〈監修・河野俊一氏にきく〉「“大人が教えやすいドリル”ではなく、“子どもが学びやすいドリル”です」
配信日時: 2023-12-22 10:00:00
特定非営利活動法人「Education in Ourselves 教育を軸に子どもの成長を考えるフォーラム」は、「書く」大切さを意識しながら学び方を丁寧に教える学習ドリル4巻シリーズ(*1)を発行中。12月20日、第3巻「くりさがり・くりあがり」を発売しました。 第3巻の特徴は、くりさがりから始めること。計算に慣れてきたら、くりあがりへ進みます。いずれも2つの手順でマスターできるため、計算の省力化を実現。「発達障害」セミナー(*2)の参加者の要望に応え、学習が難しい子どもたち(幼児、小・中学生)を指導してきた教育機関・エルベテークの指導法(*3)に基づくノウハウ・工夫が満載です。監修者の河野俊一氏(エルベテーク代表)にドリルの特徴と活用ポイントをききました。
積み上げた力を活用できるから、計算の省力化が実現
Q 計算ドリルでは「くりさがり・くりあがり」の組み合わせや流れが一般的。しかし、このドリルではくりさがりから始めることを勧めています。その理由は?
A ひと言で言えば、くりさがりから始めるほうが子どもたちにとって楽に学べるからです。
Q どういうことでしょう?
A ご存知のように、くりあがりにしろ、くりさがりにしろ、教科書では分解というやり方が当然のように用いられます。2つの数のうち大きい数を10にするために、小さい数を分解する。暗算ができる大人なら数の分解は容易ですが、計算を学び始めた子どもの多くにとってこの分解の理解に思いのほか時間がかかり、その結果、「計算は苦手」となってしまいがちなのです。保護者はもちろん、学校の先生方、学習教室で教える指導者、みなさんがここで頭を抱えます。
しかも、計算のたびに右・左のどちらが大きい数か小さい数かを判別して分解しなければならず、子どもにとってはひじょうにめんどくさいのです。
Q 大人が考えている以上にわかりづらいですね。
A そうなんです。このドリルではくりあがりもくりさがりも右側の数(たす数・ひく数)に着目し、まず「10になる数」を求めます。そして、くりあがりもくりさがりも2つの手順に集約されますから、その手順通りに計算すれば、答えをすばやく導き出せます。計算の省力化が実現するわけです。「10になる数」「10までのたしざん・ひきざん」を理解している子どもなら、その積み上げた力が無駄にならず、楽に学べます。
Q 表紙に「えっ、くりさがりから?」とありますが、くりさがりから始めるメリットは?
A くりさがりは、「10になる数」と「10までのたしざん」の2つの手順だけ。くりあがりは、「10になる数」と「10までのひきざん」の2つの手順。子どもたちは「10までのたしざん」のほうを最初に覚えやすいので、計算はくりさがりから始めたほうがスムーズだということです。
Q 従来のやり方の課題を解決できますね。
A このドリルの目的はただひとつ、「子どもたちのみんなに計算ができるようにさせたい」ということ。分解という、いままでやってきた作業とは別の新しい作業が入ると達成度が高くなりません。逆に言えば、いままでやってきたことをそのまま活用するからこそ達成度は上がります。これまで当たり前とされたやり方を見直し、「これでできるんだな」という安心感を早い段階で子どもがもてるのがこのドリルの大きな特徴だと思います。つまり、大人にとって教えやすいドリルではなくて、子どもにとって学びやすいドリルと言えるでしょう。子どもが学びやすいから、その結果として大人も教えやすくなるということです。
『[力をひきだす、学びかたドリル]❸ 「書く」からはじめる くりさがり・くりあがり』の概要
■「10になる数」「10までのたしざん・ひきざん」をマスターした子どもなら、短期間のうちにくりさがり・くりあがりを一気に学べるドリルが登場しました。
■くりさがり・くりあがりのポイントは、2つの手順、つまり、「10になる数」と「10までのたしざん・ひきざん」を手順として活用することです。
■くりさがりではたしざんが、くりあがりではひきざんがそれぞれポイントです。したがって、たしざんを使うくりさがりの計算から始めると、子どもは楽しく計算練習できるようになるでしょう。
■たとえば、「13−8」の計算は次のように行います。まず、ひく数(右側)の8に着目します→8を10の数にします→10の数にするのに必要な2とひかれる数(右側)の3をたして答えを出します→答えは5です……。こうして、子どもたちは手順に従ってスムーズにくりさがりの計算に取り組めます。
■(本書より)「2つの手順を覚えると『こっちからいくつもらって……』などといちいち考えずに答えが求められるので、気持ちに余裕が生まれます。復習や確認を繰り返しながらレベルアップを図ることができます。そして、意欲や自信につながり、計算の仕組みや暗算へスムーズに進むことができるでしょう」
■対象 : 子ども(幼児〜)、親、教育・保育・福祉・医療関係者など
■全4巻(第1巻「せん、かず・すうじ」は2021年12月発行、第2巻「10までのたしざん・ひきざん」は2022年12月発行、第4巻「とけい、かたち」は2024年発行予定)
【主な特徴】
◎子どもの好きなたしざんに着目した学習の流れ → くりさがりの学習からスタートし、くりあがりの学習へとスムーズにステップ・アップ
◎計算に慣れた時点で計算の仕組みについて考える構成 → 子どもが戸惑いやすい計算の仕組みが理解しやすくなる
◎「対面で学習する」ための具体的アドバイス → 親・大人と子が教え学び合える
◎親・大人が学習の手本を示し、サポートしながら学習を導けるよう、大切なポイント・心構えを写真とイラストでアドバイス → 目的・目標をしっかり共有できる
◎指導実績に基づくノウハウ・工夫がいっぱい
【これまでこのシリーズ(第1巻、第2巻)を利用された方々の声】
(1)特別支援学校の教師
「アドバイスとして本の中に、『正しい姿勢で取り組むこと』『正しい鉛筆の持ち方で勉強すること』の大切さが書かれてあり、『どういうふうに教えればいいか』という学習の進め方も書かれていてよかったです。また、筆順をしっかり守る、初めと終わりの挨拶をしっかりするなど、学習以外の基本的なことも大切にしていて、教える側にとって参考になりました」
(2)年長児の保護者
「できるのがうれしくて、『つぎ、つぎ』と言ってドリルを学習していました。すぐに一冊を終え、次に進むのが楽しみです」
(3)小2(特別支援学級)の保護者
「親はどこに気をつけて教えたらいいのか、そのポイントをわかりやすく写真などで説明してあるので、繰り返し取り組ませています」
(4)小4(特別支援学校)の保護者
「鉛筆の持ち方など、具体的に写真やポイントで示してあるので、あらためて気づかされ、教えるにはコツがあることがわかりました」
【目次】
くりさがり……P.15
くりあがり……P.27
20までのかず……P.45
こんなやり方・覚え方にも挑戦!……P.75
【体裁】 A4判 カラー 112ページ 定価1,100円(本体価格1,000円+税10%)
【発行】 12月20日発行 全国の書店、オンライン書店で販売
■アマゾン■https://www.amazon.co.jp/dp/4991185939/
監修 : 河野俊一[エルベテーク代表/医療法人エルベ理事]
【プロフィール】1996年、民間の教育機関エルベテーク設立。発達の遅れと課題をもつ子どものためのコースも開設し、現在に至る(川口/大阪/アメリカ)。
著書に『発達障害の「教える難しさ」を乗り越える』『自閉症児の学ぶ力をひきだす』(いずれも日本評論社)、『誤解だらけの「発達障害」』『子どもの困った!行動がみるみる直るゴールデンルール』(いずれも新潮社)など。2017年11月〜2018年1月、『教育新聞』(教育新聞社)にコラム(10回)を連載。講演会、研修会での講師多数。
編集・制作 : 特定非営利活動法人 教育を軸に子どもの成長を考えるフォーラム[さいたま市の特定非営利活動法人(2017年設立)。「子どもの教育と医療」を主なテーマとして活動中]
*1
第1巻「せん、かず・すうじ」(2021年12月発行)……鉛筆を正しく持って一本の線を書く練習から始めるドリル。数字の書き方を学び、数の概念の理解へとつなげる。
第2巻「10までのたしざん・ひきざん」(2022年12月発行)……数の大小を理解し、くりあがりのないたしざんなどを学ぶドリル。また「2つ合わせると10になる数」の組み合わせを、九九のようにおぼえることによって計算の基礎を形作る。
第4巻「とけい、かたち」(2024年発行予定)
*2 「発達障害」セミナー([実例から知る、「発達の遅れ」が気になる子どもの教え方])……プログラムは、「発達の遅れ」を抱える子どもの保護者と直接指導に当たった指導者などによる対談/シンポジウム形式。幼児期の様子、大人の接し方・教え方をきっかけとして現れた変化など、10年、20年にわたるプロセスを時系列で具体的に紹介・報告するのが大きな特徴。2017年3月、第1回を川口市で開始。以降、さいたま市、大阪市、東京都豊島区(池袋)でも開催。現在、34回。後援は、内閣府、文部科学省、厚生労働省、こども家庭庁、内閣府、埼玉県、さいたま市、埼玉県教育委員会など。そのダイジェストは単行本『親が語る、「発達の遅れ」が気になる子どもの教え方 ❶』にまとめられている。
*3 エルベテークの指導法(エルベメソッド)……「まずしっかり見る、聞く姿勢を育てることが最優先」「関心のない物事に対しても注意を向けることができる姿勢づくり」など12項の具体的な教育方針と指導目標を掲げ、学習を通して子どもの成長をめざす指導法。特徴は、「発達上の遅れを抱える子どももそうでない子どもも、身につけさせたい力は同じである。そして、その接し方・教え方、指導の仕方も原則は同じである」という考え方と、約30年間の豊富な事例・実績に基づく実践。
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