年3月期は出荷高こそ前期比6.7%減となったものの、主力のオーナー契約売上高と食肉等の売上が増加したうえ、殺処分に対する補償金88億2330万円が入ったこともあって、年売上高は約1027億2300万円を計上していた。

 同社は、「十数万頭にも及ぶ和牛の存命を図りつつ、債権者の皆様への弁済(配当)を増やすため、『民事再生手続』を志向・選択した」と、10日、債権者に向けてコメントしている。

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